日本財団 図書館


2002年世界人口デー“人口・貧困・平和”シンポジウム開く
 七月十一日「世界人口デー」特別シンポジウムが人口問題協議会、ジョイセフ、日本家族計画協会主催、APDAの協力で東京・日比谷の日本プレスセンターで開催された。
 本年は、「人口・貧困・平和」をメインテーマにアフガニスタンの現場からの報告が行われた。現場からの報告に先立ち、有森裕子・国連人口基金親善大使がカンボジアでのエイズ対策について報告した。有森さんは、七年前よりカンボジアのハーフマラソンに参加し、現地のエイズ感染者と話し合いをした経験がありアジアで最もエイズ感染率が高い同国の将来を憂慮し、とりわけ、都市部のエイズ患者が夫婦間感染から母子感染の危険性にさらされている現状について報告した。売春婦に接する際のコンドームの使用は勿論大切だが、一般の人々がコンドームを使用することの重要性についても訴えた。
 引き続き、女性のリプロダクティブヘルス等の活動に功績のあった団体に贈られる「加藤シヅエ賞」の授与式が行われ、「ウイメンズセンター大阪」と「AWS女性シェルター」が同賞を受賞した。
 
カンボジアのエイズ対策の報告をする有森裕子・国連人口基金親善大使(右)
 
アフガン復興は日本の戦後の経験を活かせ―
 「世界人口デー」特別シンポジウムでは、山内昌之・東大教授は、アフガニスタンでは地雷の除去や食料の確保が緊急課題で、人間の安全保障が保たれない状況にある。今後の国づくりには日本の戦後復興の経験をモデルにすることがアフガン復興に有効であると報告。
 
アフガニスタンの報告をするパネリスト
左から山内昌之・東大教授、喜多悦子・赤十字九州国際看護大学教授、高橋秀行・ジョイセフ部長
 
 喜多悦子・赤十字九州国際看護大学教授は、紛争により合計特殊出生率(TFR)が極めて高く平均寿命も低下し、子どもの五〇%が栄養不足で教育の機会も低下するなど国全体が抱える問題について報告。今後の国づくりには、男性主導が有効であると指摘。さらに、アフガンをはじめ途上国では、GNPが世界のわずか一八%、一方、途上国の疾病が九三%、人口は世界人口の八四%を占めている不均衡を指摘。アフガニスタンの人々がこれらの困難を克服するには米国ではなく日本の協力が求められているのが現場の声であると報告した。
 高橋秀行・ジョイセフ部長は、これまでのアフガニスタンのフィールドで得た情報から同国の妊産婦死亡率が極めて高く、その原因がタリバン時代に家族計画が禁止され望まない妊娠により流産、破水によるものと報告。NGOの立場から草の根援助により改善をすすめたいと述べた。
 閉会式挨拶で黒田俊夫・ジョイセフ理事長は、「人口・貧困・平和」はこれからの人類の課題であり今回のシンポジウムを契機にアジアをはじめ世界の人口問題にあらゆる力を結集して問題解決にあたりたいと結んだ。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION