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4. レバノン
4−1 概要
4−1−1 一般事情
(1)面積:1万km2
(2)人口:360万人
(3)首都:ベイルート
(4)言語:アラビア語
(5)宗教:キリスト教、イスラム教等18宗教
 
4−1−2 政治体制
(1)政体:共和制
(2)元首:エミール・ラフード大統領
(3)議会:一院制(128議席、キリスト教徒とイスラム教徒が同数)
(4)政府:ラフィーク・ハリーリ首相
(5)内政:
・レバノンには18の宗派が存在するため、宗派間の政治対立が絶えず75年以降は外国勢力の介入もあり内戦状態にあった。内戦終了後、92年に発足したハリーリ政権下で同国は急速な経済復興を遂げたが、近年は復興過程で生じた累積債務の影響で経済成長は減速している。
 
(6)外交政策:
・歴史的には親欧米であり、特にフランスとは緊密1な関係にある。
・アラブ連盟の一員であり、アラブ諸国との外交に重点をおく。
・内戦終結(90年)の過程を通じシリアのプレゼンスが拡大。治安維持のため、シリア軍が駐留しており、内政、外交、経済の各分野においてシリアの影響力が大きい。
・1978年以降イスラエルに南レバノンの一部を占領されてきたが2000年5月にイスラエル軍が撤退した。ただし、イスラエルとの和平条約は未締結である。
 
4−1−3 経済
主要経済指標(E.I.U.2002年見通し)
(1)GDP:179億米ドル(サービス68.8%)
(2)実質GDP成長率:0.9%
(3)国民一人当たりGDP:4,635米ドル
(4)物価上昇率:4.0%
(5)失業率:2.5%(00年)
(6)国際収支:
・輸出総額(商品):9億4,710万米ドル
・輸入総額(商品):59億2,690万米ドル
・経常収支:30億5,910万米ドルの赤字
(7)主要貿易品目(E.I.U、1999年)
・輸出:食料品(20.2%)、宝石(14.2%)、化学製品(12.6%)、金属製品(11.7%)、電気製品(10.8%)、繊維製品(8.1%)
・輸入:食料品(19.8%)、電気製品(14.7%)、車(9.9%)、鉱石(9.8%)、化学製品(9.3%)、宝石(7.4%)
(8)主要貿易相手国(E.I.U、2001年)
・輸出:仏(11.8%)、米国(10.2%)、サウジ(9.4%)、アフブ首長国連邦(9.1%)
・輸入:伊(10.2%)、仏(8.8%)、独(7.7%)、スイス(6.7%)
(9)外貨準備高:38億5,000万米ドル(金を除く)
(10)対外債務:161億米ドル
(11)債務返済比率:47.6%
(12)通貨:レバノン・ポンド(L£)、1ドル=1,507L£
 
 非産油国ではあるが、内戦前は金融、貿易、マスメディアなど、経済・情報に関する中東の中心地であった。しかし内戦による通貨の暴落やインフレの進行、湾岸危機等により経済状況は悪化の一途を辿った。内戦後93−95年には年間GDP成長率が6.5−8%と堅実な成長を見せたがその後は伸び悩み1999、2000年はともにマイナス成長となった。短期間で経済インフラ整備を行ったために膨張した累積債務を解消し、財政の健全化を図ることが今後の課題であり、現在ハリーリ首相は経済及び行財政の改革に向けたプログラムを進めている。
 
日本との経済関係
(1)対日貿易(1999年)
対日輸出:520万米ドル
対日輸入:1億5,700万米ドル
(2)主要品目
対日輸出:非鉄金属(アルミニウム)、くず等
対日輸入:自動車、電気機器、タイヤなど
(3)日本からの直接投資
なし
96年より、中長期の貿易保険の引き受けを再開
 
4−2 海事事情
 レバノンの主要港はベールート港である。同港を使用する船舶数は内戦終了後の経済復興期に増え続け1996年には3,200隻以上に達した。しかし、その後の経済成長の停滞に伴い同港の使用船舶数、取扱量とも減少しており、政府が施設の近代化、再編に乗り出すことにより今後の効率の改善が待たれている。2001年の数字は以下の通りである。
・取扱量:546万2,000トン(前年比+10%、ただし97年に比べると7%減)
このうち、95%近くが陸揚げである。
・取扱コンテナ数:11万3,636TEU(同+11%、ただし98年に比べると28%)
・同港を使用する船舶数:2,648隻(同+3%、ただし97年に比べ13%減)
 
 レバノンには、ベールート港のほかにTripoli、Sidon、Tyreの3港がある。
 
ベールート港の近代化
 レバノン政府は主要港であるベールート港を活性化しコンテナの取扱を改善することを目指して、98年アラブ首長国連邦のドゥバイ港湾当局(DPA)と協定に調印した。レバノンでは同国への輸出貨物の70%あまりがシリア、イラク、ヨルダン等に再輸出される。DPAはレバノン企業とコンソーシアムを設立し、港湾施設の管理、イシフラ創設を行う代わりに、向こう20年にわたり貨物の陸揚げ、積載を排他的に行う権利を付与されることでレバノン政府と合意が成立したが2001年に協定は破棄された。最近の調査では、ベールート港からアンマンへ再輸出するためには1トンあたり85米ドルのコストがかかるのに対して、イスラエルのハイファ港からアンマンへは22米ドルにすぎないことが明らかになっており、ベールート港の効率の低さが改めて問題視されている。
 
4−3 日本政府によるODA実績
 レバノンでは内戦が長年続き、内戦終結後も政治情勢が不安定なため、日本政府は従来内戦被災民に対する緊急援助や研修員受け入れといった極めて限定的な援助を実施していた。しかし、ハリーリ政権の下で本格的な復興に向けた努力が行われたことを受け、政府は1997年11月にレバノン経済協力政策協議を派遣し、日本のODA政策を説明するとともに、経済情勢、復興開発政策、今後の援助の在り方などについて意見交換を行った。
 レバノン復興プロセス開始後は96年4月のイスラエルとの戦闘による被災民に対し約100万米ドルの緊急援助を行ったほか、同年7月には復興プロセスを積極的に支援するため初の円借款(後述)を供与した。
 レバノンの一人当たりGDPは高い水準にあるため、今後は環境案件を対象とした有償資金協力、草の根無償資金協力および研修員受け入れ、開発調査などの技術協力により同国の政情、治安状況及び国内状況等を見極めつつ援助を実施する方針である。
 
4−3−1 日本の援助実績(2000年度末まで)
(1)日本のODA実績
 
(単位:百万ドル)
  贈与 政府貸付
  無償資金協力 技術協力 支出総額 支出純額 合計
1996年 0.02 0.53 0.55 0.55
1997年 0.25 0.50 0.75 0.75
1998年 0.19 0.63 0.82 0.82
1999年 0.71 0.90 1.61 1.61
2000年 1.14 1.08 2.22 2.22
累計 5.70 6.29 11.99 11.99
 
(2)2000年度までの累計
・有償資金協力:130億2,200万円(交換公文ベース)
・無償資金協力:11億9,200万円(交換公文ベース)
・技術協力:4億400万円(JICA実績ベース)
−研修員受け入れ:107人
−専門家派遣:15人
−調査団派遣:39人
−機材供与:748万円
−開発調査:2件
 
4−3−2 海事関係のODA実績
 1996年7月レバノンの復興プロセスを支援するため「海岸線汚染対策・上水道整備計画」に対し総額約130億円の初の円借款を供与した。
 

1
1920年にフランスの委託統治領となり1943年に独立







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