日本財団 図書館


刊行によせて
 当財団では、我が国の造船関係事業の振興に資するために、日本財団から競艇公益資金による助成を受けて、「造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業」を実施しております。その一環としてジェトロ船舶関係海外事務所を拠点として海外の海事関係の情報収集を実施し、収集した情報の有効活用を図るため各種調査報告書を作成しております。
 
 本書は、(社)日本中小型造船工業会及び日本貿易振興会が共同で運営しているジェトロ・パリ・センター船舶部(芳鐘 功駐在員)のご協力を得て実施した「中東地域造船需要動向調査」の調査結果をとりまとめたものです。
 関係各位に有効にご活用いただければ幸いです。
 
2003年3月
財団法人 シップ・アンド・オーシャン財団
 
はじめに
 中東諸国は、豊富な石油資源を持つことから、特に、サウジアラビア、クウェートなどの産油国については、我が国との間では、エネルギー資源供給のための石油貿易及び関連する海上輸送需要の面から関係を有してきている。しかしながら、アジア諸国と比べ、我が国とは文化的・歴史的には関係が薄いことから、この地域全般を見ると、造船の分野における交流は活発ではなく、必ずしも緊密な関係を結んできたとは言えない状況にある。
 中東地域の貿易額は、世界の3〜4%を占めているが、2000年には輸出で45%増、輸入で10%増を記録するなど、成長の可能性という点で、中国に次ぐ有望な地域であると言える。特に、地中海に面した地域(トルコ、シリア、レバノン、イスラエルなど)においては、2010年を目標に「EU・地中海貿易地帯」を設立する構想(一種の自由貿易構想)があり、貿易の更なる拡充が期待されている。
 近い将来、世界的な造船需要が落ち込むと予想される中で、これら中東諸国の貿易拡充に伴う造船需要についても掘り起こしが可能であると考えられる。特に港湾関係の公共目的の船舶については、これを得意とする我が国中小型造船業にとって魅力ある地域となる可能性を秘めている。
 一方で、地域紛争の懸念が払拭されないことから、個別企業にとっては同地域でのビジネスに手を染めることにはまだまだリスクが伴うと言わざるを得ない。
 このため、我が国中小型造船業が個別には対応し難い同諸国でのビジネスチャンス拡大を図るため、今後の造船需要の実態を把握し、将来的な造船需要の掘り起こしを行うための調査を実施する必要が生じている。また、これら中東諸国の多くは、豊富な石油資源を背景に経済開発に必要な資金を自ら賄うことが可能であるが、一部の国については、まだ諸外国からの政府開発援助(ODA)を受入れているのが実情であり、当該諸国については我が国からのODAが造船需要喚起の方向で活用されれば、我が国中小型造船業にとっても大変有意義である。
 ジェトロ・パリセンターでは、平成14年度において、地理的・歴史的に欧州諸国との関係が深く、貿易の拡充が期待できる東地中海沿岸の中東諸国(トルコ、シリア、レバノン)を対象として、造船需要動向の実地調査を行うこととし、上記3カ国にヨルダンを加えた文献調査を行うとともに、オマーン国において実地調査を行った。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION