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資料編
1 先行事例調査結果
(1)特定非営利法人いちじま丹波太郎(兵庫県市島町)
■法人の概要
代表者 田中武夫氏
所在地 東京都足立区
設立 平成2年6月
経営方針 地域コミュニティとの密着、地域との交流を基本理念として、地域に就業の場をつくり出す一方で、福祉一助を担うべき事業を行っている。
事業内容 病院レストラン・売店経営、小中学校・保育園への給食事業、高齢者への弁当宅配事業、ビルの清掃事業(地域の大型店:イトーヨーカドウなど)、空き店舗の肩代わり経営(パン屋、鮮魚屋)、アンテナショップ経営(漬け物屋)、学童保育室(平成15年4月開設予定)
資本金 1,350万円
売上高 約4億円
従業員数 約150名(給食部:約100人、パートを含む)
 
(1)設立の経緯
君塚さんは、有機農業によるまちづくりを志して、まちおこし専門員制度に応募して、任命された(市島町産業課、平成11〜13年度)
行政の動きでは民間で考えられるような活動はしにくい。だから別組織が必要だ。その別組織も、町の支援を受けるには法人格が必要だったので、NPO法人とすることを決めた。 
当初は活動(の方向性)には理解が得られるが、ボランティアの負担の大きさが嫌われて、人集めに苦労した。 
市島町から道路用地として買収した旧パチンコ店の建物の有効活用を持ちかけられた(道路は駐車場のところを通るので建物は残せた)。もともと朝市のような場は欲しかったので、ここで直売所を行うということで、活動の内容が具体化でき、人集めがスムーズになった。 
平成13年3月に組織を立ち上げた。 
平成13年度には、市島町からまちおこし事業委託費として、自由度の高い支援を受けた。 
現在は、銀行からの借り入れもできている。 
 
(2)事業の概要
大きく分けて、以下の7つの事業を行っている。
 
ア まちおこし会館運営
市島町から、まちおこし会館(旧パチンコ店)の運営を委託されている。委託されている側なので、家賃を払う必要はない。
 
イ 直売所運営
工事内容の検討は平成12年度から行い、平成13年5月または6月に工事着手。7月半ばに完了した。
この工事費用は、大屋である市島町が負担している。
 
いちじま丹波太郎の事業
(拡大画面:39KB)
 
i)直売所運営
平成13年8月に開始した。
会員制委託販売方式である。
会員である生産者は、年会費2,000円と、1ヶ月半から2ヶ月に1回半日のお店当番を負担する。現在登録数が90強だが、実際に野菜を出しているのは70ぐらいである。
商品の持込、値付けは会員が行い、いちじま丹波太郎は委託販売料として2割を受け取る。
レジの操作やトラブル対応ができる人が必ずいなければならないため、1名のパートを入れている。
平成14年9月には、2,900人弱の客が来てくれた。
客には町内の主婦が多く、リピーターも増えつつある。また、クルマで20〜30分の福知山市や綾部市などの人も増えてきている。
客の中には、京阪神などから直売所目的に来てくれる人の他、週末営農している人、別荘がある人、温泉の帰りの人などが立ち寄ってくれる。京阪神からでも高速道路を使えば1時間ほどで来ることができる。
現在、消費者の会員制度はない。
 
ii)学校給食への野菜供給
検討は平成12年度頭から行っていた。
直売所開設前である平成13年6月から、まちおこし専門員として学校給食への野菜供給を行っていた。もちろん、将来はいちじま丹波太郎に移すことを前提として。
発注にあわせて、野菜を手配する方式である。
 
iii)宅配
平成14年7月に本格化させた。市島町出身者へのダイレクトメールなどで立ち上げた。
2,500円の詰め合わせを送る。
市場は全国だが、実際の購入者は京阪神がほとんどである。
 
iv)移動販売
平成14年11月から始めた。
副理事長の1人が担当で、京阪神の団地・マンションに週1回、農産物をトラックに載せて売りに行っている。
お祭り・イベントなどへも呼びかけがあれば参加している。
この場合、一部の農産物は買い取りで行っている。
 
ウ 簡易宿泊所
平成14年4月から、まちおこし会館の2階を活用して行っている。
当初は都市と農村の交流企画に使うことを考えていた。
現在は主に独身男性の新規就農の方の長期宿泊所となっている。一室7畳半。風呂、トイレ、台所は共用。光熱費込みで月に25,000円。
 
エ 新規就農者支援
平成14年度より市島町からの委託事業として始めた。
主に有機農業を目指す新規就農者の受付、相談、先生の紹介、住まいや農地探しなどを手伝う。
 
オ 加工品開発
平成14年度より市島町からの委託事業として始めた。
今は米粉パンと米粉ラーメンの開発を行っている。製法はほぼできたところである。
農地を守ってゆくためには、米作りが手っ取り早い。しかし、米は消費が減少しており、4割近い減反が行われている。しかもそれが荒れ地となっていることが多い。そこで、パンやラーメンに米が使えれば、消費が増えるとの考えで始めた。
商工会では、米粉うどんを開発している。こことは適宜連絡を取りながら進めている。
委託金の一部を活用して、中古だが製粉機が平成14年1月に納品される。
平成14年度中に事業化のめどをつけたいと考えている。
 
カ 農産物認証
平成14年度より市島町からの委託事業として始めた。
有機農産物はJAS法に基づき、記録をつけ、計画表を出すなど、事務的な手間の負担が大きい。このため、認証を受けているのは町内に20軒ぐらいしかない。
平成14年度前半に栽培基準を作り、それを満たせば市島町としての認証が出せるようにした。
現在は直売所での販売時の掲示のみだが、将来はシールなどにしたいと考えている。
 
キ 肥料づくり・販売
有機農産物は肥料に対する規制も厳しい。JAS法の有機農産物にも使えるような肥料をつくりたい。
具体的には、米ぬか除草(米ぬかを水田にまいて草を生えなくする方法。米ぬかが土の上を覆って発酵し、その際に発生する有機酸により大きな除草効果が有る。さらに、米ぬかはそのまま有機肥料になる。)を、ペレット状にして扱いやすくした商品を開発中である。
 
(3)効果・今後の展開
それぞれの事業を安定させる。まだしばらくは、市島町の支援が必要である。
事業の幅を広げていきたいが、町の支援を受けている以上、町の他の商業者に影響のないものを商売にしなければならない。







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