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はじめに
 現在、世界の造船業は、エリカ号、プレステージ号による大規模油汚染によるシングルハルタンカーのフェージングアウト前倒しやバルクキャリヤーの安全問題に対する不安材料などを背景に、一定の手持ち工事量を抱えている。しかし、1990年代半ばには韓国による大規模設備拡張が行われ、中国等の新興造船国が急速な進展を見せる中、各国造船所の生産性の向上等により、世界の造船能力は大幅に拡大し、極めて近い将来、大きな需給ギャップが生ずることは、主要造船国のいずれもが肯定するところとなっている。
 このような状況の中、韓国造船業は低船価・大量受注により1999年、2000年と世界第一位の受注量を記録したが、このような韓国の実績に対しEUは、財閥系造船会社の経営破綻処理に対する政府助成等はWTO補助金協定に反するもので、こうした韓国の行動が世界全体の船価低落を招いたとし、1999年12月以降、WTO提訴の可能性を圧力に韓国との間で二国間協議を実施してきた。しかしながら、有効な解決策を見出せなかったことから、ついにWTO提訴に及び、かつ、暫定的とはいえ、韓国の不公正慣行への対抗を目的とした造船助成の再開を決定している。
 本調査報告書は、このような欧州と韓国における造船摩擦について、その動向を時系列で追うとともに、紛争の論点整理を試みた。また、今後は恐らくWTOの場で、紛争処理パネルと呼ばれる小委員会が設置され、第3国からの意見も踏まえてパネル裁定が行われると思われる。
 本報告書が、我が国造船政策の基礎資料として活用されることを期待するものである。
 
2003年3月
ジャパン・シップ・センター







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