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4・4 空中線と導波管
 空中線は、導波管又は給電線に伝わる電力エネルギーを空間に電磁波の形として発射したり、また、受けたりする装置をいう。
 送信機のマグネトロンで発振した送信出力は、そのままでは空間を伝搬しにくいので、空中線によって電磁波の形にして空間に発射する。実用面では空中線を回転させるので、導波管も回転させる必要があり、このため、回転部分には円形導波管を使用している。そして、この回転する円形導波管と固定の導波管との変換部分には、ロータリージョイント(図4・16参照)と呼ばれるものを使用している。
 アンテナは、そのほとんどが可逆の定理が適用できるので、同一の周波数においては送受信とも同じ能率で使用できる。
 
図4・16 ロータリージョイント
 
 レーダー空中線の重要な特性一つに、方位分解能を決める指向性となるメインローブとサイドローブとの比率の性能がある。指向性が良すぎても、サイドロープレベルが大きいと偽像を生ずることになる。
 アンテナの指向性は、アンテナの開口面の長さが関係している。つまり、鋭い指向性を作りだすためにはそれだけ長いアンテナが必要となるわけである。指向性の指標となるビーム幅は、アンテナの長さと使用する電波の波長との間に次の略算式がある。
 
 
 例えば、220cmの長さのXバンドのレーダー・アンテナでは波長を3.2cmとすると、ビーム幅は約1°となり、50cmの長さの小型レーダー・アンテナでは約4.5°となる。
 アンテナの形状には、小さなダイボール空中線を配列したものや放物面状の反射板を使用したものがあるが、このうちのダイボール空中線を配列したものと同等のスロットアレイ空中線が現在では航海用レーダーに最も広く用いられている。
 
4・4・1 スロットアレイ空中線
 導波管の一側面に一定の間隔をおいてスロットを斜めに切り込んで、そこから電波を発射させる。1個のスロットから発射される電磁エネルギーは少量なので図4・18のようにスロットを多数設け、アレイとして並べることで鋭い指向性を作り出している。このようなアンテナをスロットアレイ空中線と呼んでいる。スロットアレイには、方形導波管の狭い面(H面)にスロットを切ったものと、広い面(E面)にスロットを切ったものとがあるが、前者が水平偏波、後者が垂直偏波の空中線となる。
 水平偏波用のスロット・アレイ空中線では、導波管内部の電磁界の状態は図4・17(a)に示すようになっており、導波管内壁の電流分布は点線で示す通りである。この電流分布を斜めに切り込むことでギャップに生じた電界によってこのギャップから電磁波が発射される。また、この角度θが大きいほど発射される電磁波は大きくなり、逆にθ=0で発射は零となる。発射される電界Esは、水平方向の電界EHと垂直方向の電界Evとから成っている。図4・17(b)に示すように、隣接したスロットの間隔をλg/2とし、各スロットを逆の傾きで切っておくと垂直成分は互いに打ち消し合い、水平成分のみが相加わって水平偏波の空中線となる。〔図4・17(b)参照〕
 
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図4・17 スロットの空中線における電界と磁界の状態
 
 このように集中した鋭いビームを得るためには、多数のスロットを一つずつλg/2の間隔で、それぞれ逆方向の傾きにして、中央部で傾斜角を大きくし、両端ではこれを小さくする。〔図4・18(a)参照〕
 電磁波のエネルギーはスロットを設けた導波管の一方の側から給電するが、給電側と反対側の終端は、最後のスロットからλg/4のところに吸収体を設け、空中に放射したエネルギー以外のものはこの吸収体で吸収して、無反射の状態とする。このように、終端を無反射にすると、スロットの数が少なくても鋭いビーム幅を作ることができるので空中線の長さを短くすることができる。しかし、周波数特性が悪くなる欠点もある。
 垂直ビーム幅は、スロットの上下にホーン状に開口させた金属板を設け、その角度によって決められる。〔図4・18(b)参照〕
 
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図4・18 スロットの空中線の構造
 
4・4・2 導波管と同軸管
 送信機から空中線への伝送線路としては、5GHzと9GHzのレーダーでは導波管が用いられているが、周波数が3GHz以下になると同軸管が多く用いられている。これは、周波数が低くなるに連れて導波管の寸法が大きくなり工事やスペースに支障が増えるからである。一方、同軸管は中心導体を中心位置に保持するため、外部導体との間に誘電体を入れる必要がある。3GHz以上の周波数になるとこの誘電体による損失が多くなりその損失による発熱のために扱い得る電力も限られるからである。そこで、この損失の原因となる中心導体を取り去り、中空の金属管として、マイクロ波の伝送線路にしたものが導波管で伝送中の損失が少なく、かつ大電力を扱うことができる。
 導波管及び同軸管については、第3章の3・9節に記述してあり、また、それらの取扱いについては、装備艤装工事編第2章の2・3・5項と第3章の3・5節〜3・8節に述べられているので、これを参照されたい。
4・5 受信機
 レーダーの受信機に求められる性能は、空中線で受けた微弱な反射信号を増幅してCRTに表示するのに十分な振幅を持つ映像信号を作ることにある。一般の受信機の性能では、選択度、感度及び忠実度が重要であるが、レーダーの受信機では、必要条件として下記のことが要求される。
1)雑音指数(ノイズ・フィギュア)がよく、感度のよいこと。
 一般の受信機では、空電や人工雑音が相当あるなかで弱い信号を受信するので、選択度特性が重要となるが、レーダー波の範囲になると、空電や人工雑音はほとんど無視できる程度に小さく、むしろ問題になるのは受信機自体が発生する雑音で、これにより弱い信号が受信できるかどうかの限界が決定される。これを雑音指数といい、値が小さいほどよい。
2)必要な帯域幅があること。
 入力の信号波形を正しく受信機からの出力とするためには、十分な帯域幅と位相特性が必要である。
3)パルス応答性がよいこと。
 信号波形を忠実に出力するだけでなく、非常に大きい信号のすぐ後に続く弱い信号も正しく増幅する必要がある。そのためには、大きい信号のすぐ後でも受信感度が直ちに正常に復帰することが必要である。
4)海面反射、雨雪反射抑制がよくできること。
 レーダーの場合、これらの抑制のため、STC、FTC回路が設けてある。







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