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SR503 新エンジンシステム等の調査研究
Ship Research Panel 503
Review and Research on the New Marine Propulsion Systems
Summary
In order to find out the important research and development projects, which will be required in the near future to break through the technical difficulties in marine propulsion systems, the review and research program was conducted in the years 2002 and 2003.
In the first year, reviews were carried out on the performances and properties of conventional marine propulsion systems, covering diesel engines, steam and gas turbines, fuel cells, as well as stirling and methanol engines, and various propulsion systems. The collected technical data on them are summarized in the matrix form.
In the second year, based on these data, the new research and development projects, which will lead to the breakthrough of technical problems and to practical application in the years 2010〜2015, have been selected from the view points of global environmental protection, higher reliability, and more economical situations, as follows.
As for the diesel engines, it is expected that low-quality heavy fuel oil will continue to be used as the power source of diesel engines. The further technical developments should be required to reduce environmental loads and to improve engine reliability.
As for the steam turbines, it is necessary to develop such a soft wear that can control the warming-up procedures of steam turbine plants according to the knowledge and experiences which have been gained by high-quality, trained operators.
For further improvement of fuel consumption in total, the combined plants of gas and steam turbines are recommended as the prospective power plants in the near future. In that case, one of the key research projects is the development of high-efficiency steam turbines with smaller powers than 5 MW.
As for the fuel cells, the combined power plants with gas turbines are also recommended to be another prospective power systems.
As for the propulsion systems, the new types of electric propulsion systems such as pod units are proposed as an urgent research project.
 
1. 研究の目的
 本調査研究は、造船・海運がその知見を集め、2010〜2015年の世界市場における優位性を確保することは勿論、地球規模の環境保全、安全運航、経済運航をもたらす舶用推進システムの開発に寄与する重点研究テーマを抽出することを目的とする。
 
2. 研究の目標
 時代の要請に即した舶用推進システムの質的転換を図るとともに、国民生活の向上、地球規模での環境保全等の新たな視点を踏まえ、近未来にブレークスルーを必要とする技術課題を抽出するための調査・研究を平成13年度と14年度の2年間にわたって実施し、2010〜2015年をめどに舶用推進システムの創造的展開を図るための技術課題を環境対応、信頼性および経済性等の視点に立って重点研究テーマを抽出すること。
 
3. 調査研究の内容
(1)調査研究の方法等
 舶用推進システムを以下のように分類し、現状機関の問題点・課題、利用者・社会的ニーズ、各機器の研究開発動向を調査し、2010〜2015年を想定した場合の優先的に実施すべき重点研究テーマを抽出した。
 調査方法は、文献調査、有識者へのヒアリング調査にて実施。
(1)エンジンシステム
 
・低速ディーゼル機関 ・中速ディーゼル機関
・高速ディーゼル機関 ・ガスタービン機関
・メタノール機関 ・燃料電池
・スターリング機関 ・コンバインドサイクル機関
 
(2)推進システム
 
・プロペラ ・ウォータージェット
 
(2)結果
 各舶用推進システムに関して、以下の重点研究テーマを提案することとした。
(a)低速ディーゼル機関については、今後とも粗悪燃料油の使用が続き、さらなる環境負荷低減および信頼性向上が求められるので、次のような課題があげられる。
(1)低質油の使用を考慮した舶用脱硝装置の研究開発
(2)信頼性向上のための船陸一体型管理システムの研究開発
(b)中速ディーゼル機関についても、さらなる性能向上や環境対応技術の開発、新燃料への転換技術等が必要とされるので、次のような課題があげられる。
(1)中速ディーゼル機関を搭載した船舶の燃料消費量の低減化
(2)環境対応技術(低速ディーゼルと同じ)
(3)LNG船への中速ディーゼル機関の採用
(4)新燃料(GTL、DME)の採用に関する研究
(5)信頼性・保守性の向上(低速ディーゼルと同じ)
(c)蒸気タービンについては、暖気システムに関して熟練オペレータの経験を自動化・システム化する必要があり、次の課題があげられる。
(1)舶用蒸気タービン主機関の自動暖気システムの研究開発
(d)ガスタービンについては、高温材料の開発などにより今後性能向上が期待されるが、その特徴を生かすには他機関との複合化が必要であり、(f)のコンバインドサイクルにまとめて提案している。
(e)燃料電池については、今後の開発が期待される重要な研究課題であり、次の研究テーマがあげられる。
(1)船舶への燃料電池・ガスタービンのコンバインドサイクルの適用研究
(f)コンバインドサイクル機関については、今後ますます重要な舶用推進機関となることが予想される。そのために船種ごとに検討すべき技術課題がある。また、舶用推進プラントにおけるコンバインドサイクル成否の鍵は小出力蒸気タービンの熱効率向上にかかっている。そこで、次の課題があげられる。
(1)コンテナ船等の貨物船を対象とした最適コンバインドサイクルの確立
(2)客船を対象とした最適コンバインドサイクルの確立
(3)LNG船を対象とした最適コンバインドサイクルの確立
(4)5MW以下の小型蒸気タービンシステムの高効率化
(g)推進システムについては、電気推進化が進み、船型形状の最適化にも及ぶ重要な課題があること、また、粘性摩擦の低減が重要となることから、次の課題があげられる。
(1)新形式ポッド型電気推進システムの調査研究
(2)化学的表面処理技術のプロペラヘの応用の調査研究
 なお、高速ディーゼル機関についても「新燃料(GTL、DME)の採用に関する研究」が提案されているが、(b)の中速ディーゼル機関のところで取り上げられているので省略した。
 また、メタノール機関とスターリング機関については舶用推進機関への適用は実用上考えられないので、重点研究テーマとしては提案しないこととした。
 
4. 成果
 本研究結果から、従来のディーゼル機関や蒸気タービンについては熱効率のさらなる向上は非常に困難で、環境対応技術、信頼性向上技術、保守の自動化等について地道な研究を継続していく必要がある。
 熱効率のさらなる向上を実現するには、単体の機関では不可能で、ガスタービンを中心としたコンバインドサイクルとする必要があり、蒸気タービンとのコンバインドおよび燃料電池とのコンバインドが重要な研究課題となる。
 蒸気タービンとのコンバインドでは小出力蒸気タービンの熱効率向上がキーポイントとなる。また、推進システムについてはポッド型電気推進システムの調査研究は早急に進める必要がある。
 平成13年、14年の2年間で調査研究を行ってきたが、近未来の2010〜2015年をめどに舶用推進システムの創造的展開を図るための重点研究テーマを抽出し、提案できたと考える。
 
はしがき
 本成果報告書は、日本財団の助成事業として実施した、日本造船研究協会第500研究部会「船舶技術の創造的展開に関する調査研究」のうち平成13年度から平成14年度の2カ年計画で実施した第503分科会「新エンジンシステム等の調査研究」の成果をとりまとめたものである。
 
第500研究部会委員名簿
(敬称略、順不同)
部会長 小山 健夫 (東京大学名誉教授)
委員 大和 裕幸 (東京大学) 葉山 眞治 (東京大学名誉教授)
勝原光治郎 (海上技術安全研究所) 荒井 宏範 (日本海事協会)
油谷 正彰 (商船二井) 木原 和之 (日本海洋科学)
青木征二郎 (日本海洋科学) 河辺  勲 (IHIマリンユナイテッド)
小澤 宏臣 (三井造船)
 
第503分科会委員名簿
(敬称略、順不同)
分科会長 葉山 眞治 (東京大学名誉教授)
幹事 青木征二郎 (日本海洋科学)(H13年度)
金子  仁 (日本海洋科学)(H14年度)
委員 刑部 真弘 (東京商船大学) 井亀  優 (海上技術安全研究所)
田中 良和 (商船三井) 宇佐美 俊 (商船三井)
永澤 映二 (ユニバーサル) 湯浅 逸也 (川崎造船)
豊田  健 (川崎造船) 福島 二郎 (ユニバーサル)
松本 祥一 (三菱重工業) 佐々木 耕 (三井造船)
永所 和俊 (三井造船) 大松 哲也 (IHIマリンユナイテッド)
主藤 英樹 (IHIマリンユナイテッド) 船越 文彰 (住友重機械工業)
石原 泰明 (ナカシマプロペラ) 的場 正明 (RITAコンサルティング)
 
討議参加者
(敬称略、順不同)
慶林坊 智 (日本鋼管) 赤池  恵 (ユニバーサル)
後藤 大祐 (商船二井) 清河 勝美 (日立造船)
立石 智裕 (三菱重工業) 大竹 和彦 (三菱重工業)
溝越 貴章 (住友重機械工業) 黒瀬 康弘 (商船三井)
 
事務局 (日本造船研究協会) 宮澤  徹 大森  勝 海部 雅之







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