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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2000/04/03 産経新聞朝刊
【正論】静岡県立大学教授 伊豆見元 北の軍事的脅威除去が喫緊の課題
 ◆核ミサイル入手阻止を
 四月四日から日朝国交正常化交渉が再開される。九一年から九二年にかけて八回、正常化交渉を行った時とは、状況が大いに異なるなかでの再開だ。拉致疑惑問題が、国民世論の大きな関心事となったことは、その一つの例である。だがより重要な変化は、北朝鮮が日本全土をその射程内に収める弾道ミサイル能力を持つに至った点にある。しかも、すでに核兵器開発能力を有していると考えられることから、いまや北朝鮮は、日本の「生存」そのものを直接的に脅かしかねない存在となった。
 かつて九〇年代の初頭、日本は「第二次大戦後の不正常な関係をただす」という二国間の側面と、「日朝関係改善が北東アジア地域の平和と安定に資する」という国際的側面の二つから成る目標をもって、ピョンヤンとの交渉に当たってきた。だが、今後は、それらに加えて、「直接的な軍事的脅威を除去する」という新たな目標を設定し、その第三の目標の追求に、われわれは最大の努力を傾注して取り組まねばなるまい。
 具体的には、昨秋公表された「ペリー報告書」(非機密版)が最大の課題とした「北朝鮮の核ミサイル保有阻止」が、やはり日本にとっても「ボトムライン」(絶対に譲ることのできない最低の線)として位置付けられると言ってよい。
 「ペリー報告書」は、北朝鮮の核ミサイル保有が朝鮮半島の相対的な安定を崩し、米韓側の「抑止力を弱め、また抑止に失敗したさいの損害を増加させるかもしれない」と重大な懸念を表明した。
 われわれの観点からすれば、そこには、北朝鮮による核ミサイルの存在を前提とした「対日威嚇」や実際の「対日攻撃」の可能性が含まれることになる。ピョンヤンの核ミサイル入手は、日本の安全をそれこそ根本から揺るがしかねないのである。その阻止を喫緊の要事とすることは、多くの首肯するところとなるはずだ。
 ◆容易ではない対策の作業
 もとより、それを実現させるための作業はけっして容易ではないが、少なくとも、(1)北朝鮮にミサイル開発や核兵器開発をスムーズに進めさせないための環境作り(2)北朝鮮にミサイル・核兵器開発放棄を受け入れさせるうえで必要とされる「コスト」の試算(3)その試算に基づく対北朝鮮「取引」の具体策立案(4)上記の「取引」に失敗した場合の対応策の並行的準備−といった手段を講じておくことが不可欠となろう。
 また、日本は「朝鮮半島の非核化にかんする南北朝鮮共同宣言」の完全履行をピョンヤンにたいして強く求めるべきだと思われる。九二年二月に発効したこの共同宣言は、「核兵器の試験、製造、生産、接受、保有、貯蔵、配備、使用」を禁じており、「核再処理施設とウラニウム濃縮施設」の保有も放棄していることから、かりに完璧に履行されたさいには、朝鮮半島に核兵器が存在しうる可能性は一〇〇%封じられることになる。
 問題は、この要求が九四年十月の米朝「合意枠組み」の範囲を超えるところにある。「合意枠組み」は、軽水炉完工との引き換えに核再処理施設を解体すると約しているからだ。しかし、日米韓三国は、北朝鮮の弾道ミサイル規制努力に端的にあらわれているように、すでに「合意枠組み」の取り決めの範囲を超える要求をピョンヤンに突きつけ、その実現のための協議を進めようとしている。したがって、それらに加え今後改めて「非核化共同宣言」の完全履行を北朝鮮に迫ることに、躊躇する理由はとくに見当たらない。
 ◆北の反発は覚悟せよ
 いずれにせよ、北朝鮮の核ミサイル保有(すなわち北朝鮮自らの手による核兵器の小型弾頭化と、他国から完成された小型核弾頭を入手すること)を防ぐためには、「非核化共同宣言」の完全履行は最小限必要とされる措置だと考えるべきであろう。わが国としては、国交正常化のいわば「前提条件」に、それを位置づけてよいものと思われる。もちろん、北朝鮮はそうした日本の要求に強く反発するはずだ。また、米韓両国も、この措置が却って問題を複雑にし「合意枠組み」の維持を困難にしかねないとの理由から、積極的に同調する姿勢をとることに二の足を踏むかもしれない。
 しかし、すでに指摘したように、いまや北朝鮮は日本にたいして直接的な軍事的脅威を及ぼす存在となっている。その脅威の除去に、今回の日朝正常化交渉の喫緊の目標をおくことは、当然のことだと思われる。北朝鮮がわが国の「生存」を脅かしかねない存在でありつづけるかぎり、その相手と関係を正常化し、友好関係を結ぼうとする機運が生じるとは考えられないからである。軍事的脅威を除去してわが国の安全をより確固たるものにするところに、北朝鮮との交渉に臨むきわめて重大な理由があることを、われわれは改めて確認し、そのうえで具体的な対北朝鮮政策の構築に努める必要があるだろう。(いずみ はじめ)
著者プロフィール
伊豆見 元 (いずみ はじめ)
1950年生まれ。
中央大学法学部卒業。上智大学大学院修了。
平和・安全保障研究所主任研究員、静岡県立大学助教授、米ハーバード大学客員研究員等を経て現在、静岡県立大学現代韓国朝鮮研究所センター所長。
 
 
 
 
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