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(ウ)観光施設運営の問題点
(1)平家本陣は観光・交流活動の中心としての機能を出し切れていない
 観光協会では、物産センターである平家本陣を運営しており、同施設内に観光案内所として観光協会の事務所を設置している。当事務所には村の観光案内サインとパンフレット類は設置されているが、観光客に開かれた場にはなっておらず、窓口的なサービスがしにくい状況となっている。観光案内所として、観光客が欲しい情報を得やすいようにするとともに、本村のみどころを人の温もりと一緒に伝えることで、観光客の理解と関心がより一層深まるものと思われる。
 同協会では、神楽の夕べの開催や観光ボランティアの養成など、ソフト面の取組も始めている。しかし、情報提供は観光エージェントに流すのみで、個別のエージェントヘの売り込みなど、ねらいを定めた積極的な広報・宣伝活動は行っていない。また、イベントなどにおける旅館・民宿経営者との共同の取組など、住民との交流や連携も活発ではない。観光協会は、地域内や外部との調整、広報・宣伝、人材の募集・発掘などを積極的に行い、村民・来村者双方にとって椎葉観光に関する様々な情報が入手できるような、村の観光を司る機関として機能させていくことが期待される。
 
平家本陣内部:食事処
 
物販:観光窓口も担っているが、接客する人がみあたらない
 
(2)食事やお土産品に関する情報が十分に伝わっていない
 村内の食事処としては、平家本陣、大神館、旅館、一般の食堂などがいくつかあるが、どこで、どのような食事ができるのか、現状の観光パンフレットなどからは、観光客に分かりにくいものとなっている。同様に、お土産品についても、どのようなものがどこで買えるのか分かりにくい。宿泊客はともかくとして、立ち寄り客を可能な限り長く村内にとどまらせ、消費してもらうには、食事やお土産品に関する情報提供を重視することも必要である。
 また、本村の特産品である雑穀類はお土産品としても売られているが、粒のまま置かれている場合が多い。雑穀類の需要はあると思われるが、食べ方がわからないこともあり、お土産品としては手を出しにくい商品となっている。レシピを添えたり、気軽に味をみる感覚で買えるような加工品をつくるなどの工夫が必要である。
 物産センターでは、村の加工グループによる特産品が販売されているが、製造者の顔がみえるような販売方法にはなっていない。大量生産とは異なる地域の手作り商品は、新鮮さや、製造者の温もりが伝わることが重要であり、製造者のメッセージの掲載や対人販売は、来訪者にとって魅力的な観光のワンシーンとなることが期待できる。
 
(エ)アンケート調査(来村者、宿泊施設)からみた問題点
(1)提供サービスと潜在的ニーズのギャップ
 来村者の活動実態は従来型の“みる”観光が主体となっているが、活動要望としては自然の中での登山や釣りに加え、キノコ狩りや散策などの“する”観光があげられており、リピート客も多いことから、潜在的なニーズのある活動への展開が求められる。
 
(2)少ない滞留時間や観光消費額
 現状では、村内における立ち寄り施設が中部に限定され、滞在時間も少なく、したがって、消費額も少ないため、活動メニューや立ち寄り場所、施設の拡充が必要となっている。
 
(3)不足している観光基盤施設
 村内の道路整備や、案内地図、道路標識の整備に対する要望が多く、村内を安心して移動できる条件整備が必要となっている。
 
(4)宣伝など情報提供の工夫不足
 来村者は九州(8割、内半分が県内と福岡県)の高齢者の小グループが口コミによって来るような特性があり、家族連れや若年層は少ない。
 一方、宿泊施設については、インターネットでの情報提供は行われているが、予約については電話など従来型のメディアによっているなど、情報提供についてはより一層の工夫が求められる。
 
(5)特色ある宿泊施設とサービスの提供
 施設規模や収容人数の少ない中で、工夫をしている宿泊施設もあるが、経営の継続が厳しい施設もあり、そうした施設の支援も必要となっている。また、今後、家族連れなど来村者の層を拡げていくためには、その特性に沿ったサービス内容の拡充が必要となる。







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