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第1章 霧とは
 水蒸気が凝結して大気中に微細な水滴が生じる。これが空に浮かんでいる場合には雲であり、地面に接している場合には霧(fog)という。このように雲と霧は本質的な違いがない。
 
 山地では2つの区別はあいまいとなり、遠方からは雲と見えるものでも、山にいる人は霧と観測することがある。また、霧粒(きりつぶ)が、水滴の場合には霧というのに対して氷晶(ひょうしょう)からできているものは氷霧(ice fog)という。
 
 霧の中では、霧粒のために視界が悪くなる。水平の視界、すなわち視程が、1km以下の場合を霧と呼び、視程が1kmよりも大きい場合を靄(もや;mist)と呼ぶ。
 
 雲は、空気が上昇することによって、たえず過飽和になっているときに生じる。これに対して霧は、地表面近くの湿った空気が露点温度以下まで冷やされるときや、空気が飽和するまで水蒸気が蒸発するときに生じる。
 
第2章 霧の発生による分類
 霧は発生する原因によって、次のように分類されている。
 
(1)放射霧(radiation fog)
放射霧
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図1 放射霧の模式図
 
 夜間の放射冷却により地表面の温度が下がり、地表面に接している空気の温度が下がって生じる。風が弱く、雲のない夜とその明け方によく発生するが、日の出後は気温が上がり、霧粒が蒸発して消える。寒い時期の山間の盆地で発生することが多い。
 
(2)移流霧(advection fog)
移流霧
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図2 移流霧の模式図
 
 暖かく湿った空気が、冷たい地表面(地面や海面)に移流したとき、地表面から冷やされて生じる。暖かい空気を移流させるために、適当な風が吹いていること、地表面の温度が移流してくる空気の露点温度より低いことが必要である。海上にできる霧の代表的なものであり、広い範囲に発生し、持続時間も長い。日本近海でいえば、北海道付近でよく発生する。
 
(3)上昇霧または滑昇霧(upslope fog)
滑昇霧
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図3 滑昇霧または上昇霧の模式図
 
 山の斜面に沿って空気が上昇するときに、断熱冷却により飽和して霧となる。雲との区別があいまいで、遠方からは雲に見える。比較的、風が強いときに生じる。滑昇霧ともいう。
 
(4)蒸発霧または蒸気霧(steam fog)
蒸発霧
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図4 蒸発霧の模式図
 
 水面上に、水面よりずっと低温な空気が流れてくると、水面近くの湿った空気が低温な空気と混ざり飽和に達して霧となる。大きな湖や河が凍結する前に冷たい北風が吹くときに発生する。この霧は水面から湯気のように立ちのぼるが、高さは水面から数m以下と低い。
 
(5)前線霧または混合霧(frontal fog)
混合霧(前線霧)
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図5 混合霧または前線霧の模式図
 
 温暖前線などが通過するときによく見られる霧である。これは、前線面より上空の、比較的暖かい空気中に生じた雨滴が、落下する途中で蒸発して生じる霧である。







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