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2-1 総合石油会社
 
 総合石油会社は、新たな油田を開発し、自社で原油を生産し、精製所を所有、運営し、石油精製品を販売する、上流事業(upstream)から下流事業(downstream)まで一貫して行うものである。米国における大手総合石油会社10社を次に挙げる。この他にも、米国市場で事業を行っている総合石油会社が数社(BP、Shell、TotalFinaElf)が存在するが、米国企業ではないためここでは除外した。
 
エクソン・モービル社(ExxonMobil)
 同社は原油及び天然ガスの探鉱・生産、石油製品の精製・輸送、原油・天然ガスのマーケティングを行っている。エクソン・モービル社は、世界40カ国で民営エネルギー企業としては最大の資源ベースを保有しており、保有する石油、及びガス確認埋蔵量は石油換算で720億バレル(97億2,000万トン)にのぼる。現在の液体生産量は日量平均250万バレル(337,500トン)である。同社は大水深オフショア石油・ガス探鉱、生産に積極的にであり、大水深で発見された51件の大規模な油・ガス田に関与している。エクソン・モービル社は総面積7,100万エーカー(約287,300km2)に及ぶ750の大水深鉱区の権利を保有しており、世界で最も油・ガス探鉱・生産活動が活発な4つの大水深区域――西アフリカ、カスピ海、メキシコ湾、南米の主要なリース保有者である。同社は26カ国に精製施設を有し、100カ国以上に43,000軒を超える小売店舗を展開している。また、同社の潤滑油の市場は200カ国に及ぶ。エクソン・モービル社はまた石油化学製品、特殊製品の製造、販売も行っており、石炭、銅、その他の鉱物の採鉱も手掛けている。同社は、香港の発電所3基(6,283MW)をはじめとして、発電施設の所有権も保有している。同社の現在のマーケット・キャップ(株価×株式数)は2,532億ドルである。今後8年間に、上流事業(採鉱・開発)へ1,000億ドルの資本支出を予定している。このうち、25%は大水深プロジェクトに対するものである。同社はテキサス州アービングに本社を置いている。
 
シェブロン・テキサコ社(ChevronTexaco)
 シェブロン・テキサコ社は、探鉱・生産、精製、販売・輸送、化学製品製造・マーケティング、そして発電という石油・ガス産業の全部門で事業を展開している。同社は2001年10月にシェブロン社とテキサコ社の合併により誕生した。世界180カ国以上で事業を展開する同社は、118億バレル(15億9,300万石油換算トン)相当の埋蔵量を保有し、日量270万バレル(364,500石油換算トン)相当の石油、ガスを生産している。加えて、同社の精製能力は日量230万バレル(310,500石油換算トン)であり、世界中で21,000を超える給油所を運営している。同社はまた現在稼動中または開発中の47件の発電プロジェクトの利権を保持している。シェブロン・テキサコ社は、精製残留物やその他の低価値素材をクリーンな合成ガスに変える気化技術のリーダーである。加えて、同社は燃料電池、光発電、未来型電池、水素吸蔵といった先進エネルギー技術の開発及び商用化を行っている。2002年の資本支出総額は94億ドルが見込まれており、そのうち61億ドルは全世界における探鉱、生産にあてられる。シェブロン・テキサコのマーケット・キャップ(株価×株式数)は801億ドルである。同社は本社をサンフランシスコに置いている。
 
コノコ・フィリップス社(ConocoPhillips)
 2002年8月末にフィリップス石油とコノコの合併が成立し、コノコ・フィリップス社は米国第3位の総合エネルギー会社となった。同社は世界49カ国で事業を展開している。同社はハイドロカーボン(炭化水素)埋蔵量と生産量の点で株式公開会社としては世界第6位であり、世界第5位の精製事業者である。合併前のコノコは上流事業(石油・ガス探鉱、開発)に強く、フィリップスは、下流事業(精製、小売販売)を得意としており、コノコ・フィリップス社はその両方を兼ね備えることとなった。上流事業は、地域的にはアラスカ・ノース・スロープ、北海、ナイジェリア、中国オフショア、チモール海、カザフスタン、そしてベネズエラの重質油開発に焦点を当てている。探鉱事業は、主にメキシコ湾大水深海域、カナダ、北西ヨーロッパ、南米北部、ユーラシア、西アフリカ、東南アジアに重点を置いている。コノコ・フィリップス社は米国内に19ヵ所の精製所を運営しており、ガソリン及び石油製品は複数のブランドで全米46州、12,000件の給油所で販売されている。同社はまた、約16,000マイル(186,700km)5のパイプライン・システムを所有、または一部所有している。同社が保有する純確認埋蔵量は石油換算87億バレル(11億7,450万トン)、石油及びガスの生産日量は170万石油換算バレル(229,500トン)、精製能力は日量260万バレル(351,000トン)である。同社は、米国最大級の天然ガス採取、NGL(天然ガス液)6の生産、マーケッティングで米国最大級のデューク・エネジー・フィールド・サービス社の30.3%を所有している。コノコ・フィリップス社は天然ガスの液化技術の開発に積極的に取り組んでいる。同社のマーケット・キャップは352億ドル、2002年の資本支出額は60〜65億ドルにのぼると見られている。ヒューストンの元コノコ本社がコノコ・フィリップス社の本社となっている。
 
マラソン社(Marathon)
 マラソン石油会社は、全世界で原油及び天然ガスの探鉱・生産、そして米国内では原油及び石油製品の精製、マーケティング、輸送を行っている。同社は現在11カ国で探鉱、開発、生産事業を実施している。マラソン社は数々の原油パイプライン・システムの利権を保有しており、これにはメキシコ湾地域で大々的な陸上、海底パイプラインを運営しているマラソン・アッシュランド・パイプラインが含まれる。マラソン社はまた、メキシコ湾の原油パイプライン・システムであるオデッセイ・パイプラインの29%、ポセイドン・オイル・パイプラインの28%を、また、メキシコ湾の天然ガス・パイプライン・システムであるノーチラス・パイプラインの24%、マンタ・レイ海底採取パイプラインの24%も保有している。さらに、同社はメキシコ湾から中西部へ延びるエクスプロアラー・パイプライン会社の17%、同湾から東海岸へ延びるコロニアル・パイプライン会社の2.5%を所有しでいる。これらはいずれも軽石油製品パイプライン・システムである。同社は、アラスカの天然ガス液化施設の30%の所有権を保有しており、87,500km3タンカー2隻を使用して、液化天然ガスを日本に輸送している。子会社であるマラソン電力会社は、世界の電力市場における統合ガス・電力プロジェクトの開発、建設、所有、運営を行っている。マラソン社のマーケット・キャップは現在75億ドルである。2002年の資本支出は17億ドルとされているが、これには探査用支出の一部が含まれていない。同社はテキサス州ヒューストンに本社を置く。
 
アメラダ・ヘス社(Amerada Hess)
 同社は、米国、英国、ノルウェー、デンマーク、ガボン、インドネシア、タイ、アゼルバイジャン、アルジェリア、コロンビア、赤道ギニア、マレーシア、その他の国で原油及び天然ガスの探鉱、生産、購入、輸送、マーケティング事業を行っている。2001年年央に、同社はトリトン・エネジー社を買収した。その結果、赤道ギニア、コロンビア、及びマレーシアとタイの合同開発区域におけるトリトン社の資産及び保有埋蔵量を手に入れた。2001年末時点で、同社の保有する原油及び天然ガス液の確認埋蔵量は9億5,500万バレル(約1億2,900万石油換算トン)、天然ガス確認埋蔵量は29億cf(8,212万m3)であった。アメラダ・ヘス社は2001年に全世界で原油、天然ガス液を日量298,000バレル(40,230石油換算トン)生産し、天然ガスを日量8億L200万cf(2,299万m3)生産した。2001年に、同社の原油及び天然ガス液生産の26%、天然ガス生産の52%が米国事業からのものであった。アメラダ・ヘス社はメキシコ湾の探鉱ブロック177鉱区で権利を保有し、そのうち123鉱区で事業を行っている。同社は、米領バージン諸島の精製所合弁事業の50%を保有しており、同施設から米国に石油製品を販売している。同社はまた、ニュージャージー州のポート・リーディングの流動接触分解施設を所有、運営している。同施設では減圧軽油、残さ重油が生産されている。同施設の生産レートは現在日量約55,000バレル(7,425石油換算トン)であり、ほとんどのガソリンと暖房用油を生産している。2002年の9月半ばまで、同社は国内輸送向けにプロダクト・タンカー(ITB)6隻を保有していた。3隻は、株式非公開の投資グループに売却された。アメラダ・ヘス社の現在のマーケット・キャップは62億ドルである。2002年の資本支出は約15億ドルと見られている。同社は本社をニューヨークに置いている。
 

5
1マイル=1.609kmで換算
6
地中では、気体の天然ガスとして存在しているが、地上に産出されると自然に液状になる性質を持っている。天然ガソリンともいう。天然ガス液は硫黄分や窒素分が少ない。







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