日本財団 図書館


4. 今後のばら積み貨物船の安全
 FSAスタディーについては、次回MSC76で本格的な議論が行われることになるので、我が国のFSAスタディーと各国のFSAスタディーとの比較検討を行い、我が国として望ましいRCOが次回MSC76としての最終勧告となるように、特に、「単船側の強化」対「二重船側の強制化」など、MSC75/WP.19(特に表1及び表2)を参照して早急に調査・検討を行う必要がある。
 また、従来想定されていたスケジュールを相当程度前倒しし、本件の議論は次回MSC76で完了させ、必要な小委員会に規則の改正案文の草案の作成を指示し、(この場合、MSC77ではWGは設置されない)、MSC78のバルクキャリア安全WGで審議して、プレナリーで採択するスケジュールとなっている。しかし、場合によっては、更なるスケジュールの前倒しもあり得る状況にあるので、次回MSC76に対する関連提出文書には十分注意していく必要がある。
 
 尚、日本が実施したばら積み貨物船の安全対策に関するFSAの最終勧告を含む最終報告書一式(英文)は国土交通省のWeb Serverからダウンロード可能である(URLはhttp://www.mlit.go.jp/english/maritime/bcfsa/msc75/index.htm)。
 
(以上)
 
付録 FSAについて
付録 図1 FSAの5ステップ間の関係を表す概念図
 
 
 2001年5月30日〜6月8日に開催されたIMOの第74回MSCで”Guidelines for Formal Safety Assessment (FSA) for Use in IMO Rule-Making Process”(以下、FSAガイドライン)が承認され、2002年5月にはMSC/Circ.1023 & MEPC/Circ.392として回章された(関連文書MSC/Circ.1022 & MEPC/Circ.391参照)。
 FSAはRisk AssessmentとCost Benefit Assessmentを主要な要素技術として利用する船舶の安全性評価法の一つであるが、IMOで議論されているFSAは規則作成過程(Rule-Making Process)の為のツールとして位置づけられている。FSAでは、解析内容及び結果の透明性及び理解を容易にするために、FSAのプロセスを文書化して記録に残し、これにより意志決定の為の共通の議論の基礎を提供することを目指している。
 FSAで使われるリスク評価等の要素技術の多くは既に化学プラント、原子力、海洋開発等の様々な産業分野で使われており、実用的なツールとして認知されている。他分野とIMOのFSAの大きな違いは、前者が個々の構造物やシステム等を直接扱うのに対して、後者ではGeneric Modelという概念を使い、規則の対象となる一般化された船舶を対象にしている点である。Generic Modelとは抽象的な概念で、FSAガイドラインによれば、対象船舶/システムについて取り扱う問題に関連している機能、特性、特徴及び属性を表現するために規定されるもので、独立した個々の船舶ではなく、定義された機能条件を満たす組織・管理、運用、人、電機及びハードウエアを含むシステムの集合体である。
 また、FSAは次に示す5つのステップ(Step)からなる手順に従うことも大きな特徴である。
 
Step 1 : Hazard Identification; 船舶に内在する人命・環境・財産に関わるハザード(HAZARD)を同定し、
Step 2 : Risk Analysis; 確率論等を用いた危険解析によりリスク(RISK)を解析し、
Step 3 : Risk Control Options; リスクを減少させるための対策(RCO)を立案し、
Step 4 : Cost Benefit Analysis(CBA); 費用対効果の評価及び対策案のランキングし、
Step 5 : Recommendations; 条約改正等の判断材料等を提供する/勧告をする







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION