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はじめに
 人々の基本的な願いである「健康で豊かな生活」を応援するために。私たちスポーツ・健康プロジェクトは、生涯スポーツの推進を通じ、個人が充実した人生を送り、豊かな社会が育まれることを目指しています。そこで、今回、“元気で自立した生活を営むことのできる高齢者づくり”の支援を考えました。
 近年の急激な高齢社会の到来に伴い、高齢者自身だけでなく、その家族や周辺住民、医療機関、行政等、日常生活における切実な問題として、寝たきり・ボケヘの対策が急務とされています。このような中、私たちは、転倒による骨折が、寝たきり全体の12%(寝たきりの原因の第2位)にも達し、さらに増加傾向にあるという現実に着目しました。
 こうした寝たきりの原因となる高齢者の転倒を、身体活動を促進させることにより未然に防ぎ、高齢者にかかる医療費を削減するために、(財)ブルーシー・アンド・グリーンランド財団、(財)日本ゲートボール連合、笹川スポーツ財団、日本財団が、協働で取り組む「スポーツ・健康プロジェクト」において、身体教育医学研究所(長野県北御牧村)の協力を得て、「転倒・寝たきり予防プログラム」の開発に取り組むこととなりました。
 このプログラムの開発にあたり、1つのモデルケースとして、B&G東京海洋センターで3ヵ月間、週2回の頻度で、高齢者を対象にした『体力アップ講座』を実施しました。本講座の実施を通じて、トレーニング者と非トレーニング者の健脚度、身体特性、血液性状、生活習慣や意識等におよぼす影響をつぶさに比較し、私たちが提供するトレーニングの効果および運動プログラムの有効性を明らかにすることにより、今後「転倒・寝たきり予防プログラム」の開発を着実に進めて行くうえでの、貴重な基礎資料を得ることができました。
 今回の『体力アップ講座』の成果を受け、今後は、この体力アップ講座で培った指導経験や基礎資料をもとに、(財)ブルーシー・アンド・グリーンランド財団を中心として、全国480市町村にあるB&G地域海洋センターを拠点に、「転倒・寝たきり予防プログラム」を積極的に普及・展開し、全国各地の高齢者が「元気で自立した生活を営む」ことができるよう、そのお手伝いをさせていただきたいと考えております。
 本報告書が、高齢者医療費の削減と地域の活性化に関わる1つのモデルケースとして、私たちだけでなく、多くの方々にご活用いただければ幸いです。
平成15年4月1日
スポーツ・健康プロジェクト
 
1. 目的
1−1. 目的
 本体力アップ講座(以下、「本講座」という)は、週2回、3ヵ月間の運動が、高齢者の健脚度、メディカル面(身体特性、血液性状)、心理面(生活習慣・意識)におよぼす影響を明らかにし、運動プログラムの内容を検証することを目的とした。
 
1−2. 仮説の設定
本講座を実施するにあたり、以下のような仮説を設定した。
 
■仮説I トレーニング群は非トレーニング群より健脚度の向上がみられる
■仮説II トレーニング群は非トレーニング群よりメディカル面での向上がみられる
■仮説III トレーニング群は非トレーニング群より心理面での向上がみられる
 
健脚度(健脚度測定)とは
 
 特に高齢者を対象として、「歩く(10m全力歩行)」「またぐ(最大一歩幅)」「昇って降りる(40cm踏台昇降)」という日常生活でごく普通に行っている移動動作から運動機能を評価するものである。この健脚度は、従来の大型の機械で測定した脚力の値などとも比例することがわかっており、科学的な妥当性が実証されているとともに、「10mを何秒」「またぐ幅が何cm」「台を昇って降りられる」など、評価が個々の生活実感にあっていて、理解しやすいという特長がある。
 さらに、高齢者のバランス能力の評価法として有効とされる「つぎ足歩行」の評価に、日常の生活習慣などの問診結果を組み合わせて、個々に応じた適切な転倒予防法を指導することを目的としている。東京大学大学院身体教育学講座や東京厚生年金病院、身体教育医学研究所(長野県北御牧村)の研究チームが開発、普及している。







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