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5.4 タイの市場におけるRO−RO船の望ましい活用
 RO−RO船は以下の2つの基本カテゴリに分類することができる。
・貨物/客船
・貨物専用船
 
貨物/客船
 貨物/客船は日本やヨーロッパでごく一般的に使用されており、特に短距離の航路に用いられている。これらの船舶は全く異なる以下の2つの市場に役立っている。
・荷物を積載したトラックをそのまま運搬、運転手は乗客として運ぶ。
・一般乗客の他、乗客を自家用車と共に運ぶ。
 こうした船舶は道路輸送が代替手段とならない場合や、全て道路で輸送した場合の運送時間が船舶輸送と比較して非常に長い場合にその長所を発揮する。フェリーターミナルまでの時間や待ち時間を含めると、フェリーも車も移動時間があまり変わらないといった場合には、フェリー利用者の数を増やすことは困難である。
 タイにおいて、乗客及び自家用車を対象としたRO−RO船によるフェリーサービスヘの需要に対し、具体的な対応がとられているかどうかは不明である。しかしながら、自家用車所有者が、こうした船舶を使用することにより旅行時間を大幅に減少できる可能性は、ほとんどないと言って良い。従って本調査では、貨物専用RO−RO船に焦点をあてることとする。
 
貨物専用船
 一方、貨物専用RO−RO船は、貨物と旅客の内、貨物市場に特化している。貨物専用船にもいくつかの運航方法がある。
 
・フォークリフトあるいは同様の設備機器を使用して船上に貨物を運ぶ場合
 Wallenius Wilhemsen社のRO−RO船などの、水深が十分ある航路でRO−RO船を運航する場合、この方法を使用する。貨物は全てフオークリフトあるいは他の吊り上げ装置を用いて船上に荷揚げされ、積み重ねられ、場合によっては結びつけて固定することもある。この場合貨物は、積み込みに使われたフォークリフトや他の吊り上げ装置とは一緒に運送されないという点において、他の貨物専用RO-RO船と異なっている。
 通常、この方法は長距離の国際的なルートに最も適している。荷物の積み下ろしや荷揚げは他の種類のRO−RO船と比較して時間がかかるため、迅速な荷積みや荷揚げが重要となる短距離の国内ルートにおいては、不利である。
 
・コンテナ、パレット等の専門設備を使用して貨物を船で運ぶ場合
 この場合、貨物は通常コンテナに詰められるかユニット化されている。船が到着するまで、コンテナ及びパレットは、フェリーターミナルの専門の輸送用設備の上に積み重ねられる。輸送用設備はその後、ターミナルトラクターによって船上に運ばれる。この手法は、オーストラリアのバス海峡における輸送などで利用されている。
 専門設備を使用して貨物を船上に運ぶ場合、荷積み及び荷揚げ速度が向上する。トラックを船に積載する場合と比較して(下記参照)、道路トレーラー、及びトラックやドライバー(オペレーション方法による)の使用に関連した固定費を節約できるという利点がある。しかし、これには、港のターミナルで一度荷物を輸送用設備の上に積み重ね、また船に積み込むといった二重の手間や専門輸送設備にかかる費用など、新たなコストが必要となってくる。また、貨物をユニット化して港のターミナルに保管する必要があるため、トラックを積載する場合のような柔軟性がない。現在タイでは、RO−RO船で輸送を代替することが可能な貨物の多くが、バラ積みのままトラックによって運ばれており、この点は特に注意する必要がある。
 
・トレーラーやトラックに貨物を積載したまま船で運ぶ場合
この種の船を使って輸送する場合、貨物はトレーラーやトラックに積載されたまま運搬されることとなる。
 これには次の2つの方法の内のいずれか1つが使用されると思われる。
−セミトレーラー(通常18ホイーラー)トラックの場合、トレーラーはターミナルの中でトラクターから取り外され、その後ターミナルトラクターで船まで(貨物を完全に積載したまま)運搬される。この方法の場合、長い航海の間、費用のかかる道路設備を使用せずに済むという利点があり、輸送の初めから終わりの協同一貫輸送よりも、海上における輸送が長い場合に最も適している。
−トラック(リジッドトラック、あるいはトラックとトレーラーの組み合わせのいずれか)を直接船の上まで運転して積み込む。この方法は、トラック(及びドライバー)の費用の方が輸送にかかる総コストに占める割合が小さく、空のトラックと運転手の回送費用を加えた費用と比較して安くなる場合、すなわち陸上輸送距離と海上輸送距離を比較して海上輸送の距離の方が短い場合に適している。この場合、リジッドトラックを含む様々なタイプのトラックを積載できるという利点がある。
 これらの2つの方法は相互相容れないものではなく、実際にはタイのRO−RO船は今後、分離された道路トレーラーやリジッドトラック、および完全なトレーラーの複数のタイプを輸送することになるだろう。
 
 タイの国内貿易に適したRO−RO船の大きさについては様々な意見がある。前回の調査である「タイ国におけるモーダルシフトに伴う新規造船需要に関する調査報告書」(2001年6月発行)では、1,000〜3,000載貨重量トン級RO−RO船の将来的な見込みについて分析が行われた。運輸通信省の依頼を受けてGolden Plan社がまとめた「2001年度沿岸輸送システム促進に関する調査報告書」では、2,000載貨重量トン(1,800GRT)から5,000載貨重量トン(4,500GRT)級のRO−RO船を使用する可能性について考察が行われた。この調査で考察の対象となった全ての航路においては、2,000載貨重量トンの船舶は大型船よりもビジネス上有利であると評価し、一般的に、1,000GRTから1,500GRT程度の船が最も競争力があるという結論に達した。
 
 一般的に、RO−RO船の喫水に関する条件は、他の一般貨物船ほど深さを要求されない。これは、平均的に船舶の大きさが小さい為と、水深の浅い国内用あるいは短距離船舶用の港でも運航に問題がないよう特別に設計されている為である。世界中のRO−RO船の設計喫水値の分布を表17に示す。船舶の大きさと設計喫水値との関係は表18に示す。この表から、タイ国内の運航に適している2,499トン以下の船舶については、393隻中の大部分が喫水値4m以下であることがわかる。
 RO−RO船の導入の可能性がある県には、4m以下の喫水値の船が入港することができる港湾設備をもつところもある。クロントイ、レムチャバン、およびマブタプットの各国際貿易港は、それぞれバンコク、チョンブリ、およびラヨーンの港として機能している。またソンクラーには、国際貿易に使用されている大深水港がある。
 チュンポーンとスラータニーには現在、適当な港湾設備が存在しない。
 
喫水 貨物用RO-RO船(船舶数) 乗客用RO−RO船(船舶数)
不明 60 166
0〜2.99 163 539
3.00〜3.49 44 287
3.50〜3.99 50 238
4.00〜4.49 67 176
4.50〜4.99 78 174
5.00〜5.49 76 138
5.50〜5.99 79 193
6.00〜6.49 113 146
6.50〜6.99 141 100
7.00〜7.49 79 19
7.50〜7.99 36 7
8.00〜8.49 25 3
8.50〜8.99 19 1
9.00〜9.49 30 4
9.50〜9.99 30 1
10.00〜10.49 1 -
10.50〜10.99 15 1
11.00〜11.49 24 -
11.50〜11.99 4 -
出典:ISL、2000年度船舶輸送統計年鑑
 
 3.5mの水深を持つ給油港がチュンポーンのパクナムにある。この場所にRO-RO船向けの設備を建設すれば、最大およそ2,000載貨重量トン数の船の入港が可能なはずである。これより良い方法はチュンポーンにおける輸送手段として、プラチュアブキリカン県の南に位置するバンサパンにある既存の民間港湾を使用することであろう。これに関しては、前回の調査で、この港湾設備に隣接した工場で生産される鉄鋼コイルの輸送にRO−RO船を使用することを提案しており、特に注目に値する。
 スラータニーでは、主な港湾設備はタピ川に位置している。「沿岸輸送システムの開発に関する調査報告書によると、入港に際しては水深が3m〜5mしかなく、約1,500GRT以下の船舶しか入港できない。この地域において更なる港湾開発が行われなければ、入港可能なRO−RO船の大きさは前項で触れた範囲内のものに限られることになる。
 
特徴
 現在、RO−RO船専用のバースを持つタイの港は極めて少ない。従って、運航上の柔軟性を確保するため、RO−RO船はスターンランプ(stern ramp)を備えていることが重要である。また、厳しい気象条件の下でも、引船の補助なしで入港する能力を備える必要がある。
 
結論
タイでは、貨物のみを搭載したトラックをそのまま船に積載する方法が、最も適している。フィージビリティースタディはこの手法が今後使われるという仮定に基づいて行われた。
前回の調査は、タイの沿岸航路には1,000〜3,000載貨重量トン数のRO−RO船が最も適していることを示唆している。
いくつかのルート、特にスラータニー発着のルートの場合、港湾施設の制約により、入港できる船舶は小型のものに限られる可能性がある。
船舶は、スターンランプ(Stern ramp)を備え、バウスラスターやスターンスラスターのような適切なステアリング装置が取り付けられていなければならない。







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