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セッション V
各国の過去三年間の活動報告 ―その一部を抄録―
 
アフガニスタン
 アフガニスタンは二十年にわたって国際社会に参加することができなかった。外から与えられた戦争で災厄を受けつづけてきた。人口統計は一九七五年UNFPAの技術・資金協力でおこなわれたセンサスに基づけば千三百五十万人であった。内乱が続きまた最近では外からのテロなど国内が紛争に明け暮れたために、現在人口についてのセンサスはない。
 いまアフガニスタンの国会(ロヤジルガ)は国の復興や人権の確保、知識の普及に努めている。また帰還民もふえ、その対策も急務になっている。現在、法律を作成し、ケシ栽培の禁止を決めた。また、健康センターも再建されてきている。さらに、男女を問わず大学に戻ってきている。カブールの人口は二百六十万人であり、六〇%の都市人口がカブールに集中している。
 ボン合意の後、ロヤジルガが開催され、東京で開催されたアフガン復興会議の精神にのっとって、人口センサスを行い、その正確な人口数値に基づき選挙を行い民主的に再建をすすめていく。
 
オーストラリア
 二〇〇二年三月超党派人口・開発議連総会で、ネルソン氏が議長として選出され、ホア議員がAFPPDへの代表として選出された。オーストラリアの議連は国内外でも知名度が上がってきている。オーストラリア議連として、UNFPAへの拠出停止を撤回するように米国の大統領への働きかけを行なった。またニュー・サウス・ウエールズ州で人口白書の報告会を開催しコリン・ホリス前議員が講演を行なった。多くの関心ある一般大衆が集まり、関心の深さをうかがわせた。ケリー・ホア議員自身が三月にAPDA会議で発表し、意識の高揚を働きかけた。オーストラリア議連はHP財団他の支援で活動している。
 
中国
 全人代では一九九八年以降に大いなる前進がおこなわれた。過去数年間で砂漠化防止法、大気汚染防止法、海洋汚染防止法など持続可能な開発の達成のための数々の立法がなされ、改正が行なわれた。二〇〇一年には人口・家族計画法の採択された。これは過去五十年間の実務経験に則ったものであり、中国にとっては必要なものである。中国の国情として耕地面積が限られているなかで人口を扶養してかなければならない。中国にとって、持続可能な開発が急務である。家族計画だけでなく、社会・経済発展を図ることが必要。この持続可能な開発を達成するために人口の過度の増加の抑制が必要で、そのためにプロダクティブ・ヘルスの利用を勧め、情報に基づいた選択を果たせるようになっている。また、全人代・常任委員会では法の履行状況に対する調査を二〇〇〇年十一月に行った。また西部開発をテーマにした全人代主催の持続可能な開発と人口にかんする会議にはAFPPD議長も参加し、多大なる助言をもらった。経済的発展をはかるなかで、西部地域の環境条件は厳しい状況にあり人口こそが問題となっている。そのために環境システムの保全、生態系の保護プロジェクトを実施している。中国は途上国であり、巨大人口を抱えている。今後の道のりは長い。貧困撲滅などに、まだまだ努力が必要。
 
イラン
 日本国政府、AFPPDに感謝。人口コントロールの努力は地球を守ることである。人間は増えてきたが他の生物は減ってきた。再生可能ではない資源が使われてしまうと元に戻すことができなくなる。不可逆的になっている。
 今のままでは、文明も崩壊してしまう。二十世紀初頭に二十五億人であったものが、一世紀で四倍に増えてしまった。昨年の人口増加率は一%である。人口コントロールヘの予算を一〇〇%増加させた。人口問題を国民に説得し、論理的にも受け入れ可能な状態にまで持っていくことが重要である。
 
インド
 インドはAFPPD創設国の一つであり、副議長としてAFPPD活動に貢献してきた。AFPPD副議長も参加。五百人以上の議員、各州で熱心な活動を続けた。
 
インドネシア
 インドネシアの国内国会議員員会である、インドネシア人口・開発議員フォーラム(IFPPD)が二〇〇一年十月に成立した。IAPPD成立にさいしAFPPDの積極的な支援を得ることができた。インドネシアの人々のために生活の質(QOL)を上げること中心に、パートナーシップを組んで活動していきたい。
 
日本:国井正幸(参議院議員)
 ご参集の皆様、私は日本国の参議院議員で国際人口問題議員懇談会の国井正幸です。本日はスピーカーの中山太郎会長に代わり、日本国国会議員の人口と開発に関する国会議員活動についてご報告致します。
 私どもの国際人口問題議員懇談会は、一九七四年に岸信介・元総理により世界で最初に設立された人口と開発に関する超党派の国会議員組織であります。
 現在皆様方がご参集されているAFPPDもJPFPの代表幹事だった佐藤隆・元農林水産大臣が中心となって、中国、インドを初めとするアジア諸国に呼びかけて設立されたものであります。AFPPDの発展は私どもにとっても大きな誇りであります。
 
 
日本国議員の活動報告をする国井正幸参院議員
 
 
 さて、日本の人口問題に対する活動は大きく分けて二つの分野に区分して考えることができます。一つは少子高齢化に対する対策、もう一つはODAを通じた途上国の人口問題に寄与するための国際協力の分野であります。ODAの分野では、我が国のかつてない厳しい財政状況下にあって、聖域なき財政改革をスローガンに歳出の大幅カットが行われており、残念ながら、人口分野に対する拠出もそのあおりを受けています。
 しかしながら私達は人口問題は人間の尊厳を守る平和・福祉活動であることを十分理解しており、地球と人類の共存を果たすために最も基本的な条件であると深く認識いたしています。
 厳しい財政状況ではありますが、目下、政府との交渉に最大限の努力をいたしているところであります。
 日本は西欧以外ではじめて人口転換を成し遂げました。その経験がアジアに波及し、現在では数多くの国で人口転換が進んでいますが、日本は西欧と異なり、非常に短期間で人口転換を成し遂げた結果、高度成長期には人口学的ボーナスを享受し、先進国の仲間入りを果たすことができました。この人口転換の結果、日本はいま世界でも例を見ない速度で高齢化が進み、その結果、年金や医療、保健など社会保障の面、人口構造の変化など喫緊に対応しなければならない問題が山積いたしています。
 日本で最大の懸案となっています少子化の問題ですが、本年の日本の合計特殊出生率(TFR)は一・三三に落ち込みました。これは非婚率の上昇とともに、結婚した若いカップルが子供を持ちたくとも持てない状況が影響しているといわれています。
 まもなく二〇〇六−二〇〇七年ごろから、日本の人口は減少に転じると予測されています。人口の減少は急激で、高齢化と人口減少が同時に進むという深刻な事態に立ち至ります。
 人口増加が地球に大きな負担をかけることはいうまでもありませんが、国を担う政治家として、国の将来を考えたとき、極端な少子化と高齢化は大きな問題であり、その対策が急務となっています。
 このような日本の現状の中で私達は、過去三年間に、子育て支援対策の面では、「育児休業、介護休業等育児または家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の一部改正」、ジェンダーの面では、「男女共同参画社会基本法」、女性に対する暴力の廃絶に関しては「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」、循環型社会の形成に関しては「循環型社会形成推進基本法」等々、各分野で基本となる法律をおよそ二十本成立させました。
 またJPFPは二〇〇一年十一月にアフリカとアジアの国会議員会議としては初めての「人口と開発協力パートナーシップに関するアフリカ―アジア国会議員会議」をホスト致しました。さらに、APDAとの協力のもと「人口と開発に関するアジア国会議員代表者会議(通称APDA会議)」を毎年開催しています。
 第十六回APDA会議は、タイのバンコクで、第十七回会議はニュージーランド国オークランドで、第十八回会議はAPDA設立二十周年と併せ東京で開催しました。
 APDA会議では、グローバリゼーション、食料安全保障、水資源と公衆衛生・農業開発、太平洋島嶼国における人口問題など幅広い領域に関して協議致しました。とりわけ水をめぐる人口問題では先駆的な討議を行い、世界的に枯渇する水問題を中心とした視点から食料安全保障、保健衛生などの対策に影響を与えることができました。
 APDAの二十周年記念式典には、福田康夫・内閣官房長官、坂口力・厚生労働大臣、武部勤・農林水産大臣、川口順子・外務大臣をはじめ内外から多数の賓客にご参加いただき、人口・開発問題の重要性をアピールいたしました。JPFPの総会、部会、合同部会は三年間で二十回開催し、ワールドウォッチ研究所のレスターブラウン博士をはじめ内外の著名な講師をお招きして国会議員の啓発活動を行いました。
 さらにモンゴル議員団、韓国議員団、ラオス議員団の受け入れを行い、日本の経験を視察して頂き、同時に派遣事業として日本国の国会議員をラオス国に派遣し途上国の深刻な事情を視察いたしました。
 ご承知のように、谷津義男JPFP幹事長にはAFPPD議長をお務め頂き、アジア地域にとどまらず、ヨーロッパ地域議連など世界各地域の議連との連携を強化して頂いています。今年の十一月にはカナダのオタワで開催される国際議員会議(IPC)など積極的な活動が予定されています。
 特筆すべき事業と致しましては、日本国国会議員団による東アフリカ派遣があります。本年初頭には桜井新AFPPD前議長を団長に、タンザニア、ウガンダ、ケニヤを訪問しHIV/AIDSの現状を視察いたしました。HIV/AIDSの問題はアジアでも深刻な問題となりつつありますが、アフリカの経験に学び、アジアでの蔓延を抑制するためにも非常に有益な事業であったと思っています。
 今、日本が直面している急速な少子高齢化問題は未だかつて誰も経験したことのない、厳しいものですが、必ずやアジア諸国にも早晩襲ってくる問題であります。人口問題は一つの大きな山を越えると、また次に大きな山が現われるという難しい問題を内包しています。また食料、エネルギー、環境問題も人口問題と一体不可分の関係にあり、私達が解決しなければならない最重要課題であります。
 アジアには、アジア・モンスーンという、地理的・気候的条件のもとで、共存、共生というよき伝統と文化があります。過度な競争に陥ることなく、助け合いの精神を持って、共に生きる知恵を結集すれば、必ずや新たな打開の道を見出し、それによって再び創造的な社会を切り開き得るものであると確信いたしています。
 私どもの生涯は宇宙から見たら瞬(またたき)にも似た、短いものでありましょう。しかし、未来に生きる人類と地球のために、同じ時代に生きる政治家として同志的連携を深めつつ前進してまいろうではありませんか。







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