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(3)油圧式ガバナ
 舶用主機関に用いられている油圧ガバナはウッドワード社のSG形、ゼクセル社のRHD形が殆どである。基本的な構造は両社製ともほぼ同じである。これらのガバナはエンジンに垂直又は水平に取り付けられ、駆動軸はスプライン又は歯車によりカム軸などで駆動され、出力軸はガバナの片側からでも両側からでも取り出せ、停止は速度調整軸をアイドルスピード位置より更に回すことにより行う構造となっている。2・155図にウッドワード社のSG形ガバナの構造を示す。
 
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2・155図 ウッドワード社製SGガバナの構造図
 
 システム油は給油口からガバナに入り、ギヤポンプにより吐出され圧力が高まると、リリーフ弁が開き油を循環させると共にリリーフ弁バネ力が強くなり、給油口から流入を制御する。作動油圧が低下すると、リリーフ弁が戻り循環油を制限すると共に給油口より油を流入する。余分な油はドレン穴から機関内部へ排出される。
 機関が一定の回転速度で運転中はコントロールランドが、ボールヘッドのパワーピストンヘ通じる孔を閉鎖し、ウエイトの遠心力と調速スプリングのバネ力が釣り合っている。
 負荷が増加すると回転速度が下がり、ウエイトの遠心力が弱まりバランスが崩れ、バネ力でコントロールランドを押し下げボールヘッドの孔から作動油が流れパワーピストンを押し上げ出力レバーを押して出力軸を燃料増の方向に回し、噴射量を増して回転速度が上昇する。出力レバーが押し上げられると速度ドループレバーピンは上方へ押し上がり、フローティングレバーを持ち上げて調速スプリングを引き上げるためバネ力は弱まりウエイトの遠心力が強まり、コントロールランドを引き上げて孔を閉鎖し、パワーピストン部への作動油流入を止め、パワーピストンの動きを止める。このようにパイロットプランジャを元の位置へ戻す特性を速度ドループと云う。
 負荷が軽くなると機関の回転速度は上昇し、ウエイトの遠心力は大きくなり、コントロールランドを引き上げ、パワーピストン下部に働く油は逃げ圧力が低下する。戻しスプリングのバネ力により出力軸と出力レバーは燃料減方向へ回され、速度ドループレバーピン位置も下がり、フローティングレバーが下降し、調速スプリングのバネ力が増し、ウエイトの遠心力と釣り合いコントロールランドを押し下げ、ボールヘッドを閉鎖する。出力軸の回転角に対する速度の変化量は速度ドループレバーピンの位置によって定まり、ウエイト方向に動かせば小さくなりパワーピストン方向へ動かせば変化は大きくなる。
(ガバナの点検整備について)
 ガバナの故障は殆どが不同回転(ハンチング)として現れ、回転速度が整定できなくなる。その他の現象としてはスロー回転の整定不良、出力不足、オーバラン(過回転)などがある。
 ガバナスプリングの損傷やへたり、ガバナウエイトのピン、ブッシュ、ローラ摺動筒などの摩耗や、ベアリングの損耗等につき点検する。特に重量の大きなウエイトを使用している場合又は一定回転数で長く使用するものはその付近での局部的な摩耗が起こりやすいので特に注意して点検する。
 又ガバナ自身の不具合以外にリンク機構の遊び、こじれなどがあるとハンチングやオーバランの原因となるので、連結桿ピン部の摩耗、ガタなどの他、連結軸の曲がり、こじれ等につき調査し、不具合部品は交換又は修正し、円滑に作動するように調整する。
 
5)自動進角装置(オートマチックタイマ)
 燃料が噴射されてから着火するまでには多少の時間がかかり、この時間を着火遅れの期間と云っている。着火遅れの期間(時間)は機関の回転速度が変わっても余り変化しないため、高速回転になればなる程、着火遅れの期間にクランク軸は大巾に回転してしまうので、最適噴射時期を得られなくなる。そのために着火遅れの期間を予め予測しておき高速回転に合わせ、噴射時期を進ませてやらねばならない。しかし噴射時期を高速に合わせてしまうと中低速回転時には逆に噴射時期が早すぎてしまい最適噴射時期が得られない。
 この問題を解決するために、高速回転になったとき噴射時期が自動的に進み常に最適噴射時期が得られるようにするために取り付けられているのが自動進角装置である。
(構造及び作動)
 2・156図に示すような部品で構成されている。ウエイトの一端に穴があり、この穴をハブのボルトに嵌め、ハブは燃料ポンプのカム軸に固定されている。ドライビングフランジのジャーナルがウエイトの曲面に接しており、ジャーナルとボルトの間にスプリングが取り付けられている。ドライビングフランジはカム軸により駆動され、ジャーナルはウエイトの曲面を押してハブに動力を伝える。
 2・157図(A)は低速時を示したもので、ウエイトには大きな遠心力が働いていないのでスプリングの長さは最も長い状態となっている。(B)図は高速時を示しており、ウエイトは遠心力によってハブのボルトを支点にして外側へ拡がっている。ウエイトの曲面はジャーナルを支点にしてスプリングを圧縮し、ハブボルトを引き寄せ、ハブはその分だけ燃料ポンプのカム軸回転を進ませるので噴射時期を早くすることが出来る。
 2・158図はタイマの進角特性の一例であり、カム軸が300min−1(rpm)の時を基準にして、1350min−1(rpm)では、6°進角することを示している。
(点検整備について)
 年一度は必ずオイルを全量抜きだし、金属粉が検出されれば分解して摩耗部品を交換整備する。
 
2・156図 タイマの構成部品
 
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2・157図 タイマの構造と作動
 
2・158図 タイマの回転数と進角の関係例







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