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3.3 エンジンの燃焼
1)燃焼に必要な空気量
 1gの燃料を燃焼させるためには理論上15gの空気が必要とされている。しかし燃焼は短時間で行われるので、実際の空気量は、理論的に必要な空気量より多く供給しなければ、完全燃焼させることは出来ない。実際に供給している空気量と、理論上必要とする空気量との割合を空気過剰率と云い、全負荷時の空気過剰率は1.5〜2.0であるが、過剰空気量が多いと、それだけ排気損失が大きくなるので、完全燃焼が行われる範囲内でなるべく少ない方がよい。
 
2)熱効率
 熱効率とは、供給した燃料の発熱量と、実際に有効な仕事に変えられた熱量の割合をパーセント(%)で表したもので、1・10表に示す如くディーゼルエンジンは熱機関の内では、一番熱効率が優れている。
 
1・10表 熱機関の熱効率
原動機の種類 ディーゼル機関 ガソリン機関 ガス機関 ガスダービン 蒸気機関 蒸気タービン
熱効率(%) 35〜45 20〜26 20〜35 15〜18 10〜16 18〜24
 
1・10図 熱勘定の比較
 
 供給された燃料の発熱量は、有効な仕事、即ち軸出力として取り出されるもの以外は、大部分が排気損失と、冷却水損失として失われている。これらに費やされた熱量の割合を算出したものを熱勘定という。ディーゼルエンジン及びガソリンエンジンの熱勘定を1・10図に示す。
 
3)ガソリンエンジンの燃焼過程と圧力変化
 ガソリンエンジンでは、スパークプラグにより点火されると、その付近の混合気から燃焼が始まり、次第に火炎が伝播して最高圧力に達する。その時間は極めて短時間であるが、その間にクランク軸は相当の角度を回転する。燃焼によるシリンダ内の圧力変化とクランク軸の回転角度を示すと1・11図のようになる。A点でスパークプラグによって点火すると、その部分の温度が上昇し緩慢な燃焼が始まり急速に燃焼するB点まで、しばらく時間を要する。このA点からB点までの遅れを「点火遅れ」という。ついで、B点から急速に燃焼して最高圧力C点に達し、D点で燃焼が終わる。
 
1・11図 ガソリンエンジンの燃焼
 
4)ディーゼルエンジンの燃焼過程と圧力変化
 燃料噴射弁から燃焼室内に噴射された燃料の粒子は、高温高圧の空気によって加熱されて温度が上がり、気化が始まって着火燃焼する。その時間は極めて短時間であるが、その間にクランク軸は相当の角度を回転する。燃焼によるシリンダ内の圧力変化とクランク軸の回転角度を示すと1・12図のようになる。A点で燃料の噴射が始まるが、すぐには着火されず、燃料が気化されて着火温度に達し着火するB点まで、しばらく時間を要する。このA点からB点迄の期間を「着火遅れの期間」と云う。B点で着火すると、今までに噴射された燃料が急速に燃焼して最高圧力のC点に達する。燃料の噴射はD点で終わるが、それまでに完全に燃焼しきれなかった燃料は、その後の膨張期間中(D点〜E点迄を後燃え期間と云う)に燃焼しE点で燃焼が終わる。
 
1・12図 ディーゼルエンジンの燃焼
 
5)ノッキング
 ガソリンエンジンでは運転中にキンキンというハンマでシリンダをたたくような打音を発することがあり、この現象をノッキングという。原因は混合気の火炎伝藩における自己着火に起因する。一般にこの自己着火は燃焼後期にシリンダ壁付近の混合気が自己着火して急激に燃焼し圧力上昇が起こる。この圧力が室内を圧力波として伝わることにより圧力振動を生じ、前述した金属音を発生する。
 ディーゼルエンジンは、前項で記した如く燃焼室内に噴射された燃料が即着火するのではなく着火するまでに時間的な遅れが生じる。着火遅れ時間が長くなりすぎた場合、この着火遅れ期間中に噴射された燃料が着火と同時に一度に燃焼するため、燃焼圧力が異常に高くなり、衝撃波が発生して機械部分を激しく振動させる甲高い打撃音が発生する。この音をディーゼルノックという。







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