5. ヨルダン
5−1 概要
5−1−1 一般事情
(1)面積:9.8万km2
(2)人口:504万人(2000年)
(3)首都:アンマン
(4)言語:アラビア語
(5)宗教:イスラム教93%、キリスト教7%
5−1−2 政治体制
(1)政体:立憲君主制
(2)元首:アブドラ・ビン・フセイン国王
(3)議会:二院制(上院52議席、下院104議席)
(4)政府:アリ・アブラーギブ首相
(5)内政:
・人口の7割がパレスチナ人であるため、これらのパレスチナ人を体制内に組み込み、国内の不安定要因を除去すること、並びに安定的な経済発展を達成することが内政の基本である。
(6)外交政策:
・アラブ・イスラム諸国との協調、全方位等距離外交の推進が基本。和平プロセスに前向きで、1994年10月イスラエルとの平和条約に署名し、11月に外交関係を樹立。アラブ諸国ではエジプトに次いで2番目である。
・伝統的に親欧米のアラブ穏健派である。湾岸危機に際しとった立場がイラク寄りと受け取られ、湾岸諸国や米国との関係が後退した時期もあったが、中東和平プロセスに積極的に貢献したこともあり米国との関係は修復された。
5−1−3 経済
主要経済指標(E.I.U.2002年見通し)
(1)GDP:96億2,000万米ドル(金融・保険・不動産:19.8%、輸送・テレコム:17.8%、製造:15.9%)
(2)実質GDP成長率:3.5%
(3)国民一人当たりGDP:1,730米ドル
(4)物価上昇率:3.3%
(5)失業率:未公表(非公式筋は20%とみる)
(6)国際収支:
・輸出総額(商品):25億7,000万米ドル
・輸入総額(商品):43億8,700万米ドル
・経常収支:2,670万米ドルの赤字
(7)主要貿易品目
・輸出:工業製品(10%)、カリ肥料(8.5%)、医薬品(8.0%)、機械類(7.6%)
・輸入:機械類(27.3%)、工業製品(19.4%)、食料品(15.3%)
(8)主要貿易相手国
・輸出:サウジアラビア、イラク、インド、アフブ首長国連邦、クウェート、レバノン
・輸入:イラク、米、独、伊、日、英
(9)外貨準備高:41億3,200万米ドル(金を除く)
(10)対外債務:89億5,700万米ドル
(11)債務返済比率:14.2%
(12)通貨:ヨルダン・ディナール(JD)、1JD=1.41米ドル
非産油国であり燐鉱石以外に目ぼしい外貨獲得手段のない脆弱な経済構造である。しかも湾岸危機及び対イラク経済制裁実施により同国は多大な経済的打撃を受けている。90年代後半から経済成長率は1%台に留まっており、IMFは1999−2001年の3年間で総額2.2億米ドルの新規融資の実施を決定した。また主要債権国は99年5月パリクラブにおいて債務繰り延べを決めている。同国では1996年以降大規模な構造改革を実施し、外資導入、民営化1を進めている。2000年4月にはWTOに加盟、同年10月には米国との間で自由貿易協定に署名、2001年にはAqaba(アカバ)特別経済地帯2が創設されるなど、自由貿易の促進に向けた努力が積極的に行われているが、今後輸出産業振興等による民間部門主導の外貨獲得ベースの拡大と多様化、水資源の確保(既存の水利用の効率化、新規水源の開発)及び保全、人口抑制、教育・保健等の社会サービスの向上、失業対策と貧困撲滅の実施が必要とされている。上記の政策の実施及び民営化の推進などにより、同国では年間GDP成長率6%を中期的目標に据えている。
日本との経済関係
(1)対日貿易(2000年)
対日輸出:1,330万米ドル
対日輸入:1億8,250万米ドル
(2)主要品目
対日輸出:燐鉱石、カリ肥料
対日輸入:機械機器、輸送機械
(3)日本からの直接投資
2件
5−2 海事事情
港は紅海沿岸のアカバ(Aqaba)港のみである。1978年にアカバ港湾庁と海上公社が合併して設立された港湾公社が同港の管理を行っている。港湾公社は運輸省に属する政府機関であり、港湾の管理運営・開発について責任を負っている。港湾公社の管理運営の方針決定及び監督は、運輸大臣及び港湾公社、アカバ開発庁、税関、JPMC、船舶協会、民間会社の代表者をメンバーとする理事会で行われる。
アカバ港の2000年の取引量は1,255万3,000トンで1998年に比べ0.72%減少している。このうち、陸揚量は536万トン、積載量は719万3,000トンである。固体ばら荷(肥料)は同国海上輸送全体の68%を占めており、コンテナ・RO-RO船による輸送は全体の1%にすぎない。ただし、1998年から2000年にかけて同国でのコンテナ・RO-RO船による取扱量は21.3%増加した。
5−3 日本政府によるODA実績
5−3−1 日本の援助実績(2000年度まで)
(1)日本のODA実績
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贈与 |
政府貸付 |
|
無償資金協力 |
技術協力 |
計 |
支出総額 |
支出純額 |
合計 |
1996年 |
32.26 |
14.13 |
46.39 |
77.34 |
77.34 |
123.73 |
1997年 |
38.72 |
10.53 |
49.25 |
94.55 |
90.37 |
139.63 |
1998年 |
18.79 |
10.41 |
29.21 |
25.58 |
14.75 |
43.96 |
1999年 |
49.50 |
14.26 |
63.77 |
13.12 |
−2.95 |
60.82 |
2000年 |
66.49 |
18.48 |
84.97 |
39.56 |
19.68 |
104.65 |
累計 |
239.67 |
156.85 |
396.56 |
1402.30 |
1294.90 |
1691.47 |
|
(2)2000年度までの累計
・有償資金協力:2,377億9,000万円(交換公文ベース)
・無償資金協力:311億600万円(交換公文ベース)
・技術協力:189億6,900万円(JICA実績ベース)
−研修員受け入れ:893人
−専門家派遣:317人
−調査団派遣:1,122人
−その他ボランテイア:37人
−機材供与:37億3,424万円
−プロジェクト技協:15件
−開発調査:41件
5−3−2 ヨルダン援助における重点分野
・基礎生活の向上
(a)水供給
ヨルダンは乾燥地帯に属して水供給源が少ないことから、水の効率的活用に留意しつつ、特に深刻な問題となっている生活用水及び農業振興のための潅漉用水の確保を支援する。
(b)食糧
ヨルダンは、水資源の制約から国土に占める農耕地の割合が低く、農業生産性が低いことから農産品の輸入依存度が高い。ヨルダンの安定的食糧供給を確保するため、農業機械、肥料等の供与、灌漑事業、品種改良等への支援を行う。
(c)基礎的保健・医療
都市と地方の公共医療施設の整備状況に大きな格差が存在するため、地方における医療施設の質的改善に重点を置いた支援を行う。
(d)教育
ヨルダンが現在取り組んでいる初等教育および職業訓練の充実に重点を置いた教育改革を支援する。
・産業振興
−輸出産業発展を目的とした人的協力及び資金協力
−観光及び中継貿易のためのインフラ整備
・環境保全
1 |
これまでセメント、テレコム、水等が一部民営化されており、今後ヨルダン航空、郵便、電気関係の企業が民営化される見通しである |
2 |
アカバ地区では所得税率5%、固定資産税の免税、社会保険料免除等の優遇措置がとられる |
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