日本財団 図書館


5.2.5 試作
5.2.5.1 胴衣装着用SARTの試作
 胴衣装着用SARTは電源スイッチをONにするために磁石を引き抜くリードスイッチ方式を採用したが、胴衣に装着した場合の操作性を検証するために、上部から引き抜く方式と下部から引き抜く2方式の供試用SARTを試作した。
 試作した胴衣装着用SARTの本体は、現行の電気部受発信モジュールを採用しているが、高さ100mm、横幅54mm、厚さ23mmのほぼタバコ箱大の形状となり、重量も約180g(アンテナを含む。)に軽量化された。
 外観・構造を図5.2−26〜図5.2−27に示す。
 
(拡大画面:30KB)
図5.2−26 胴衣用SART(下部スイッチ付き)外観図
 
(拡大画面:68KB)
図5.2−27 胴衣用SART(下部スイッチ付き)構造図
 
 試作された胴衣装着用SARTについて、次により性能評価試験を行った。
 試作した胴衣装着用SARTとヘリカルアンテナを組み合わせた電気的性能試験結果を表5.2−12に示す。試験は胴衣装着用SARTとケースに収納したヘリカルアンテナ間を、長さ6cmの141TYPEセミフレキシブルケーブルで接続した状態で試験した。試験はSART専用電波暗室で行った。なお、アンテナは、先の「投下式SARTに関する調査研究(平成11、12年度)」に使用した円偏波方式のアンテナと同一のものを使用した。
 
表5.2−12 ヘリカルアンテナと組み合わせた電気的性能試験結果
試験項目 性能要件 試験結果
周波数 9,200(+0 -60)〜9,500(+60 -0)MHz 9,148〜9,524MHz
掃引時間 7.5μS±1μS 7.8μS
復帰時間 0.4μS±0.1μS 0.43μS
1回の応答波 12回 12回
等価等方輻射電力 400mW以上 653mW(水平面)
実効受信感度 -50dBmより良いこと -53.6dBm(水平面)
空中線の指向性(水平面) 無指向性 最大25dB
〃(垂直面) 25度以上 25度で2.2dB
空中線の偏波面
 
 試作した胴衣装着用SARTとヘリカルアンテナを組み合わせた連続作動試験を行なった。
 試験ブロックを図5.2−28に示す。
 試験は電波吸収体を壁面に貼付した恒温槽内に装着胴衣用SARTを設置し、恒温槽外のSART専用試験装置(型式TRT−100型)を用いて次の条件により試験を行った。
(1)試験温度 −1℃及び15℃
(2)恒温槽内の温度が所定の温度に達した後、胴衣用SARTを2h放置する。
(3)胴衣用SARTの電源スイッチを入れ、待ち受け状態(受信状態)で24h作動させる。
(4)その後、SART専用試験装置から周波数9400MHz、パルス幅1μS、繰り返し周波数1kHzの擬似レーダ波を連続照射し、胴衣用SARTから輻射される等価等方輻射電力(eirp)が400mW以下となるまでの時間を測定した。測定したeirpの偏波面は試験装置の制約から水平偏波面とした。
 試験結果を表5.2−13に示す。
 
(拡大画面:82KB)
図5.2−28 連続作動試験ブロック図
 
 
表5.2−13 連続作動試験結果
試験温度 eripが400mW以下となるまでの時間 備考
-1℃ 3時間34分 電池CR123Aは市販の推奨期限2006年10月と記載されたものを購入して使用した。 
15℃ 5時間6分
 
 −1℃で連続送信時間4hを満足しなかったが、5.2.3.2.2胴衣装着用SARTの消費電力見積と電池容量の項でも述べたように、現状のSARTモジュールのままでCR123Aを2個使用するだけでは、低温時に電池容量が不足する計算結果のとおりである。
 連続作動時間の性能要件を−1℃でも満足させるためには先にも述べたように、受信状態を示す発光ダイオードの点灯方法を改善するか、又は電源部のDC/DCコンバータの効率改善が必要であるが、今回の試験結果から、改善内容が技術的にインパクトの小さいもので済むことが判明したことから、改善は十分可能である。
 
 胴衣装着用SARTの環境試験を次のとおり実施して、正常に動作することを確認した。
(1)環境試験項目
a)温度試験
b)落下試験
c)振動試験
 
(2)環境試験方法及び試験結果
a)温度試験
 +50℃の温度に10時間放置した後、+35℃の温度に下げて2時間放置し、その状態で規定の電源電圧を加えて動作させる。
 −20℃の温度に10時間放置した後、−1℃の温度に上げて2時間放置し、その状態で規定の電源電圧を加えて動作させる。
 
判定基準: 機械的に支障なく動作し、かつ破損、発火、発煙等の異常を呈しないこと。電気的条件を満たすこと。試験結果を表5.2−14に示す。
 
表5.2−14 温度試験の結果
試験項目 性能要件 試験結果
+35℃ -1℃
機械的性能 異常のないこと 異常なし 異常なし
掃引周波数範囲 9.14〜9.56GHz 9161.4〜9529.2GHz 9158.9〜9532.2GHz
掃引時間 7.5μS±1μS 7.64μS 7.67μS
復帰時間 0.4μS±0.1μS 0.38μS 0.40μS
1回の応答波 12回 12回 12回
応答遅延時間 0.5μS以内 0.32μS 0.35μS
等価等方輻射電力 400mW以上 715mW 723mW
実効受信感度 -50dBmよりよいこと -53.1dBm -53.5dBm
 
b)落下試験
 救命胴衣に装着した状態で5mの高さから水中に2回投下した後、規定の電源電圧を加えて動作させる。
 
判定基準: 機械的に支障なく動作し、かつ破損、発火、発煙等の異常を呈しないこと。電気的条件を満たすこと。試験結果を表5.2−15に示す。
 
表5.2−15 落下試験の結果
試験項目 性能要件 試験結果
機械的性能 異常のないこと 異常なし
掃引周波数範囲 9.14〜9.56GHz 9161.7〜9530.5GHz
掃引時間 7.5μS±1μS 7.66μS
復帰時間 0.4μS±0.1μS 0.40μS
1回の応答波 12回 12回
応答遅延時間 0.5μS以内 0.32μS
等価等方輻射電力 400mW以上 717mW
実効受信感度 -50dBmよりよいこと -53.1dBm
 
c)振動試験
 振動数0〜750回/分(全振幅3.2mm)、振動数750〜1500回/分(全振幅0.76mm)及び振動数1500〜3000回/分(全振幅0.2mm)の振動を上下、左右、前後方向に各15分間加えた後、規定の電源電圧を加えて動作させる。
 
判定基準: 機械的に支障なく動作し、かつ破損、発火、発煙等の異常を呈しないこと。電気的条件を満たすこと。試験結果を表5.2−16に示す。
 
表5.2−16 振動試験の結果
試験項目 性能要件 試験結果
機械的性能 異常のないこと 異常なし
掃引周波数範囲 9.14〜9.56GHz 9162.0〜9530.3GHz
掃引時間 7.5μS±1μS 7.65μS
復帰時間 0.4μS±0.1μS 0.38μS
1回の応答波 12回 12回
応答遅延時間 0.5μS以内 0.33μS
等価等方輻射電力 400mW以上 708mW
実効受信感度 -50dBmよりよいこと -53.0dBm







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION