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6. むすび
 本委員会の2ヵ年にわたる調査研究事業は、本文に述べられているとおり、2つの作業部会を設けて行われました。その1つは、いかだ艤装用SART作業部会であり、もう1つは救命胴衣用SART作業部会でありました。それぞれの作業部会では、各委員には多忙な中にも拘わらず、並々ならぬご尽力を賜り、所定の成果を挙げていただいたことに改めて感謝の意を表するものであります。
この結果、いかだ艤装用SARTにつきましては、これを救命いかだに艤装するため、基本設計、自動作動の方策、LEDの装備位置、救命いかだへの取付け位置と固定方法を研究して、試作及び投下試験を行いました。SARTの発信電波を円偏波とすることにより、送信部とアンテナ部を分離して装備することが可能となり、SARTの主要部を救命いかだの天幕に固定し、救命いかだの投下、膨脹と同時にSARTが自動作動する方策を確立することができました。これにより、RO-RO旅客船の安全対策のため、SARTを所定の膨脹式救命いかだに艤装することを強制する国際海事機関(IMO)の決議に応えることができました。
 一方、胴衣用SART作業部会では、甲板作業者等の海中転落事故の海難実態を考慮した胴衣用SARTの基本設計が行われ、略々タバコの箱の大きさの小型軽量化されたSARTが試作されました。その性能評価試験は実海域において、海上保安庁の巡視船艇及び航空機の支援を受けて行われましたが、その結果、数百米というわずかの距離であっても、実海面では船から離れれば発見困難な海中転落者の捜索救助に、極めて有効なものであることを実証することができました。
 また、胴衣用SARTより、更に小型軽量化し、低価格で個人が作業中の転落事故に備えて、常時携行できるような携帯型SARTの開発も可能となり、試作して調査研究を進めました。その結果、1海里程度(約2000m)離れている海中転落者であっても、探知可能なSARTを具現化するための極めて貴重な資料を得ることができました。
 これらの新しい性能要件を備えたSARTの実現には、国際(IMOやIEC)・国内の関係法令の改正等種々の問題もありますが、究極的には船員や乗船者の遭難時の安全を守るためのものでありますから、今後とも、小型軽量SARTの実用化に向けて、熱意をもって精力的に取り組みたいものと考えております故、関係各位のご支援を切に望むものであります。
 終わりに、この調査研究に多大なご援助を賜わった日本財団に、また種々の面でご支援をいただいた総務省、国土交通省、海上保安庁の方々に感謝を申し上げる次第であります。
 
平成15年3月
小型軽量SART委員会委員長
庄司和民







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