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【4】ベトナム造船所の今後の方向性
(1)建造計画
 ヴィナシンは2002年に国内最大級船舶の建造を計画している。2002年の主な建造計画を以下に列挙する。
・ペトロベトナム向け100,000DWT型原油タンカー
・Vinalines向け4,000DWT型貨物船2隻
・Marine Transport & Service company向け6,300DWT型貨物船2隻
・Vinalines及びDanang Sea Transport社向け6,500〜7,000DWT型貨物船5隻
 
 これら順調な受注をもとに2002年度の売上は2001年度から51%増の1億9,200万USドルを見込んでいる。同様に同社に勤務するワーカーの平均給与も2001年度の月間97万ドン(64.60USドル)から110万ドン(73.30USドル)に上昇すると見込んでいる。
 
(2)投資計画
 ヴィナシンは2000−2005年までは、主として国内市場の船腹需要に対応する。ヴイナシン傘下の特定の造船所において、国際基準に対応し得るように生産技術と経営システムを段階的に改善する(CAD/CAMシステム、ISO9001,9002)。新造船・修繕船産業のニーズに応えて、他の地場産業や外国資本と協力、共同生産を行う下請事業者を組織化する(小中型ディーゼル機関などの舶用機器、甲板機器、配電盤、航海機器などの一部を組み立て、製造)。
 この開発期間中に、ベトナム造船業の知名度を高めるために、国際マーケティング活動、船舶輸出受注活動を展開する。2005年までに、これらの造船所は輸出船建造を主体としたい。ヴィナシンは傘下各造船所の輸出受注を確保するために、持株会社と大手商社の役割を果たすことになる。
 そのための重点的な投資計画として、以下のプロジェクトに重点的に努力を注いでいる。
(1) Ha Long Shipyardの近代化。目標は近い将来に1,200TEU型多目的コンテナ船の建造能力を具えること。
(2) Bach dang Shipyardの近代化。目標は近い将来に15,000DWT型の貨物船建造能力を具えること。
(3) Ben Thuy ShipyardとNha Trang ShipyardでGRP製の漁船とプレジャー・ボートを建造するための設備投資。
(4) ハノイの船舶設計研究所の既存曳航水槽のグレードアップ工事。
 
(3)国際提携
 現在ヴィナシンは海外各国の50社と提携関係を結んでいる。提携と販売を促進するために、ヴィナシンはポーランド、ドイツなどに代表事務所を開設した。海外事務所は国内造船所に出資する見込みのある投資家、発注が期待できる船主と良好な関係を確立している。
 ヴィナシンは現代重工との合弁会社を始めとする外国企業との合弁事業からの以下表14のごとく2005年までの売上を見込んでいる。
 
表14 合弁事業によるヴィナシンの売上計画
(単位:100万USドル)
  2001年 2002年 2003年 2004年 2005年
現代ヴィナシン 60 80 105 135 200
その他合弁事業 10 15 20 25 45
合計 70 95 125 160 245
(出所) 第25回アジア太平洋造船専門家会議資料より。
 
ヴィナシンの合弁企業
(1) Hyundai-VINASHIN NShipard Company Ltd.
 2001年、この合弁企業のパートナー両社は、1億5,000万USドルへの増資について合意した。現代ヴィナシン社は新造船設備に投資する予定で、これにより2004年までに最初の新造工事に着手できることになる。
 
(2) The Vietnam Korea Demolition Old Ship and Rolling Steel Joint Venture Company (VISKOLtd. Co.)(ハイフォン)(韓国のSaeyang Globus Inc. Co. とヴィナシンとの合弁企業)
 この合弁企業は1994年に免許を受けた。資本金は200万USドル、うち60%を韓国側が出資している。同社の事業内容は以下の通り。

内外の老朽船の解撤。
通常船舶とバージの修繕、改造、新造。
スクラップ鋼材の切削と圧延。
中古船、造船産業で使用された中古機器の輸出入。
スクラップ鋼材、切削・圧延鋼材、バージの輸出入。
 
(3) Baican Shipping Company(8ASCO)(ハイフォン)(ロシアのACFFSとヴィナシンとの合弁事業)
 資本金500万USドル、うち60%をロシア側が出資。BASCOは修繕船と貨客輸送の免許を受けている。
 
(4) Shell Gas-Hai phong joint venture Company(Shell Overseas Investment V.V.とヴィナシンとの合弁事業)
 資本金1,130万USドル。Shell側が70%を出資。液化ガスと市場向けのガス供給に特化。
 
【5】政府の支援
 ベトナム政府は下記の措置により造船産業を支援している。
造船所の拡充事業に低利長期の融資を行う。
拡充事業に外国から融資を受ける造船所に適切な保証を与える。
ベトナム国内で建造可能な船型、船主について割当/輸入許可制度を適用する。
政府事業の入札書類に「陳情マーク」の貼付制度を適用する。
一部の造船関連開発事業を、国内で外資導入の優先プロジェクトに含める。特に舶用機器組立/製造事業を対象とする。
 また2000年10月に、政府は国内の造船業を育成し、外洋を航海できる1万トン級の大型船の建造を可能にするため、大幅な優遇政策を決めた。2000年10月に首相が発表したこの優遇政策で、船舶に必要な資材や備品の輸入が簡単になり、輸入税も免除され、輸入に必要な外貨は優先的に手当てできる。また国営の造船会社は今後4年間、法人税も土地使用税も全て免除されることとなる。







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