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付録1
ARPA性能基準に使用される用語の定義
 
1 物標 ・・・ 固定した、又は、移動しているあらゆる対象物で、その位置及び運動はレーダー上の距離と方位の測定によって決定されるものをいう。
2 相対方位 ・・・ レーダーにより物標の距離と方向を多数回測定することによって得られた自船に対する物標の運動方向をいう。
3 相対速力 ・・・ レーダーにより物標の距離と方向を多数回測定することによって得られた自船に対する物標の速力をいう。
4 相対運動 ・・・ 相対針路と相対速力の組合せをいう。
5 真針路 ・・・ 物標の相対運動と自船の運動*2とのベクトル合成によって得られた物標の明らかな船首方向をいう。北を基準とする角度で表される。
6 真速力 ・・・ 物標の相対運動と自船の運動*2とのベクトル合成によって得られた物標の速力をいう。
7 真運動 ・・・ 真針路と真速力の組合せをいう。
8 真方位 ・・・ 北を基準にした角変位で表される自船に対する物標の方向、又は別の物標に対する当該物標の方向をいう。
9 相対方位 ・・・ 自船の船首方向を基準にした角変位で表される、自船に対しての物標の方向をいう。
10 真運動表示 ・・・ 自船の位置が表示面上での運動に従って移動する表示をいう。
11 相対運動表示 ・・・ 自船の位置が表示面で固定している表示をいう。
12 方位安定 ・・・ 自船のコンパス情報が表示面に送られ、それによって表示面上の物標のエコーが自船の船首方向の変化により見にくくならないようにすること。
13 ノース・アップ表示 ・・・ 中心及び表示面の真上を結んだ線が真方位における北となる方位安定表示をいう。
14 コース・アップ表示 ・・・ 中心及び表示面の真上を結んだ線が自船の予定した針路となる方位安定表示をいう。
15 船首方向 ・・・ 船舶の船首が向いている方向をいう。北を基準とする角度で表される。
16 物標の予測運動 ・・・ 過去における最新の物標の距離と方位をレーダーで測定することにより、物標の将来の運動を直線的に外挿して表示することをいう。
17 相対ベクトル ・・・ 自船に対する物標の予測された運動をいう。
18 真ベクトル ・・・ 自船の方向と速力を入力し、その結果として起こる物標の予測された真の運動をいう。真ベクトルは、対水又は対地いずれか一方に関して表示されればよい。
19 捕捉 ・・・ 追尾過程が必要な物標の選択及びそれらの物標の追尾の開始をいう。
20 追尾 ・・・ 物標の運動を決定するために、物標の位置の連続的な変化を監視するコンピユータ処理をいう。
21 物標乗移り ・・・ 追尾された物標のための入ってくるレーダー情報が、他の追尾された物標又は追尾されないレーダー像と不正確に関わる状況をいう。
22 捕捉領域 ・・・ 観測者によって設定される領域で、物標が当該領域に入ると、自動的に物標を捕捉しなければならない領域をいう。
23 履歴 ・・・ 追尾されている物標について、等しく時間割りされた過去の位置をいう。履歴は相対又は真のもので差し支えない。
24 トレール ・・・ 総合的残光の中で、物標のレーダー像により表示されるトラックのことをいう。トレールは、相対又は真のものいずれも差し支えない。真のトレールは、対水安定又は対地安定で差し支えない。
25 エコー・エレファンス ・・・ 追尾されている特別に固定された航行上のマークが、対地安定の参考目標として使用されるべきであることを指示する機能をいう。
26 試航操船 ・・・ 観測者が航行と衝突回避を目的とする正しい操船をするための、観測者を支援する機能をいう。
27 抑止領域 ・・・ 観測者によって設定された領域であって、その中では物標が捕捉されない領域をいう。
28 ERBL ・・・ 方位又は距離を測定するために使われる電子距離及び電子方位の線をいう。
29 CPA/TCPA ・・・ 観測者が定める自船からのCPA及びTCPAの限界を表す機能である。これは、追尾した単数又は複数の物標がこの限界内に入ろうと近付くとき警報を与えるためのものである。この場合において、CPAとは、自船からの最接近点であり、その時刻をTCPAという。
30 船首通過の予測 ・・・ 自船の前方を横切っている、又は横切ることが予想される物標に関する状況をいう。
31 バッド・エコー ・・・ 追尾された物標であって、一時的に消失したようにみえたり、又は劣悪な表示のレーダー像であったりして、物標の追尾能力がないものに係る名称とする。
32 消失物標 ・・・ 消失又は不明りょうになったことによりもはや追尾されていない物標に係る名称とする。
33 対水安定 ・・・ ジャイロ船首方位及び単軸速力計対水速力の入力を使用しながら自船及びすべての物標が、対水を元として表示されるモードをいう。
34 対地安定 ・・・ 陸のトラック又はセット及びドリフトの入力を使用しながら、自船及びすべての物標が対地を関連して表示されるモードをいう。
35 予測衝突点 ・・・ 自船と他の物標に関して、予測された衝突発生点がある場所についての図形的表示をいう。
36 PAD ・・・ 予測された狭状況の区域につき定められた危険予測域(PAD)をいう。寸法は、自船と問題としている物標との間の速力比及び観測者により定められるCPA距離の程度によって決められる。
37 マップ・ラインズ ・・・ 観測者が水路又は交通分離方式を示すため線で定めることができる航行上の施設をいう。しばしば、ナブ・ラインズと呼ばれるこれらのラインズは、それらが移動するのを止めるために対地安定を要求する。
 
付録2
動作シナリオ
 
 これらのシナリオのそれぞれについて、1分又は3分間の適切な追尾の後に、決められた物標の位置での予測が行われる。
 
シナリオ1
自船の針路 000度
自船の速力 10ノット
物標の距離 8 海里
物標の方位 000度
物標の相対針路 180度
物標の相対速力 20ノット
シナリオ2  
自船の針路 000度
自船の速力 10ノット
物標の距離 1海里
物標の方位 000度
物標の相対針路 090度
物標の相対速力 10ノット
シナリオ3  
自船の針路 000度
自船の速力 5ノット
物標の距離 8海里
物標の方位 045度
物標の相対針路 225度
物標の相対速力 20ノット
シナリオ4  
自船の針路 000度
自船の速力 25ノット
物標の距離 8海里
物標の方位 045度
物標の相対針路 225度
物標の相対速力 20ノット
 
付録3
センサー誤差
 
 3.8に引用した確度値は、下記のセンサー誤差に基いており、船舶に搭載する航海設備に関するIMOの性能に従った設備に対して適当なものである。
注:σは標準偏差を意味する。
 
レーダー
 ターゲットのグリント(シンチレーション)(200 mの長さの物標に対して)
物標の長さ方向に沿って、 σ=30m(正規分布)
物標の幅の方向に、 σ= 1m(正規分布)
 
ロール・ピッチ方位
 方位誤差は、自船の周囲の4象限のそれぞれにおいて、物標に対して相対方位045度、135度、225度及び315度に最大値があり、また、相対方位0度、90度、180度及び270度において零となる。この誤差は横揺れ周期の2倍の周期で正弦変化する。
10度の横揺れに対する平均誤差は0.22度に最大値0.22度の正弦波を加えたもの。
ビームの型: σ=0.05度の方位誤差を生じる正規分布と推定される
パルスの型: σ=20メートルの距離誤差を生じる正規分布を想定
空中線のバックラッシュ: 最大±0.05度での方位誤差を生じる方形分布を想定
定量化  
方位: 最大で±0.1度の方形分布
距離: 最大で±0.01海里の方形分布
方位エンコーダは、正規分布でσ=0.03度の方位誤差を生じる遠隔同期で作動するものと想定
ジャイロ・コンパス
校正誤差0.5度
正規分布σ=0.12度
船速距離計
校正誤差0.5ノット
正規分布3σ=0.2ノット
 

*2:物標距離、方位、相対針路、相対速力、最接近点(CPA)又は最接近点時刻(TCPA)が関わる場合、これらの測定は、レーダー・アンテナを基準として行われるものとする。







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