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第5章 据え付けと運転
1. 据え付け
1.1 据え付け調整
1)据え付け工事(主機)
(1)船体の変形と芯出し
 船体は進水後に変形を生じ更に浮力による撓みにより5・1図のようにトモ、オモテが下る。一般にこの撓みをトモ、オモテのだれとよんでいる。従って軸中心線(スタンチューブの芯)が最初直線状であったとすると船体の変形により円弧状に曲がり、軸管中心線からみると機関のクランク軸芯が下ったようになる。従って機関据付時、軸芯の中心線より上り目にしておかなければならない。この上り目の芯を一般的に上芯(あげしん)という。
 
5・1図
 
(2)浮芯(ウキシン)と陸芯(オカシン)
(1)一般に進水後の芯出しを浮芯、進水前の芯出しを陸芯という。
 普通、芯出しは浮芯を原則とするが実際には造船所の工程の都合や吊り設備の関係で陸芯を採用する場合もある。どうしても陸芯で芯出しをしなければならない時は造船所自身の経験に基づいてどの位の上芯とするかと言うことについてその造船所とよく協議することが大切である。
(2)一般的には浮芯による芯出しは進水してから48時間後に行う。
(3)進水後48時間以内に行う浮芯による芯出し、および陸芯による芯出しの場合は進水後に発生する船体変形を考慮にいれて芯出しをする。
(4)夏の暑い日光が直射する場合には船体が変形するので注意しなければならない。(5・2図
 
5・2図
 
(5)陸芯の場合、盤木の影響のない状態(盤木を一旦ゆるめた状態)で軸芯の変化を確認し必要であれば上芯の程度を加減する。
(6)盤木をゆるめることが許されない場合は前項(5)にくらべて上芯を多くする必要がある。
(7)太平洋側の造船所の場合、干満の差が大きいので船底が下に当たっていると芯だしをして具合の悪いことがあるので注意しなければならない。(干潮の時に底が当たっていると問題になる)
(3)据え付け作業
(1)着工前の点検
(a)盤木の状態の確認
 最初から盤木の上で建造したものかどうか。建造途中で船台を横すべりに移動させた−横どりした−ものかどうか造船所にきくのもよい。横どりの場合は変形を考慮しなければならない。
(b)機関台の確認
 打ち合わせ図と照合して機関台の状態、厚さ、高さ、及び位置を確認する。船体との溶接状況も確認する。
(c)キールから機関台までの寸法を計測し、機関を据付けた時にベッド下面とキールとのスキマが充分かどうか調べる。
(d)ダブリングの点検確認事項
 ダブリングは造船所側で付けることもあるが据付作業上望ましい寸法は次の通りである。
・厚さ 10〜15mm
・勾配 0.3/100の中高にする。
  外高はチョックライナ合せに不都合となるので避けなければならない。
 
5・3図
 
 また、大きな勾配がある場合は何等かの方法で抜け止めを施工する必要がある。
 経年変化によりチョックライナが抜けだしていることもあり、整備時には、チョックライナの状態を確認する必要がある。
・ダブリングの溶接状況 浮いてないかどうかハンマで確認する(不具合の場合は修正する)。
・当たり ベアリングレッド又は青ペンを使い定盤で当たりを確認する。(80%以上当たりがあること)
 
(e)機関取付ボルトが機関台のリブに当らないかどうか確認する。
(f)中間軸受けの位置の確認・・・メーカあるいは造船所の図面による。
(2)機関および減速機、逆転機、スラスト軸受、クラッチ、ガイスリンガ継手等の芯出し
 芯出し要領および標準値は後で述べる。
(a)機関台に芯出し用のジャッキを取付ける(機関の前後、左右移動用)。芯出しが終ってもこれはとらないでそのままつけておく。
 
5・4図
 
(b)機関を図面通りの位置におく。
(c)チョックライナあわせ
 一般的な据付基準による順序を次に示すが、造船所によってはその造船所としての流儀があるので一応尊重しなければならない。
(イ)機関トモ側前後2個所チョックライナ合わせ
(ロ)機関オモテ側前後2個所チョックライナ合わせ
(ハ)機関中央の前後2個所チョックライナ合わせ
(ニ)上記6個所の据付ボルトの仮締付け
(ホ)(イ).(ロ).(ハ).の中問の個所のチョックライナ合わせ
(d)チョックライナの両面が夫々ダブリングおよびベッドに確実に当たるようグラインダ又はヤスリで削り調整する。
チョックライナの当たりは80%以上当ってなければ駄目である。
(e)チョックライナの厚さ
標準厚さ・・・ 45mm(鋳鉄製)−機関付属品
調整後の厚さ・・・ 30〜35が望ましい(最小20mm)
  20mm未満のとき鉄板製に取替える。
  45mm以上のとき鋳鉄製で新作する。
  55mm以上のときダブリングを厚くしチョックライナの厚さを許容値内に入れる。
 チョックライナが厚くなり過ぎると機関振動の原因となる。
(f)チョックライナの形状
 
5・5図
リーマボルトだけに使っている。
 
通常この形を使っている。
 
 客先(機関長)に対して、新船の時はよいが半年位経ったらチョックライナを必ずチェックして貰う様に云うこと。
(g)機関及び減速機等の芯出し完了後中間軸受ボルト、機関据付ボルト等を本締めする。
(イ)ジャッキボルトはゆるめておく。
(ロ)サイドジャッキはそのままとする。
(ハ)据付ボルトを平均にそして充分に締付ける。
(h)デフレクションおよび主軸受のスキマを確認する。
(i)中間軸受ジャッキを取り去り中間軸受を点検する。
(j)軸系リーマボルトを取付け平均にそして充分に締付ける。
(k)船尾管パッキングランドとプロペラ軸スリーブとのスキマを確認する。
(l)芯出し作業にはクランク軸のターニング回数が多いので各軸受に油切れが発生しないよう常に注油すること。
 
2)補機据付
 補機としての各機器にはその制御機構として高圧油圧系統が付くなど機器夫々の取扱いが異なってくるので各説明書等によってその調整には充分な注意が必要である。
(1)モータとセンタリング
 各機器にはモータのつくものが多いが、それが共通台床上にセットされていてもメーカからの輸送中の歪や据付時の無理等によりセンタリングが狂っている場合が多いと思わなければならない。従ってこれら機器を据付ける際に必ず手で廻して回転状況を点検してみる必要がある。
 尚チェーンカップリングやゴム輪を使った撓み継手の場合も、軸芯の狂いは継手自体の寿命をそこなうばかりかモータ側にも悪影響を及ぼすものだと考えるべきである。
 軸芯の狂いを調べるにはカップリングの外周を上下左右4ヶ所に定規を当て又スキミゲージをカップリングのスキマに入れて面の段差とスキマを測定する。基準内におさまらない場合は取付台下部にライナを挟む等して調整しなければならない。
 基準(例)軸心の狂い0.03mm以内、スキマ誤差0.1mm以内。
 
5・6図
 
 カップリングを取付るときはカップリングを90〜110℃に暖め押込む様にして取付け、絶対に軸を叩き込む様な作業は行なってはならない。
 モータと機械本体を別々の台に取付る場合もセンタリングは前述の様に完全に行なわなければならないのは勿論である。尚、取付台は機械の重量と荷重に充分耐えられるよう強固なものとし、取付面は摺合わせによって完全に密着する様にすること。
 船内に於ける機器の取付方向は客先の使用条件によって決定されるものであるが据付位置と配管の関係を充分に検討の上出来るだけ船首尾線に平行になるように据付けるべきである。これは船のローリングはピッチングに比較して傾斜が大きいのでローリングによる影響をベアリング等に与えないためである。
(2)クーラなどはエア抜きの方向を考えて据付けた方がよい。







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