8. 誤作動対策
平成13年度に実施した試験の結果、液晶表示装置及び電源パネルに誤作動が生じた。
これらについて、平成14年度において誤作動対策を施した上、再試験を行い誤作動対策方法を検討した。
8.1. 液晶表示器の温湿度試験
8.1.1 誤作動状況: 画面が変色(黒色⇒緑色)
8.1.2 考えられる変色の原因
(1) |
表面フィルムの接着不良により、表面フィルムとガラス基板間に湿気が侵入し、正常な発色を損ねた。 |
(2) |
各層間に湿気が侵入し、正常な偏光が阻害され、変色した。 |
(3) |
ガラス基板に接続されるプリント基板が湿気により絶縁不良となり、電気的特性が変化して正常な発色を損ねた。 |
8.1.3 誤作動対策内容
図18に示す箇所にシールを施し変色の原因が湿気によって絶縁不良を起こす等の電気的なものかあるいは光学的なものなのかを見極めるために次に示す手順で行った。
(1) |
液晶表示器のドライブ基板を防湿塗料で防湿処理をする。 |
(2) |
剥き出しのプリントパターン等の電気部分を完全に防湿シールし、湿気によるプリントパターンの絶縁不良を防ぐ。(図18 (3)の部分) |
(3) |
各層間の隙間を気密にするため周囲をシールする。(図18 (2)の部分) |
(4) |
表面フィルムの周囲をシール剤を使用してガラス基板に密着させ、湿気の侵入を阻止する。(図18 (1)の部分) |
(1)、(2)で液晶表示器の変色が見られなければ電気回路の絶縁不良によるものと考えられる。 (3)、(4)で変色が見られなければ湿気が光学部分に侵入したために変色したものと考えられる。 |
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図18 対策(シール)箇所 |
対策部品 |
防湿塗料 |
タッフィー TF1141 |
日立化成工業製 |
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シール材 |
シリコンシーラント 5211 |
スリーボンド製 |
写真4に防湿処理前、写真5に防湿処理後の状態を示す。
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写真4 防湿処理前の状態 |
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写真5 防湿処理後の状態 |
8.1.4試験結果
NK規格による温湿度試験は"55℃、95%の条件で1サイクル12時間を2サイクル行い、最初の1サイクルは作動状態にし、2サイクル目は非作動状態にして、作動試験時のみ作動状態にして試験する"となっているが、液晶表示器の変色は2サイクル目の作動試験で見られたため、対策後の試験は1サイクル目の試験を省略して2サイクル目の条件で行った。(供試品に出来るだけストレスをかけないようにするため)
表11に対策内容と結果を示す。
表11 誤作動対策内容と結果
対策順 |
対策内容 |
55℃、95%での試験結果 |
55℃、95%の状態から25℃、95%に戻したときの試験結果 |
備考 |
1 |
・ドライブ基板を防湿塗料で防湿 |
変色 |
正常に戻る |
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2 |
・ドライブ基板を防湿塗料で防湿 |
変色 |
正常に戻る |
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・液晶部のプリント基板のシール (図1(3)の部分) |
3 |
・ドライブ基板を防湿塗料で防湿 |
変色 |
正常に戻る |
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・液晶部のプリント基板のシール (図1(3)の部分) |
・ガラス基板の各層間のシール (図1(2)の部分) |
4 |
・ドライブ基板を防湿塗料で防湿 |
正常 |
正常 |
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・液晶部のプリント基板のシール (図1(3)の部分) |
・ガラス基板の各層間のシール (図1(2)の部分) |
・表面偏光フィルムのシール (図1(1)の部分) |
5 |
表面偏光フィルムのシールを剥がし、対策順3の状態に戻す |
変色 |
正常に戻る |
対策順3の再現性の確認
変色の度合いは小さい |
6 |
対策順5の再試験 |
変色 |
正常に戻る |
変色の度合いは小さい |
7 |
表面偏光フィルムにシールを施し、対策順4の状態にする |
正常 |
正常 |
対策順4の再現性の確認 |
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対策順5、6及び4、7は同じ対策内容であるがこれは再現性を見るために行った。
この結果、変色はガラス基板と表面の偏光フィルムに湿気が侵入したことにより、正常な発色を阻害したものと考えられる。
図19は対策内容をフロー図にしたものである。
写真6に正常時の画面の状態、写真7に変色時の画面の状態を示す。
(拡大画面:43KB) |
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図19 誤動作対策内容フロー図 |
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写真6 正常時の画面の状態 |
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写真7 変色時の画面の状態 |
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