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3.7 縦強度および中央横断面の断面係数
3.7.1 縦強度の基準
 2.3.4ですでに説明したように、船全体の強度を考える場合には、ボギング、サギングによって船体中央に生ずる最大曲げモーメントに、船体が必要にしてかつ十分な安全率でこれに耐えるように設計することが従来からの伝統的な方法である。ここで船体は、船底外板、内底板(全通二重底を有する場合のみ)、船側外板、甲板およびこれらに直結しかつ中央部に全通した縦通材(これを総称して縦強度部材という)から成る中空の箱型梁と考える。
 最大曲げモーメントをM、中央横断面の断面係数をZ、(強力甲板に対するものをZ、船底に対するものをZとした場合、その小さい方をとる。通常の船ではZが小さい)、許容応力をSとすれば、
S=M/Zの関係が成り立つ。
 ここにMは船の大きさ、種類、積荷の状態などで変り、Sは船の大きさで変化する。
 一般には、縦強度部材による断面係数Z、の計算を行い、構造規則で要求されるZ(≧C1 L12B(C'b+0.7))より計算値が大でなければならない。
 もし、Zの値がZの値より小さければ鋼甲板、梁上側板、船底外板等の厚さを増し、有効断面積のアップを図り再びZの計算をし直し、Z≧Zを満足させるようにしなければならない。
 第3.41図にこの手順を示す。
 
(拡大画面:18KB)
第3.41図 断面係数Zの計算方法
 
3.7.2 中央横断面の断面係数の計算方法
 計算に当っては、まず強度断面(P.49参照)を定めて縦強度部材を決定し、その断面を第3.42図に示すように適当な縮尺で画き、仮定中立軸の高さを設定する。仮定中立軸の高さは、船の深さの40%位(0.40D)にとるのが一般的である。
 断面二次モーメントは、片側を計算した後に2倍する。水平又は水平に近い部材(板)は、その断面重心を通る水平軸に対する自身の二次モーメントi(=a・h2/12)が他と比較して無視できる程小さい値となるのでiの計算はせず、断面積a(mm2)に中立軸からその部材の重心迄の距離l(m)の自乗を掛けた値を用いる。
 垂直な部材(板)はその大きい板幅がhになるので、それ自身の二次モーメントi==a・h2/12(mm2・m)を計算してa・l2(mm2・m)に更に加える必要がある。
 計算の便宜上、仮定中立軸から上方を添字「上」で表し、下方を「下」で表すことにする。
 真の中立軸は全断面積A(mm2)の重心を通る水平軸であるから、仮定中立軸よりの距離(上方)にあるときは正、下方にあるときは負とする)をlとすれば次式で与えられる。
 
 仮定中立軸に対する断面二次モーメントをI'(mm2・m2)とすれば次式で与えられる。
I'=2{(Σal2+Σi)+(Σal+Σi)
 よって、真の中立軸に対する断面二次モーメント(mm2・m2)は次式で与えられる。
 
 真の中立軸より強力甲板ビームの船側における上面迄の垂直距離をy(m)、同じく下方のキール上面迄の距離をy(m)とすれば、強力甲板に対する断面係数Z及び船底に対する断面係数Zは次式で与えられる。
Z=I/y(mm2・m)
Z=I/y(mm2・m)
 上式のyの値の大きい方、すなわちZの値の小さい方のZをもって船体横断面の断面係数とする。この値が、規則で要求されるZ=C1L12B(C'b+0.7)cm3の値以上でなければならない。
 面積の単位はmm2とし、距離の単位はmとする。従って、断面二次モーメントの単位はmm2・m2、断面係数の単位はmm2・mすなわちcm3となる。
 次に例題をあげて説明する。
〔例題〕
第3.42図に示す船体中央横断面の断面係数Z及びZを求めなさい。
 
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第3.42図 横断面形状
 
(解)
 仮定中立軸の高さ(y)をキール上面上1.500mに設定し、下表により計算する。
(拡大画面:42KB)
 
(1)仮定中立軸から真の中立軸迄の距離を求める。
(2)仮定中立軸に対する断面二次モーメント
I'=2(96,146+98,333)=388,958mm2・m2
(3)真の中立軸に対する断面二次モーメント
I=388,958−2(30,400+74,936)×(−0.281)2=372,323mm2・m2
(4)真の中立軸より強力甲板ビームの船側における上面迄の垂直距離
y=D−(Y+)=3,800−{1,500+(−0.281)}=2.581m
(5)真の中立軸よりキール上面迄の垂直距離
y=Y+=1.500+(−0.281)=1.219m
(6)強力甲板に対する断面係数
Z=I/y=372,323/2.581=144,255mm2・m
(7)船底に対する断面係数
Z=I/y=372,323/1.219=305,433mm2・m
 
3.8 構造部材寸法計算書
 構造部材は、前述のとおり設計対象船舶に対応する構造規則又は基準等によって計算して求める。鋼船又はアルミ船の場合の材料は、市販されている材料寸法(マーケットサイズ)と在庫を考慮しながら決定する。







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