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2002年5月16日付ドイツのコメントに対する日本からのコメント
2002年5月「静置条件におけるスキマーの性能試験」及び2002年5月16日付ドイツの回答に対する日本のコメント
添付資料 8
1)試験区域の形状
 試験を実施する上で、試験区域の形状を正三角形にしなければならない理由が明確ではないので、この部分は「試験区域の形状は、区画が作りやすく安定した正三角形を推奨する。」とした方が良いと考える。
 水槽の一部をオイルフェンスなどで仕切った試験区域の中で、モップ式スキマーのような油の乳化を伴う試験を行う場合、水中に分散した小さな油滴がオイルフェンスの外側の水面に浮上して薄い油膜を形成することが懸念される。もしも、このような現象が生じる場合には、「水槽全体の清掃を避ける」という目的は達成されないことになる。オイルフェンスの代わりに水面を通って水槽の底まで達する仕切板であれば、試験区域以外への油の拡散を防止できるが、今後検討される波浪試験への適用が難しくなる。
 
2)§6.1の表1
 例え、前回の会議の決定事項であるとしても、既に指摘したように、依然として表の中に試験時間が規定されているのは問題がある。
 
3)試験温度
 インターネットの或るホームページから世界の主要都市の平均気温を調べたところ、下表の結果が示された。
 
(拡大画面:44KB)
 
 試験温度が15±2℃に規定されると、表中の青色を付けたカラムで示すように、年間の1/3以上の期間、この条件で試験が行える都市はほとんどないことが分かる。
 
 環境試験室のように空調設備を備えた水槽は世界でもほとんど見当たらないので、試験が行える期間を考慮して、この温度設定が適切かどうか、再検討が必要と思われる。要するに、試験温度を規定しなければならない理由は、温度が直接的に影響するのが試験油の粘度だけなので、その粘度を正確に規定すれば済むことであると考える。他方では、試験油の粘度を試験報告書にどのように表記すべきかという問題がある。記述方式としては、試験温度における試験油の粘度を測定する方法と「粘度−温度チャート」から試験温度における粘度を計算で求める方法がある。
 いずれにしても、このときに最も注目すべきは粘度であり、試験温度は従属的な測定項目となる。温度は粘度を表記するための条件である。
 日本では、精油所から提出される石油製品の性状表に示される粘度は40℃と100℃における2つの数値が報告される。ほとんどの石油製品は温度に対する粘度の対数値が直線的に変化するため、これらを「粘度−温度チャート」にプロットして直線で結べば、任意の温度に対する粘度が比較的良い精度で推定できる。これは試験を行うたびに粘度を測定するのが困難な場合やある程度の精度で粘度を表示できれば目的が達成できるような場合に用いられる代替手段である。
 しかし、スキマーの試験では一般に利用されている方法でもある。
 
4)油量(または油層厚さ)と試験時間
 試験規格に油量と試験時間を定めることに対して油層厚さの検知器がどのように関係してくるのか理解できない。
 試験油量や汚染水の量をできる限り少なくして、スキマーの性能を正当に評価できるような試験方法を開発するのには賛成である。
 試験区域の面積と投入油量は試験条件であり、双方から試験区域内の平均油層厚さが計算できるので、油層厚さの検知システムは必要ないと考える。試験区域内の平均油層厚さを試験条件とする場合は、面積との計算で求めた油量を試験区域内に散布する。
 ただし、試験時間は試験条件ではなく試験結果であるため、規格に定めるべきではない。
 
5)"time/quantity ratio"の変更
 この記述の中で、限りなく薄くなる油の特性を考えると、「再現できる基準」(re-producible criterions)を定めるのは非常に難しい。それで、判定を簡単化するために、散布した油量から特定の割合(例えば、80%)をスキマーが回収したと判断した時点で試験を終了することができるように規定することを提案する。
 このために、試験依頼者が装置の運転と試験停止の判断をすべきである。なぜならば、ある条件で回収した油量が初期の油量に対して特定の割合に達しなかった場合、その条件の試験はやり直しとなるが、試験停止の判断を依頼者が決定すれば、再試験を受け入れやすくなる。また、装置の運転はその能力や特性を一番熟知している試験依頼者が行うのが試験をスムーズに進行させる上で最も良いと考える。
 試験条件の設定や試験データの採取は試験施設側の役割である。
 
6)回収タンク
 表1において、各グループの最大能力のスキマーを使って規定の時間、回収試験を行ったときの回収量は最大で8m3となる。この量を貯蔵するために十分な回収タンクの大きさは10m3が必要である。
 この容量を直径が1.5〜2mの円筒タンクに当てはめると、その高さは5.7〜3.2mになり、回収タンクとしては高すぎる。
 また、この容器を使って前回指摘したように最少油量20リットルの試験を行うと、全量回収したときの油層厚さは11.3〜6.4mmとなり、まだ測定精度が十分とは言えない。
 界面検知器の利用は、機器が0.1mm以内の精度で測定可能であれば、上記の油層厚さに対して2%以下の測定誤差になるため採用可能と思われる。
 とにかく、このように大型の回収容器が必要となるのはスキマー能力に対して試験時間を規定したことに起因するので、この項は再検討を要する。
 
7)波浪試験
 試験規格の中に波浪試験を盛り込むことは、スキマーを正当に評価する上で重要であるため、今後の検討課題として採用されることを希望する。
 
8)規格から除外すべき装置
 スキマーの中には10万cSt以上の粘度を持つ油に対して有効性を発揮する装置や水槽では試験できないような大きな能力を持つ非常に大型の装置も存在するが、これらは他のスキマーと同じ試験方法が適用できないので、除外すべきである。
以上







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