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船外機のしくみI
船外機が燃料を取り込んでからエネルギーを発生させるまでの流れ
 
 
1. エンジンの始動
 エンジンは、電気と空気と燃料があれば自力で回転を続け、必要なエネルギーを発生させることが出来ます。
 しかし、最初だけはどうしても外部のエネルギーで電気を発生させ、燃料と空気を吸い込ませてこれに点火して爆発させる必要があります。
 そこで、まず(1)のスターターロープ(中・大型の船外機には電動式の装置が装備されています)を引いて(2)のフライホイールを回してあげます。
 これによって(3)のピストンが勢いよく動き、(4)のキャブレターから燃料と空気の混合気を(5)のシリンダー内に吸い込むと同時に、フライホイール内の発電機で発生した電気で(6)のスパークプラグが火花を起こしてこの燃料に点火し爆発させます。この1回目の爆発が成功すると、その勢いでピストンが動かされ、あとはエンジンが自力で回転を続け、吸気、圧縮、爆発、排気の運動を繰り返します。
 
2. ピストンからプロペラヘのエネルギーの流れ
 ピストンは燃焼室内での爆発の力で往復運動を繰り返しますが、そのエネルギーは(7)のコネクティングロッドを通して(8)のクランクで回転運動に変り、クランク→クランクシャフト→ドライブシャフト(9)→プロペラシャフト(10)の順に伝達されプロペラを回します。
 
船外機のしくみII
エンジンの種類
 
 下の表からも読み取れるように、現在わが国で量産されている船外機は2サイクルエンジンが大半を占めています。
 2サイクルエンジンが多い理由は、船外機のニーズとして軽くて高出力のエンジンが求められていることがあげられます。また、4サイクルエンジンに比べ構造が簡単で、同一のシリンダー容積ではより高い出力が得られるため、船外機が生まれてから現在まで、常に船外機の中心として生産、使用されてきました。
 しかし、近年2サイクルエンジンの構造上、潤滑油が排気ガスとともに水中に排出されるなど、環境汚染の問題から、環境にやさしいエンジンとして4サイクルエンジンが見直されてきています。
 
2001年船外機 機種別 国産(国内向け+輸出向け)出荷台数
 
(拡大画面:20KB)
 
船外機のしくみIII
2サイクル機関と4サイクル機関
 
 船外機を含む内燃機関では、次の4つの行程が繰り返し行われています。
 この一区切りをサイクルといい、2サイクル機関と4サイクル機関の2種類があります。*2ストローク、4ストロークともいいます。
 
1. 吸気行程:新しい混合ガス(燃料と空気を霧状に混ぜたもの)を燃焼室に吸い込む。
2. 圧縮行程:燃焼室で混合ガスを圧縮する。
3. 膨張行程:点火され爆発する。
4. 排気行程:爆発後の不要となったガスを排出する。
 
2サイクル機関
 2サイクル機関は、1881年にイギリスのデュガルド・クラークによて発明されました。
 その特徴は、4つの行程をクランク軸の1回転で行うことです。
 吸気や排気用のバルブが無く、ピストンがその役割を果たしています。4サイクル機関に比べ、軽くてコンパクトで高出力が出せることやメンテナンスがしやすいことから船外機の主流として使われています。
 
2サイクルエンジンの動き
 
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(1)エンジンの外部にあるキャブレターや燃料噴射装置で作られた混合ガスは、ピストンの上昇で圧力が下がったクランクケースに吸引されます。同時にシリンダー内では圧縮行程が行われます。
(2)シリンダー内で圧縮された混合ガスは点火プラグで火が着けられ、燃焼、膨張してピストンを押し下げます。この時、クランクケース内では圧縮が始まります。
(3)ピストンが下がり、排気ポートが開くと燃焼済みの排気ガスは目らの圧力で排気マニフォールドから出ていこうとします。
(4)さらにピストンが下がって掃気ポートが開くと、クランクケース内で圧縮された混合ガスが掃気ポートを通ってシリンダーに噴出し、残った排ガスを追い出します。
 
船外機のしくみIV
 
4サイクル機関
 ガスによって作動する4サイクル機関は1876年、ニコラス・オットーによって発明されました。
 その後、1883年にドイツのゴトリーフ・ダイムラーによってガソリンを燃料とした4サイクル機関(下図)が誕生し、1886年に自動自転車でその運航を成功させると、翌1887年には4輪自動車とモーターボートに積んで成功しています。
 
 4サイクル機関は、吸気バルブと排気バルブを持ち、4つの行程を完了するのにクランク軸が2回転(ピストンが4回のストロークを行うことから4ストローク機関ともいいます)します。2サイクル機関に比べ、排気音が静かで、潤滑油が排気とともに排出されることが無いことから環境に優しいエンジンとして注目を浴びています。
 
 
4サイクルエンジンの動き
 
(拡大画面:15KB)
 
(1)シリンダヘッドにある吸気バルブが開き、ピストンが下がることで、エンジン外部のキャブレターや燃料噴射装置で作られた混合ガスを吸気します。
(2)ピストンが下死点(ピストンが最も下がり切った位置)まで達すると、バルブは閉じられ、ピストンの上昇によって混合ガスが圧縮されます。
(3)ピストンが上死点(ピストンが最も上がり切った位置)に達し、混合ガスを圧縮し切ったところで、点火プラグによって着火。燃焼、膨張が始まります。
(4)再びピストンが下死点に達し、上昇を始めると、排気バルブが開き、燃焼済みの排気ガス排気マニフォールドから排出されます。







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