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3.5 燃料供給装置
 ガソリン船外機の燃料装置にはキャブレータを用いる一般的なものと噴射装置を用いるものとがある。また、インテークマニホールドに噴射するものと直接筒内に噴射するものとがある。
 
1)キャブレータ及びフューエルポンプ
 キャブレータを用いる燃料供給装置は、ガソリンと空気を混合させてシリンダ内(燃焼室)に混合気を供給するもので、2・317図に示すようにキャブレータ、フューエルポンプ、フューエルフィルタ及びフューエルタンク等で構成されている。フューエルタンクには小型の船外機付き、大形の船体付き及びポータブル式フューエルタンクがある。ポータブル式フューエルタンクは船内に置かれ、船外機本体とフューエルジョイントで連結される。
 フューエルタンク内の燃料はフューエルポンプによって汲み上げられ、燃料中の異物や水分はフィルタによって除去され、キャブレータに送られる。燃料はキャブレータによって霧化され、空気と混ざり合って混合気となり、2サイクルエンジンはインテークマニホールドとリードバルブを経てクランクケース内へ、また4サイクルエンジンはインテークマニホールドとインテークバルブを経てシリンダ内へ吸入される。
 
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2・317図 燃料供給装置
 
(1)キャブレータ
 キャブレータは燃料(ガソリン)を爆発し易いように、適当な割合の空気と混ぜ合わせ霧状の混合気にして燃焼室へ供給する装置である。キャブレータは一般に流動抵抗が小さく効率の良いサイドドラフト方式(横向き通風)の固定ベンチュリ型で、各シリンダ毎に1個設けている。キャブレータを系統別に見ると、フロート系統、スロー系統、メーン系統、パワー系統、加速系統及び始動系統に大別される。これらについては第2章2.6項6)で記述しているのでここでは省略する。また、寒冷地向けに、アイシング防止のためにキャブレータヒータをオプション設定している機種もある。
 キャブレータヒータの構成部品は各キャブレータに取り付ける電気式ヒータと1個のサーミスタ及びコントロールユニット、ワイヤハーネスなどである。ヒータは標準装備のオルタネータからの出力電流で制御される。
(2)プライマリポンプ
 エンジン始動時、2・318図に示すプライマリポンプ本体(ゴム製)を手動操作してフューエルタンク内の燃料をキャブレータヘ送り込み、フロートチャンバ内の燃料レベルを上昇させることによって始動性を向上させる。プライマリポンプの燃料入口と出口にはチェックバルブ(逆止弁)が組み付けられ、燃料の流れる方向を規制している。フューエルタンク側と船外機側のジョイントの形状は同じなので、逆方向に連結すると燃料は流れない。
 
2・318図 プライマリポンプ
 
(3)フューエルポンプ
 フューエルポンプはタンク内のガソリンをフィルタを介してキャブレータに圧送するもので、ダイヤフラム式フューエルポンプを採用している。ダイヤフラムの駆動方法が2サイクルエンジンと4サイクルエンジンで異なる。
 2サイクルエンジンのフューエルポンプは2・319図に示すように2枚(インナとアウタ)のダイヤフラム(ゴム製の膜)、2個(吸入と吐出)のチェックバルブ(ステンレス鋼板製の逆止弁)とインナダイヤフラムの戻しスプリングを内蔵し、クランクケース内の圧力変化でインナダイヤフラムを駆動している。
 
2・319図 フューエルポンプ
 
フューエルポンプの作動
1. 吸入作用
 クランクケース内の負圧が作用してダイヤフラム(インナ)が右に吸い寄せられると、左室内は負圧となりチェックバルブが開いて燃料が左室内に吸入される。ダイヤフラム(アウタ)の左側は大気に開放されているので、右側の負圧によってわずかに変形する。この変形は吐出量を増加させる効果を持つ。
2. 吐出作用
 クランクケース内が正圧に転じると、この圧力によって戻しスプリングが押し縮められダイヤフラム(インナ)を左へ押し付ける。これによってダイヤフラム(インナ)の左室内は加圧され、吸入側チェックバルブが閉じ、吐出側チェックバルブが開いて燃料がキャブレータに送られる。
 4サイクルエンジンのフューエルポンプは2・320図に示すようにロッカアーム、ダイヤフラム、ダイヤフラムロッド、インレット及びアウトレットチェックバルブ、リリーフバルブなどで構成され、カムシャフトのカムでロッカアームを介し機械的にダイヤフラムを駆動している。
 
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2・320図 フューエルポンプ
 
フューエルポンプの作動(2サイクルエンジンと同様)
1. 吸入作用
 カムの作用でロッカアームが駆動されるとダイヤフラムはロッドにより下降点まで下がるためダイヤフラム室に負圧が発生しインレットチェックバルブが開き燃料が吸い込まれる。
2. 吐出作用
 カムがリフト部以外になると、ダイヤフラムはスプリング力により押し上げられ、その圧力でアウトレットバルブが開き、燃料はキャブレータに送られる。この時、フロートチャンバ内が規定量になっていると、ニードルバルブが閉じているため、ポンプ内のリリーフバルブが開き吸入側に戻される。
(4)フューエルフィルタ
 フューエルフィルタは燃料に含まれている異物やゴミなどを取り除くもので2・321図に示すカートリッジ式か2・322図に示すエレメント式が使われている。カートリッジ式は定期的に交換すること、またエレメント式はフィルタカップを取り外し、異物や水分を捨ててエレメントを洗浄することが必要である。
 
2・321図 力一トリッジ式
 
2・322図 エレメント式







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