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C.4 著しい害
 著しい害に関しては、ASCM第6条(3)で起こりうる状況として列挙されている。その中で、その項のポイントc)で説明されている事項が、本調査に関係のある規定である。すなわち、“補助金の効果が、補助金の交付を受けた産品の価格を同一市場における他の加盟国の同種の産品の価格よりも著しく下回らせるものであること又は同一市場における価格の上昇を著しく妨げ、価格を著しく押し下げ若しくは販売を著しく減少させるものであること。”
 
 価格の引き下げと価格破壊に関しては、前述のとおり損害評価に関連した解析が行われている。実際、上述の解析は世界の造船市場に関して行われているものであるが、そこでなされた評価は著しい害に関連させても有効である。
 
 ASCM第6条5では、「6.3(c)の規定の適用上、価格を下回らせることには、補助金の交付を受けた産品の価格と同一の市場に供給される補助金の交付を受けていない同種の産品の価格との比較によって立証される場合を含む。この比較については商取引の同一の段階で、かつ、同等な時点で行うものとし、価格の比較に影響を及ぼすその他の要因に妥当な考慮を払う。」と規定されている。上述の価格比較は、運営補助を受けた域内造船所を例に行われているが、契約船価に比例して与えられる支援のインパクトは、引き下げ幅の減少に影響を与える。言い換えると、受けた支援を反映した価格調整は、確立された船価の引き下げを大きく増加させるであろう。
 
 調査対象期間中、少なくとも24隻の船(7隻のコンテナ船、12隻のフェリー、5隻のオイルタンカー)について、域内製造業者は船主にオファーを出しているが、結果として、韓国の造船所が非常に低い船価で提示を出すため、域内製造業者は契約を失っている。韓国の契約船価は、欧州の造船所が提示した船価に比べて、平均で約25%低い。
 
Type of
Vessel
Number
of vessels
Size
(CGT)
Offer by
Community
shipyard(ME)
Korean
price
(ME)
Price
difference
Container 1 21.718 110,0 75,0 -31,8%
Container 1 28.691 97,2 70,3 -27,7%
Container 1 38.500 96,0 80,0 -16,7%
Container 1 44.115 80,0 65,0 -18,8%
Container 1 46.120 96,0 71,5 -25,5%
Container 1 31.467 31,5 26,4 -16,1%
Container 1 21.718 33,0 21,8 -33,8%
Ferry 2 22.500 43,7 31,0 -29,1%
Ferry 4 25.200 64,9 50,1 -22,8%
Ferry 2 28.800 74,1 58,8 -20,7%
Ferry 2 22.500 74,1 56,2 -24,1%
Ferry 2 24.300 41,2 36,6 -11,4%
Oil tanker 1 21.000 28,1 25,3 -10,0%
Oil tanker 2 17.082 35,7 22,0 -38,3%
Oil tanker 2 17.082 39,4 22,0 -44,0%
 
 他のいくつかのケースでは、域内製造業者は、提示する前に失望し、入札プロセスに参加する事さえしない場合もあった。
 
 上述を根拠に、域内企業は調査対象期間中にASCM第5条、TBR第2条(3)及び(4)に規定される不当な影響を受けた証拠があると断言できる。
 
 特に、域内企業は、ASCM第5条(a)に規定される損害を被ってきた。言い換えれば、マーケットシェア、建造能力利用率、利益、売船価格、直接雇用及び投資において悪影響を受けた。製造物マーケットの種類によるが、全世界的な造船市場においてこのような損害があったことが示された。このことは、合理的に域内市場に当てはめることができる。(前述のC.2で説明したとおり、区分された域内市場を定義することは適切でないし、また、現実的ではないが)。
 域内企業は、また、ASCM第5条(c)に規定される著しい害を被った。すなわち、巨額の船価引き下げ、船価の下落及び販売の喪失である。
 
 船種別では、コンテナ船及びプロダクト/ケミカルタンカーにおいては、相当の損害及び深刻な不利益があることが判明した。損害及び深刻な不利益は、より小さい規模ではあるが、バルクキャリア、オイルタンカー及び旅客船、RoRoフェリーの分野においても存在し、他の船種では損害又は深刻な不利益は発見されなかった。最終的に、クルーズ船については、損害又は深刻な不利益は立証されなかった。







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