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第9章
人口調査
人口調査の必要性
 開発計画を立案するうえで、正確な統計は不可欠である。国際機関や各国政府は、人口や開発に関して徹底した理解を行うことでのみ、適切な計画を作成し政治的意思を行動に移すことが可能となる。
 計画立案者は、年齢別・男女別・都市及び農村別の人口規模・人口増加・人口分布の正確なデータが必要である。同様に、平均寿命・出生率・出生率と死亡率・乳幼児死亡率及び妊産婦死亡率・婚姻率・就学率及び就業率などの正確なデータが必要となる。
 統計は、男女別・民族別・経済的状況やその他の変数ごとに詳細なものが必要であるが、基本的な社会・経済統計でさえ、常に男女別に分類されているとはかぎらず、女性の状況を不明確にしている。
 データ収集や分析技術は大きく改善されたものの、今なお多くの国で出される基本的な人口学的指標でさえ、信頼性に欠け不完全で入手が困難になっている。このいわゆる「データバリア(データが原因となった障害)」は、多くの開発途上国の計画立案者にとって障害となっている。
 
データの信頼性が十分にない分野(データ格差)
 データの信頼性が十分にないということは計画立案の障害となり、資源を最も必要としている人々に供給をする際の妨げとなっている。人口学的傾向が社会・経済・環境要因からどのような影響を受け、またどのように影響を与えているかを分析する際に、正確な人口情報・統計は必要不可欠なものである。
 
 データの信頼性を向上させなければならない主要な分野は、以下の分野である。
 
●人口問題
●女性のリプロダクティブ・ヘルス
●女性の労働
●人口移動、特に地域レベル及び国際レベルでの人口移動
●人口増加と人口分布が環境や天然資源に与える影響についてのデータ
 
女性労働の見落とし
 女性の行う仕事は、明らかに生産的であり社会的価値があるにもかかわらず、国民経済計算(National Account)や国勢調査においては、「目に見えないもの」となっている。このように計算外となっている理由の1つは、小規模農業、非公式な分野(インフォーマルセクター)、家庭内での労働など、データが今なお不十分である分野に女性労働が集中する傾向があるためである。
 さらに、水の運搬・燃料の収集・食料加工と調理・子供の世話など、女性の仕事は無給であることが多い。女性の労働に与えられる価値の低さには、根本的な改善が必要である。そのためには、女性の労働力が国の発展や全般的な社会福祉にいかに貢献してきたかということを正確に評価することが必要である。女性労働を正確に評価するためには、特にインフォーマルセクター及び農業部門に関する男女別の詳細なデータが必要となる。
 
人口調査の分析と今後の調査
 国際的に比較可能な形でデータを収集することは、データ分析のほんの始まりにすぎない。データは適切に分析され、広く公開され、開発計画の中に公式に組み込まれなければならない。このすべてに複雑な技能が要求されるので技術訓練が必要となる。この点を考慮し、ICPD行動計画は各国及び国際社会に対し、統計学・人口学・人口・開発研究における訓練プログラムを支援するよう勧めている。ICPD行動計画はまた、特に研究を必要とする分野を以下のように定めている。
 
●リプロダクティブ・ヘルスについてのさらなる研究と、性行動や出産、子育ての社会・文化的背景についてさらに研究。
●新しい家族計画の方法の開発。これにはより多くの男性用家族計画方法の開発と、HIV/AIDSを含む性行為感染症(STD)の蔓延防止に役立つバリア法及びその他の方法(殺菌剤、殺精子剤)の開発が含まれる。
●女性に対する暴力や数々の虐待を終焉させ、女性器切除(FGM)のような有害な慣習を廃絶するためのプログラムに必要な、男女間の役割と関係、及び社会的な価値観に関する研究。
●家庭内やインフォーマルセクターにおける無給労働を含む、女性の社会に対する経済的な貢献をより正確に映し出すために必要となる男女別のデータ。
 
調査活動
 国連人口基金(UNFPA)は数十年にわたり、国勢調査の実施やデータベースの編集、及びデータ収集や分析において男女の視点を加えることの促進など、様々な情報収集活動を支援してきた。また調査情報システムに関連するいくつかの国連のプロジェクトに参加することに加え、人口・保健調査プロジェクト(Demographic and Health Survey Project)にも参加している。1984年に始まったこのプロジェクトは、特にアフリカ、アジア、ラテン・アメリカにおける女性のリプロダクティブ・ヘルスに関するデータの範囲と質の双方を充実させた。
 研究者や一般の人が入手可能な情報ネットワークとしては、国連人口情報ネットワーク(United Nations Population Information Network:www.undp.org/popin/)があり、地域ネットワークとしてアフリカ地域のPOPIN−Africa及びアジア太平洋地域のAsia/Pacific POPINがある。







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