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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


読売新聞朝刊 2000年6月24日
社説 朝鮮戦争半世紀後に訪れた転機
 
 北朝鮮軍が韓国に対する全面的な奇襲攻撃を開始して、朝鮮戦争が勃発(ぼっぱつ)したのは、一九五〇年六月二十五日である。
 約三年後、軍事休戦協定が結ばれ、数百万の死傷者を出した戦火はやんだ。だが、南北に分断された同一民族が相争った戦争は、韓国、北朝鮮それぞれの人々の心にいやしがたい傷を残した。
 南北に分かれた一千万近い離散家族は、互いの安否確認や再会も出来ないでいる。戦争が残した悲劇はなお続いている。
 朝鮮戦争は東西イデオロギーの対立を反映した「熱い冷戦」でもあった。
 米軍指揮下の国連軍(十六か国が派兵)が韓国軍とともに戦い、北朝鮮には中国とソ連が援軍を送った。第二次世界大戦後の世界秩序は、東西の軍事的対立という冷戦構造へと決定づけられた。
 欧州では北大西洋条約機構(NATO)がソ連共産主義陣営の拡張を阻止する軍事機構へと改編され、大戦の敗戦国の西ドイツは、やがてNATOの一員として再軍備に乗り出すことになる。
 日本では、連合国軍総司令部(GHQ)の対日占領政策の転換が起きた。
 米軍部隊の半島急派で手薄になった日本防衛のため、マッカーサー最高司令官からの指示を受けて、吉田内閣は今日の自衛隊の前身となる警察予備隊を発足させた。西側諸国との対日講和が促進され、主権を回復し、日米安保条約が結ばれた。
 朝鮮戦争が国際社会のコースに与えた影響は極めて甚大だった。
 それから半世紀。国際情勢は大きく変わった。冷戦は終わり、ソ連型社会主義は崩壊している。しかし、冷戦構造が残ったままの朝鮮半島情勢は、国際社会の大きな懸念の対象となってきた。
 韓国の金大中大統領は先週、平壌で、金正日朝鮮労働党総書記と史上初の南北首脳会談に臨み、南北共同宣言に署名した。朝鮮半島に緊張緩和と和解をもたらすうえで意味ある第一歩と言えよう。
 敵対関係の解消へ動きだした韓国と北朝鮮は、互いに刺激し合わないよう相手側を誹謗(ひぼう)する放送を中止した。朝鮮戦争五十周年の記念行事も控え目にするという。
 米国は、北朝鮮がミサイル発射を自制すると約束するなかで、朝鮮戦争以来の対北朝鮮経済制裁の一部解除措置を実施した。朝鮮半島の和解を促進するものだ。
 南北関係の雪解けが、心理的、象徴的なものから始まって、今後より具体的な形へと結実することを期待したい。
 その基礎となるのは、朝鮮半島の軍事的緊張の緩和である。
 南北あわせて百万近い兵力が、東西二百四十八キロの軍事境界線をはさんでにらみ合っているのが、半島の冷厳な現実だ。北朝鮮軍は前線付近に強力な火器を備えた兵力を前進配備し、いつでもソウルをうかがえる態勢を維持している。この軍事的緊張を緩和する具体的措置が必要である。
 戦争の後遺症を克服し、南北和解を加速するには、離散家族の自由往来と金正日氏ソウル訪問の実現が重要なカギとなる。
 
 
 
 
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