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4−3 今後における鉄道を中心とする交通政策の方向性
(1)運輸政策審議会答申第19号の政策目標
 少子・高齢化の進展、通勤・通学需要の減少等、社会環境が大きく変化する中、利用しやすく高質な鉄道ネットワークの構築がますます重要になっていることを踏まえ、運輸政策審議会答申第19号「中長期的な鉄道整備の基本方針及び鉄道整備の円滑化方策」が平成12年8月に出された。
 答申の中で、大都市圏における鉄道は、大都市の機能を支える都市の装置として位置付けられ、政策目標として通勤・通学混雑の緩和、最混雑時の速達性向上、乗り継ぎ利便性向上、さらに望ましい都市構造等のあり方を支える鉄道ネットワーク全体としての利便性向上の4点を掲げ、「全ての区間の混雑率150%以下、国際的空港と都心部間の所要時間30分台」等の新たな整備水準として数値目標が掲げられることとなった。
 
(都市鉄道に関する整備水準)運輸政策審議会答申第19号
大都市圏における都市鉄道のすべての区間のそれぞれの混雑率を150%以内とする。
国際的な空港と都市圏との間を鉄道で連結することが適当である場合には、当該空港アクセス鉄道について、その所要時間の短縮に努めるものとし、空港と都心部との間の所要時間を30分台とすることをめざす。
(2)答申第19号の政策目標を踏まえた課題整理
 この答申第19号に掲げられた政策目標の達成状況としては、混雑緩和に向けた運行本数増や新線整備等によって平均混雑率150%以下の達成、最混雑時における速達性向上についても都市の郊外化に対応して複線化や電化による輸送サービス改善が行われたことにより、鉄道全体のネットワーク機能向上は一定の成果を挙げてきているが、国際的空港と都心部間の所要時間30分台未達成エリアの存在、開発地における鉄道空白地域の存在、一部路線における混雑の存在、路線間の連絡不備等、当該目標に照らして未達成の課題も依然残っている。
 
 運輸政策審議会答申第19号の政策目標及び現状の社会状況を踏まえて運輸政策審議会答申第10号の達成状況及び課題を整理すると以下のとおりである。利便性に関係する項目についての課題が残されている。
 
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(3)今後における鉄道を中心とする交通政策の方向性
 答申第10号及び第19号の政策目標の達成状況と課題を踏まえると、通勤・通学混雑の緩和、速達性向上等が進んでいる一方、相互乗り入れ、路線間の連絡性向上、鉄道とバスの連携等の乗り継ぎ利便性の向上、鉄道サービス空白地の存在、広域交通アクセス、一部路線の混雑等の課題が残されている。
 さらに、より長期的な展望に立ち、経済社会の変革に対応するとともに変革を促すモビリティの革新を図るべく、運輸政策審議会答申第20号「21世紀における総合的な交通政策の基本的方向」が平成12年10月に出され、鉄道に関しては、都市圏において通勤・通学以外の様々な都市住民の移動ニーズに応えるため、混雑率の改善とネットワークの完成を図るとともに、シームレス化の推進により交通機関相互間の乗り継ぎ利便性を高めていくことが21世紀初頭における目標として明確にされた。
 これらの状況を総合的に勘案しつつ、将来に想定される社会・経済構造、交通需要動向等を勘案しつつ、近畿圏において今後官民が一体となって目指すべき鉄道を中心とする交通政策の方向性を規定することが必要である。
 具体的には、近畿圏における鉄道を中心とする交通政策の方向性は、鉄道ストックの量的整備が進む中、政策の重点を新線整備から既存ストック活用にシフトするとともに、新線整備は必要最小限なものとし、双方が補完しながら一体的に整備を行うことにより新たな課題に適切に対応することを主眼とすべきである。特に、人口減少、急速な少子・高齢化の進展、通勤・通学トリップの大幅な減少、環境問題の深刻化、情報化の進展等、社会・経済構造のさらなる変化が将来的に予想される中で、速達性、利便性、快適性等の利用者の基本的なニーズを踏まえつつ、バリアフリー化等の高齢化社会に対応した輸送サービスへの転換、鉄道とフィーダー輸送機関の乗り継ぎ円滑化、IT活用による交通システムの情報化等による利便性向上を重点的に図ることとし、新線整備については、路線間の連絡性向上等のシームレス化、広域交通へのアクセス強化、公共交通サービス空白エリアの解消、都市再生への対応、さらには一部区間における混雑の解消等を図ることとする。特に、地球環境問題の深刻化等の状況を踏まえつつ、マイカーに高度に依存する社会体質からの脱皮を図り、人と環境にやさしい・便利で快適な都市交通の実現を最終目標とすべきである。
 これらの新たな政策の方向性については、近畿圏の実情に照らして、今後できる限り乗り継ぎ利便性、広域交通アクセス、混雑率等の具体的な目標設定を行うことにより、当該目標に照らして、既存ストック有効活用方策、新線整備方策等の検討を行っていくこととする。
 
《今後の方向性》
快適な輸送サービスの提供
乗り継ぎ利便性の向上・シームレス化
広域交通へのアクセス性の向上
公共交通利用不便地域への対応
都再生支援 等
 
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図 4−3−1   今後における鉄道を中心とする交通政策の方向性
 
 
図 4−3−2   大阪国際空港、関西国際空港、神戸空港から30分台圏
 
【参考】
図 4−3−3   各新幹線駅から30分台圏







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