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3.6 地震発生時の帰宅者の河川利用
 東京には、事業所、学校や買い物・娯楽施設が集中し、日々、多くの通勤・通学・買い物客等が流入、滞在しているが、大地震により交通機能等が停止した場合、速やかに自宅に帰ることができない人たちが多数発生し、大きな混乱が予測される。
 このため、帰宅困難者に対する情報の提供、保護支援、交通手段の確保などについて検討がされてきている。「東京都地域防災計画」によると帰宅困難者とは、次の条件に当てはまることとしている。
(1) 自宅までの帰宅距離が10km以内の人は、全員の徒歩帰宅が可能。
(2) 自宅までの帰宅距離が10〜20kmの人は、帰宅距離が1km増えるごとに10%ずつ帰宅可能者が減ずる。
(3) 自宅までの帰宅距離が20km以上の人は、全員の翌朝までの徒歩帰宅が困難。
 直下地震の被害想定調査によると、自宅外への外出者は819万人と推定され、そのうち帰宅困難者が371万人発生すると推計している。
 
表-3.6.1 帰宅困難者の内容別内訳
帰宅困難者合計 うち通勤者 うち通学者 うち買物等
371万人 227万人 60万人 84万人
※出典: 「東京都地域防災計画 震災編 (平成10年修正) [本冊]」
 
 これらの帰宅困難者を少しでも減らすことを目的として、河川を利用した人員の輸送も計画されている。ただし、現在の計画では、船舶のルートや船舶が着岸する位置等の詳細な計画はなく、船舶を利用することのみがメニューとされている。
 船舶を利用し帰宅困難者を輸送する場合は、大まかには「一時避難所→荒川(隅田川)船着場→水上バス等→自宅に最寄りの荒川(隅田川)船着場」となる。
 また、隅田川から荒川、荒川から隅田川というように、船舶が両河川を自由に往来できることで、さらに帰宅者の船舶利用の可能性は拡大する。荒川ロックゲートの建設により、帰宅者にとって河川は大きな役割を果たすことが可能である。
 荒川ロックゲートは災害時において、早急に閘門内を通航するため、ゲート開閉速度は日本で最速の10m/minとされており、閘門通過時間は約20分で済む。仮に24時間連続で稼働したとすると1日で約70回は船舶が通過できることとなり、1回について約100人の輸送が可能とすると、7000人を輸送することができる。
 しかし、荒川ロックゲートが建設されても、帰宅困難者の全体数からみれば、輸送可能な人員は少なく、帰宅困難者は依然多数存在する。
 
表-3.6.2 荒川ロックゲートの運転能力
項目 備考
開閉速度 10m/min 日本最速
閘門通過時間 約20分  
運転回数 70回  
輸送人員 7000人 1回につき100人とした場合
 







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