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ISO/TC 188グループドWG ビクトリア会議報告
はじめに
 ISO/TC 188の年次総会とそれに先立つWGの会議がカナダ/ビクトリア市で開催されたので、そのWGの会議について以下に報告する。
 
1. 開催日時
月日 A.M. PM.
6月10日 WG18 スカントリング
6月11日 WG18 スカントリング
  WG5 機関及び推進システム
6月12日 WG27 パーソナルウォータークラフト
6月13日 TC188 総会
6月14日 TC188 総会
※なお議事参画者はまとめて3.出席者に表示した。
 
2. 議事
2−1 WG18スカントリング関係
<これまでの概要>
 WG18で進められている、船体の構造に関する基準(案)の各パートとその進度は現在まで以下のようになっている(いた)。
 
パート1:材料:熱硬化性樹脂、ガラス繊維補強、関連積層
既にISOとして設定済み。
パート2:材料:サンドイッチ構造の心材、埋めこみ補強材
パート3:材料:スチール、アルミニウム、木材、その他の材料
パート4:製造場所と製造
上記のパート2/パート3/パート4はFDISとして賛成の投票結果を得ているので、ISOとして設定される。
パート5:設計水圧、設計応力、構造の設定
ここ一年集中的に審議、検証を行い、よく使用されるFRP/スチール/アルミニウム艇についての設計水圧/設計応力/外板構造の設定については成果をあけている。議論中新しい提案がCENのコンサルタントよりあり、他のメンバーの支持もあり、内部の組み換えと新規パートの追加を決めた。これは木製ボートの構造はこのパートに残し、多胴艇は別パート(6)とすることとし、以下のパートが追加された。
パート6:構造配置と詳細
これはパート5の補助的な基準であるので、パート5がまとまるまでは進展しない。
パート7:多胴艇
パート5より分離
パート8:舵と舵軸
新規作業項目
パート9:船体付加物と帆装付属品(シャフトブラケット、チェンプレート等)
新規作業項目
 
<議事>
 今回はパート5について、前バルチモア会議での改定事項の「確認+議論」、設計水圧を定める計算式関係の再検討、提案された簡易式の説明とこれに対する審議を行った(添付資料16参照)。
 
a)最新ドラフト(corrected for results of Baltimore meeting 2002-05-05)から更に変更された箇所
Clause6.1.1
 見出しBottom impact pressure Pb1→Boat bottom pressure Pb
 
 更にここではDynamic load factor ncgを決める方法が計算式ではなくなって、以下のTable 3のみとなった。
 
Table3-Max. ncg for calculation(名称も変更)
使用状態 セイル パワー
  Dynamic load factor ncg
通常(Cruising) 1.0 3.0
中間(Sport cruising) 1.5 4.5
極限(racing, rescue, patrol) 2.0 6.0
※校正では使用状態のカッコ内は注記にいれてeditorial adjustmentを行うこととなった。
 
 Area reduction factor karの値は[Ad(design area)/Ar(reference area)]の値をもとに計算或いはグラフより求めるのだがAd/Arの計算が厄介なので、このkarの計算を簡易近似式にする提案があり、今回審議した(後出)。結論は検証の結果と他の主要メンバーのコメントとにより採否が決められる。
 
 また現ドラフトのAr(=[0,6-(LH-3)/70]・LWL・BWL)の式(VTT)は変わってくるらしく、アメリカのボートがほとんど不合格になるとアメリカ代表が発議し、次回にコメントを提出することとなった。それまでは現状維持とする。
 
Clause 6.1.2
 見出しBottom pressure for displacement mode Pb2→Sail boat bottom pressure Pbs
 従って基本式はPbs=11,76・(3Tc+0,16LWL+1,62)・Kar・KL・fw1となる。
 
 fw1(デザインカテゴリー係数)はボートの式のと同じものとする。
 A, B, C, Dでそれぞれ=1, 0.95, 0.75, 0.5とする。
 
Clause 8.1.1
 新たにplywood hull constructionの記述(影部分)が追記されているが、この部分は議論不十分なため、後日変更の可能性あり。
 
式(18)のeditorial修正→σdとなる。
 
式(19)の後のwhere以下“see table 4”→“see table 5”となる。
 
Table 8 Modulus of rupture coefficientは全部削除となる。
 
Table 9のk3FRPのみに適用とする。
 
Clause 8.1.2.4
 この中の係数k5は今後変更の可能性あり。データが揃うまではこのままとなる。
 
Clause 8.2.1
 ここでハット型スティフナーの場合のtsは下部の幅とする。
 その他wの式のeditorial修正(ルート傘のかぶりの長すぎる間違い)。
 
Clause 8.2.2
 editorial修正
 式(27a)はSM=83,3・Pr・s・l2d 又式(27b)はAw=ksa・Pr・s・l/τdとなる。
 Where以下の記号説明中λ→l又σa→σdとなる。
 
 又このclauseは全体に理解し難いので、CENコンサルタントより「should be more user friendly」の要望がなされた。
 
Clause8.2.4 Proportions
 ここでは "face bar", "flat bar"の意味を質して分かった。スティフナーの断面形状において"face bar"はアングル又はT字形の上部水平メンバーを称する。"flat bar"は垂直のメンバー(いわゆるweb)を称する。
 
b)簡易式についての審議
 パート5は船体構造設定の基本である、設計水圧、船体外板の計算理論と実際の計算式について、時間をかけて技術論文との調整、実船での検証(主にFRP艇)、他の基準(主に船級協会のもの)との比較検討を行ってきた。大体目途がついてきた段階で、より実際的にしたいという、CENコンサルタントよりの提案で簡易式の検討を前回のWG会議より進めることになった。最近新メーバーとなったUKのMr. Robin Lascombe(Southampton University造船科講師)が簡易式の提案ペーパーを提出し、説明を受けた後、審議した。
 結論は当初にも述べたとおり、実船での計算検証の結果と他の主要メンバーのコメントとにより改定/採否が今後決められる。
 
 簡易式の提案ペーパーは添付資料17による。
 
 簡易式はncgkar(簡易式ではkprとしている)を計算しやすいように変更したものである。以下による。
 
Pb1=0.1・Δ・(1+ncg)・kpr・kL/LWL・Bc (1)
 
 ここにncg=0,45fwkβ(V/√LWL (2)
 
fw=1,00(A), 0.95(B), 0.75(C), 0.55(D)・・・デザインカテゴリー係数
kβ=0,8・・・ディープV艇(艇中央での上反角が18度以上), 1,0・・・その他の艇
V/√LWLの範囲は2,36以上18以下
 
kpr=圧力減少係数
 
圧力減少係数(kpr
適用部署(箇所) 低速艇
V/√LWL<3,0
高速艇
V/√LWL>3,0
外板、
bは設計パネルの短辺
1,14-0,0019b/LWL0,4 8,2L0,36b0,6
パネルを支持する二次スティフナー(例:ストリンガー、テッキビーム、横フレーム) 0,8kpr(外板) 0,8kpr(外板)
二次スティフナーを支持する一次フレーム(例:ガーダー、深い横フレーム、) 0,5kpr(外板) 0,5kpr(外板)
  主にセールボート 主にパワーボート
 
kpr値の制限は以下
kpr(max)=1,0
kpr(min)=0.25曲げ強度及び剛性の計算に適用するとき。
kpr(min)=0.4サンドイッチ構造のせん断強度の計算に適用するとき。
 
 この簡易式の正当性についても比較と若干の計算をした説明がこの添付書類に記してある。
 ここでは動荷重係数ncgはほとんど速長比V/√LWLのみに比例している。またkpr(旧kar)は水線長と設計パネルの短辺より計算され、今までよりはすこぶる簡単になっている。
ただしこの簡易化の提案に対して、当日不参加の委員から反対のコメントが前後して届いており(添付資料18〜20)、先行きはいましばらく時間がかかるものと思われる。注意して見守りたい。
 
※当日使用した書類
・Small craft - Hull construction/scantlings - Part 5: Design pressures, design stresses, scantling determination (corrected for results of Baltimore meeting 2002-05-05)(添付資料16
・SIMPLlFYING THE Pb1/Pb2 EQUATIONS (VERSION 1,0 - FOR DISCUSSION BY WG18)(添付資料17
・Comments on Robin Loscombe's Proposed Simplified Pb1/Pb2 Equations for ISO/CD 12215-5(添付資料18
・Re: ISO TC 188 WG 18 Victoria (Email letter from R Curry on 07.Jun 2002)(添付資料19
・Re: ISO TC 188 WG 18: Follow-up Baltimore (Email letter from R Curry on 11. Jun 2002)(添付資料20
 
2−2 WG5機関及び推進システム関係
<概要>
・WG18(スカントリングス)との並行会議で、出席者が少なかった。
・英国代表であったNighy氏(ICOMIAの技術委員長)が退任し新任の方が出席していた。
・日本コメントは全て採用され、次のステップ(DIS)に進めることになった。(詳細に検討したコメントに対し感謝された)
・非耐火性ホース(舟艇ぎ装専門分科会担当)についても日本コメントが採用され、かつ疑問点についても明らかになった。
 
<議事>
a)日本コメントについて
1)4項(Table1→Table2)、認められた。
2)6.2項(6.2.3.1 to 6.2.3.14→6.2.5.1 to 6.2.5.12)、認められた。
3)6.2.2項(table10→table1)、認められた。
4)6.2.3項、最新版では訂正ずみ。
 
b)6.3項、製造公差について
1)反対意見もあったが、日本案が採用されてDIS段階へ進めることになった。
2)NMMA代表から、本会議の基づく原案を製造メーカに通知して、再認識したい旨の発言があった。(DIS段階で再議論があるかもしれない)
 
c)使用燃料
1)出力測定時に供する燃料性状規格について、排ガス測定と同じ燃料を使用するようEU委員会で整合化を図っている。(最終段階)
 賛同が得られればISO 8665に含めることを提案したい。(DIS段階から)
 
d)次のステップ
1)DIS段階に進む前に、本会議に基づき議長がドラフトを作成送付し、メンバーが事前検討する期間を設けることとした。(ドラフト受領後2週間)
 
e)その他議事
1)耐火性ホースについては、議長に代わって米国代表がPJリーダになってとりまとめを行った。日本意見は採用され、また専門分科会での疑問点についても明らかになった。(詳細省略)
 
f)各情報
1)出力測定方法表示に関するCoreSTD(ISO 15550)は2002年5月1日に正式発行された。
2)ISO/TC 70で内燃機関の一般的重量測定方法/記載に関する規格を議論しているが、原案がまとまった。(CD?)
3)イタリア/フランス/スペインでは、船舶登録申請時に機関仕様の諸事項についても別紙の如く制定を検討中であるが、出来ればEU内部/国際的に統一規格の作成を提案したい。今後ISO規格の中に含めることを検討していく。
 
※当日使用した書類
・Satellite standard ISO8665, 2002.5.13, Power measurements and declarations(添付資料21
・ISO 15550, Determination and method for the measurement of engine power(添付資料22
・Japanese Comments for ISO/CD8665, 2002.5.31(添付資料23







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