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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2002年1月号 『世界』
日朝交渉再開は、いま、なぜ必要か
一年以上も途切れたままの日朝交渉。食糧の支援も停止されようとしている。
しかし、日本はいま、緊急にこれを行わなければならない。なぜか
和田春樹
◆一
 九月一一日のニューヨークの未曾有のテロ事件、そしてはじまったアメリカ軍のアフガニスタン・タリバン政権に対する戦争行動、さらにワシントンで起こった炭疽菌事件は世界をかつてない危機に直面させている。相乗された憎悪は狂信を拡大し、軍事行動とテロの日常化を生み出しかねない。戦争は国家間の戦いであり、一方の国家が降伏するか、壊滅するかすれば、別の一方の勝利となって終わってきた。しかし、すでにソ連のアフガニスタン戦争が終わったあとは果てしない内戦となり、その内戦の中からタリバン政権が生まれたのであった。テロリストに庇護を与えていたタリバン政権をこのたびの戦争で壊滅させた後には、いかなる事態が生じるのであろうか。テロリズムの終わりが来ると簡単には思えない。憎悪と狂信が結びつくところには、テロリズムの基礎がある。だから現在の危機の進行は人類の共滅にもつながりうるという恐れを禁じえない。
 なんとしても、そのような方向に世界が進むことを食い止めなければならない。そのためにはテロリズムの攻撃に衝撃を受けて、悩んでいるアメリカ人とあらゆる形で対話して、彼らとともにこの袋小路からの出口を見つけ出さなければならないのである。それと同時に、憎悪と非妥協的な対立がグローバル化するのを食い止めることが必要である。テロリズムを非難し、テロリストを抑えこみながら、アラブ、イスラム世界の感じている苦痛、憤懣を減らすように、二〇世紀がのこした積年の不正義、パレスチナ問題の解決に全世界的な努力が傾けられるようにしなければならない。しかし、同時にこのような世界的な努力とともに、各地域はそれぞれがかかえる問題を見つめ、解決し、対立を緩和し、怒りや憎しみを減らすように努力することが必要である。
 われわれの地域である東北アジアでは、日本と韓国が二〇〇二年五月にはワールドカップ二〇〇二を共同開催する。この大会をつつがなく経営することは、両国が全世界の人々に負う責任である。アメリカのソルトレーク・シティで開催される冬季オリンピック大会も大きな問題であるが、サッカーのワールドカップはウィンター・スポーツの大会よりはるかに多くの大陸の人々が参加するものであり、観衆の興奮度もはるかに高い。もとより、テロに対する安全管理の対策は徹底して行われなければならないが、それだけでは不十分だ。主催国は全世界に対して平和と和解のメッセージを出し、それが世界の人々から認められなければならない。
 さらに主催国は周辺国、東北アジア地域の諸国に協力を求め、支持をとりつけ、主催国をとりまく歓迎と協力の意志、大会成功への祝福の輪を用意しなけれげならない。そのためには、この東北アジア地域にある自分たちの問題を解決する姿勢を主催国である日本と韓国は示さなければならない。両国にとって、最大の課題は、朝鮮民主主義人民共和国と和解して、その大会支持をとりつけることである。
 この点では、韓国は、二〇〇〇年六月の金大中大統領平壌訪問で、和解を大いに進めた。その後もさまざまな交渉や往来があったが、いまは進展がとまっている。これに比べれば、日本の北朝鮮との関係ははるかに低い段階にある。両国間は政府間交渉が断ち切れた状態である。二〇〇〇年四月に七年ぶりに再開された日朝国交交渉は、四月の平壌、八月の東京、一〇月の北京と三回会談したところで、事実上再決裂し、すでに一年間も交渉は再開されないままに経過している。
 現在はブッシュ政権のもとで行き詰まっている朝米関係も、二〇〇〇年は北朝鮮のナンバー2の趙明禄国防委員会第一副委員長・人民軍総政治局長のワシントン訪問、オルブライト国務長官の平壌訪問が実現され、米朝共同コミュニケを結ぶにまでいたったのだから、外交代表による交渉という以上には進んだことのない日本よりもはるかに進んだレベルにある。
 そのように考えてくれば、日本は世界の中で北朝鮮ともっとも遠く、もっとも厳しい関係にある国だと言わなければならない。今日の世界的危機の中でワールドカップ二〇〇二のような国際的な行事を主催する資洛が果たして日本にあるのだろうか。それだけの責任を担う覚悟が政府と国民にあるのかをここで問わざるをえない。
 
 
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