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2.6 一般照明
 船の照明は、それぞれの場所に応じ、その用途を十分考えて設計し装備する必要がある。船内照明を大別すると、次の3つの分野に区分することができる。
(1)船の安全航行及び乗員の安全確保のために必要な照明、即ち航海灯、信号灯、探照灯など。
(2)船内の作業上における照明、即ち操舵室、機関室などの照明及び甲板照明など。
(3)居住区域の照明であって、多分に装飾的な要素と照明効果を考慮して照明するもの。
 船内照明での必要な照度は、一般には「JIS F 8041:86 船舶の照度基準及び照度測定方法」によって求められる。(電装設計・工事データ図表集124頁参照)
 この必要な照度に対しての灯数を決定する場合、光束法により求めることができるが、計算が繁雑なため、あらかじめ必要とする平均照度を得るために、どの程度のワット数の灯器を用いたかを実績船について集計しておけば、簡単に目安程度のものが求められる。表2.2.4は室の大きさが普通の矩形で天井高さが2〜3mのときの一例である。また、表2.2.5は光源を選ぶ際の目安を示したものである。
 爆発や引火の恐れのある危険場所にやむを得ず装備する照明器具は、環境の危険度に応じた防爆型のものを装備する。また、防爆灯用スイッチは安全場所に装備しなければならない。
 
表2.2.4 照度に対する単位床面積当たりのワット数(蛍光灯)
平均照度(lx) 単位床面積当たりのワット数(W/m2)
埋込形灯 グローブ付灯 グローブなし灯
50 2.5 2.2 2.0
100 5.0 4.5 4.0
150 7.0 6.5 6.0
200 9.5 9.0 8.0
250 12.0 11.0 9.5
300 14.5 13.5 11.5
 
表2.2.5 光源を選ぶ目安
光源 効率
経済性
演色性 おもな用途
白熱 よくない 忠実ではないが感覚的によい 点滅の多い場所、使用時間の少ない場所、暖色が望まれる場所
蛍光ランプ 標準形 よい DL形より劣る 一般内部通路など
昼光形 標準形より劣る よい 演色性が問題になる場所
水銀ランプ 透明形 よい よくない 甲板照明、機関室全般照明など大容量を要する場所
蛍光形 透明形よりややよい
 
 小型船舶等の船灯は、船舶が海上を航行するにあたり、他の船舶との衝突を未然に防止し、海上交通の安全を確保するため小型船舶安全規則、小型漁船安全規則、海上衝突予防法及び海上交通安全法に基づいて船舶に掲揚する灯具である。
 以下各種法規等については次のとおり略語にて記載する。
 
設規 :船舶設備規程
:海上衝突予防法
法施行規則 :海上衝突予防法施行規則
海交法 :海上交通安全法
海交法施行規則 :海上交通安全法施行規則
漁特 :漁船特殊規程
小安則 :小型船舶安全規則
小安則細則 :小型船舶安全規則に関する細則
小漁則 :小型漁船安全規則
小漁則細則 :小型漁船安全規則に関する細則
 
 小型船舶及び小型漁船に備える船灯の要件、備付け等については表2.2.6のとおり規定されている。
 
表2.2.6 小型船舶関係規則の船灯関係条文
船舶の種類 規則名 条文
小型船舶 小型船舶安全規則 第82条(航海用具の備付け) 第83条(船灯等の要件) 第84条の2(船灯の位置)
小型漁船 小型漁船安全規則 第39条(航海用具の備付け) 第40条(船灯等の要件) 第40条の2(船灯の位置)
注) 前記のほか漁業灯等の灯火の備付けについては、海上衝突予防法及び海上交通安全法で別に規定されているものがあるので注意のこと。
 
 
表2.2.7 船灯の種類(全長50m未満、漁業灯を除く。)
  用途 船灯等の種類 水平射光範囲
(度)
光達距離
(海里)
摘要
*1マスト灯 航行用 第2種マスト灯 225 5  
第3種マスト灯 3
第4種マスト灯 2
*1マスト灯 航行用 第2種げん灯 112.5 2  
第3種げん灯 1
*1マスト灯 航行用 第1種両色灯 紅・緑 (左右各げん) 112.5 2  
第2種両色灯   1
げん灯・船尾灯(一体型) 航行用(帆船) 第1種三色灯 紅・緑 白 (左右各げん) 112.5 (後部) 135 2  
第2種三色灯 紅・緑 白 1
2
*1船尾灯 航行用 第2種船尾灯 135 2  
停泊灯(白灯とも言う) 停泊用 第2種白灯 360 2 白灯と同じもの
引き船灯 引き船用 第2種引き船灯 135 2  
紅灯 操縦性能制限、トロール漁業、乗り揚げ、水先船等用 第2種紅灯 360 2  
白灯 操縦性能制限、漁業、引き船されており相当部分が水没、水先船用 第2種白灯 360 2 停泊灯と同じもの
緑灯 しゅんせつ・掃海等の操縦性能制限、許可工事、トロール漁業用 第2種緑灯 360 2  
紅色閃光灯 危険物積載船 第1種紅色閃光灯 360 2 一定の間隔で毎分120回〜140回閃光
緊急用務船 第2種紅色閃光灯 2 一定の間隔で毎分180回〜200回閃光
緑色閃光灯 巨大船・長大物件えい航船等の進路警戒、側方警戒指定船 第1種緑色閃光灯 360 2 一定の間隔で毎分120回〜140回閃光
黄色閃光灯 エアクッション艇用 第2種黄色閃光灯 360 2 一定の間隔で毎分120回閃光
操船信号灯 操船信号用 操船信号灯 360 5 閃光を発するもの
*1 遠洋区域又は近海区域を航行区域とする船舶には2重式を適用する。国際航海に従事する船舶については、予備として油船灯が備えつけられている場合は1重式でよい。(設規第271条)
 
表2.2.8 漁業灯の種類(全長50m未満)
  用途 水平射光範囲(度) 光達距離(海里) 摘要
紅灯(第2種) 操縦性能制限、トロール漁業、乗り揚げ、水先船等用 360 2  
白灯(第2種) 操縦性能制限、漁業、引き船されており相当部分が水没、水先船用 360 2 停泊灯と同じもの
緑灯(第2種) しゅんせつ・掃海等の操縦性能制限、許可工事、トロール漁業用 360 2 停泊灯と同じもの
白色底びき網漁業灯 イ けた網その他の漁具(船舶の操縦性能を制限するものに限る。)を水中で引く方法により漁ろうに従事する小型漁船 360 1  
紅色底びき網漁業灯 360 1  
かけまわし漁法灯 ロ イの方法により漁ろうに従事する小型漁船であってかけまわし漁法による底びき網漁業 360 1 1秒毎に閃光を発するもの
きんちゃく網漁業灯(1対) ハ 網、なわその他の漁具(船舶の操縦性能を制限するものに限る。)を用いる方法(イの方法を除く。)により漁ろうに従事する小型漁船であってきんちゃく網漁業 360 1 1秒毎に交互に閃光を発するもの







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