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2・4 電磁誘導・誘導起電力
2・4・1 電磁誘導
 
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図2・14
 
 図2・14において(a)の場合は、磁石をコイルの中に出し入れさせると、コイルに起電圧が発生し、電流が流れ、検流計の指針が左右に振れる。また、(b)の場合は、NSの磁石の磁界中に導体を上下に動かすと導体に起電圧が発生し、電流が流れ、上記と同様に検流計の指針が左右に振れる。いずれの場合も、このように導体に磁束の変化を与える(又は導体が磁束を切るともいう。)と起電圧が発生することを電磁誘導といい、誘導される起電力を誘導起電力、流れる電流を誘導電流という。
 
2・4・2 誘導起電力の方向(レンツの法則)
 誘導起電力の方向はどうかといえば、これについて、1834年ドイツのレンツが次のように論文を発表し、これをレンツの法則といっている。
 即ち「誘導起電力の方向は磁束が減るときにはこれを増やし、増えるときにはこれを減らすような電流を流す方向に起電力を生ずる」ということで、後述する誘導起電力の式に(−)の符号がつく。
 
2・4・3 誘導起電力の大きさ(ファラデーの法則)
 
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〔例題〕 100回巻きのコイルのコイル辺が0.1秒間に0.05〔Wb〕の磁束を切ったときに発生する誘導起電力eの大きさは何〔V〕か。
〔解〕
 
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〔応用〕 電磁誘導の原理を応用したものには、発電機、変圧器等がある。
 
2・4・4 フレミングの右手の法則
 2・3・5で述べたフレミングは同時にフレミングの右手の法則を発表した。先に述べた左手の法則は電磁力の方向を示したのであるが、右手の法則は誘導起電力の方向を示したものである。
 
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図2・15
 
 即ち「右手の親指、人さし指、中指を互いに直角に曲げ、人さし指を磁界の方向(B)、親指を導体の運動の方向(v)に向けると中指の方向が起電力の方向(e)を示す」ことであって、(図2・15(a)参照のこと。)これをフレミングの右手の法則という。
 図2・15(b)及び(c)のように磁界中で導体が運動したときの導体の誘導起電力は紙面の裏面から表面の方向であるが、その大きさは導体が1〔s〕間に切る磁束はBlv〔Wb〕であるから、
 
e=BlV〔V〕・・・(2・10)
B:磁束密度B〔Wb/m2
l:導体の長さ〔m〕
V:速度〔m/S〕
 
 しかし、これは導体が磁界と直角の方向に運動した場合であって、図2・15(C)のように直角でなくθの角度で運動した場合はV'=vsinθのようになおして計算する。
 よって、e=BlV'=Blvsinθ〔V〕・・・(2・11)
〔例題〕 磁束密度2〔Wb/m2〕の平等磁界で、これと直角に長さ10〔cm〕の導体を100〔m/s〕の速度で動かすとき、導体中に誘導される平均の起電力は何〔V〕か。
〔解〕 B=2〔Wb/m2〕、l=0.1〔m〕、v'=100〔m/s〕であり、e=2×0.1×100=20〔V〕
 
2・5 うず電流・うず電流損
 
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図2・16
 
 電磁誘導作用はコイルの代りに導体の板又は固体についても起る。図2・16(a)についてみれば矢の方向に磁束Φが変化するときに発生する起電力はこの板又は固体を貫通しようとする磁束の変化を打消すように、うず状に電流が流れる。これをうず電流という。このために導体の抵抗によって熱を発生する。この電力損失をうず電流損という。このうず電流損を少なくするため図2・16(c)のように薄鋼板を重ね互いに絶縁した成層鉄心を用いる。発電機、変圧器、電動機などにはこのため成層鉄心を使用する。
 また、図2・16(b)のようにアルミ円板にNS磁極をはさんで、磁石を図のように回転すれば円板もこれに追従して回転する。これはうず電流と磁界との間に電磁力によって回転力(トルク)を生じて回転する。
〔応用〕 うず電流を利用して回転体に制動力(ブレーキ)を与え、又は逆に回転体に駆動回転力(トルク)を生じさせたりすることに利用する。また、うず電流損による発熱は電気炉などに利用されている。
 
2・6 磁化曲線、ヒステリシスループ、ヒステリシス損
2・6・1 磁化曲線
 
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図2・17
 
 図2・17(a)のように鉄心のまわりにコイルを巻き、これに電流を流せば鉄心は磁化され、電磁石となることは、2・3・4ですでに述べた。ところで、この電流を増してゆけば電磁石すなわち磁束密度B〔Wb/m2〕はどこまでも増してゆくかといえばそのようにはゆかないで図2・17(b)のような曲線を描いて、ある限度をこせば磁束密度はほとんど増加しない。そこで図2・17(b)のような曲線を磁化曲線といい、磁束密度の増加しないような現象の現われを磁気飽和という。また、図2・17(b)に示した曲線即ちB−H曲線を飽和曲線ともいう。
 
2・6・2 ヒステリシスループ・ヒステリシス損
 一度も磁化されていない鉄心について磁化を増してゆく場合と減らしてゆく場合とでは、磁束密度が同一でなく同一の経路をたどらないことが実験上確められる。これを図2・18について説明すれば、先ず0点から次第にHを増しa点に(H最大)、a点からHを減じてb点に、さらに−Hにしてc点に、さらに減じてd点に(−H最大)達する。これよりHを増していってHが零のときe点に、さらにHを増してf点に、そして最後にa点に戻る。このようにしてみると、図2・18にみるようにBとHとの曲線は同一経路をたどらないで一つのループを形成する。これをヒステリシスループという。
 
図2・18
 
 そして鉄心を交流電源によったコイルで磁化すれば、1循環毎にループ間の面積に比例した電力量が、鉄の中で熱となって失われる。この電力損失をヒステリシス損という。
 このために交流の電気機器の鉄心内には当然のようにヒステリシス損を生じている。
 次にHが0となっても0bだけ磁束密度Brが残っているのでこれに相当する磁気を残留磁気という。
 また、磁束密度を零にするためには0Cだけ−Hを加えねばならないから、この0CすなわちHcを保磁力という。







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