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会議の概観(アジア及び中央アメリカにおけるRDSs設置による影響)(仮訳)
モーハン・ナルーラ
日本財団必須医薬品プロジェクト委員会アドバイザー
 
(本論)
 アフリカ、アジア及びラテンアメリカの多くの開発途上国において、WHO(世界保健機関)の必須医薬品リストに列記された必須医薬品が不足している。これについては様々な理由が存在し、政府の弁明である予算上の制約による資金不足が唯一の理由ではない。その他の理由として、政府、処方者、調剤者、消費者及び製薬会社の態度や行動、国の医薬品支給システムにおける管理が不十分なこと、浪費、長期計画の欠如、並びに外貨不足等が含まれる。
 公平という点は、医療の提供及び改善に必要な財源として利用者負担の問題を取り上げた場合に議論の対象になっており、以前の報告書もこの点について多少なりとも取り組んでいる。公平の原則は、医療の質あるいは保健サービスの範囲との関連で取り上げないとしても、少なくとも保健サービスへのアクセス、利用の可能性及び経済的余裕に関して、初期診療の支柱のひとつであることが繰り返し強調されている。したがって、必須医薬品における公平の原則(注1)は、最小限、以下の事項を含んだものでなければならない。
・ すべての人々が必要な医薬品を入手できること
・ 社会及び個人が経済的に購入できる価格であること
・ 大半の住民における保健上のニーズを満たすことのできる医薬品を優先させること
・ 地方・都市間の公平な分配
・ 医薬品が安全かつ有効であり、品質が良いことへの保証、また処方者全員に対する訓練が十分になされていること
・ 客観的情報へのアクセス
・ 消費者(患者)と処方者間に真の対話があること
・ 教育及び訓練による消費者の能力の強化
・ コミュニティーの関与及び参加
・ 発展途上国のニーズに合った薬品の開発
・ 責任ある製造及び輸出
・ 道義的な販売促進活動及びマーケティング
・ 危険な製品、又は効力のない製品の寄贈を阻止すること
 
(ニーズ)
 世界銀行は、1993年世界開発報告書「保健への投資」の中で、一連の基本的保健サービスの構成部分として、以下のものを列記している。
1.妊娠関連のケア、すなわち産前、分娩及び産後のケアを保証するためのサービス。途上国で生じる50万人の妊産婦死亡のほとんどを阻止するための努力の強化
2.家族計画サービスの利用の改善等により、毎年85万人の子供の生命を救うとともに年間10万人の妊産婦の死亡をなくすこと
3.成人の主要な死因である肺結核による年間200万人の死亡を減らすために、薬物療法を通じて肺結核を撲滅すること
4.毎年、2億5000万人の新患者(時には重症)を占めるSTD(性行為感染症)への対策
5.下痢症、ARI(急性呼吸器疾患)、はしか、マラリア及び栄養失調による子供の一般的な重い病気に対する治療(これらの死亡者数は年間、700万人にのぼる)
6.必要と考えられるその他のサービス
・ 軽い感染症及び外傷の治療、並びに病院の応急手当て/治療
・ 低価格の治療プロトコルを使った非伝染性の病気及び症状の治療。例えば、心臓病に対するアスピリン、抗高血圧症薬、子宮頚部ガン、一部の精神病の治療、及び白内障の摘出。
 上記の一連のサービスは必須医薬品を利用できることを前提としており、この結果、前述の必須医薬品における公平との関連で、必須医薬品の提供の必要性を明らかにするものである。
 途上国政府のほとんど及び一部の先進国政府は過去において、また少数の国は現在もなお、「2000年までにすべての人に保健を」のプライマリー・ヘルス・ケアの目標の一部として、医療費の無料化を政治的に確約している。しかし、経済的現実及び医療費の高騰により、無料の総合医療の公約は疑問視されるようになった。すべての医療サービス・レベルにおいて無料で医療及び医薬品を提供することは、次第に、しかし確実に不可能になってきている。
 政府の保健予算の縮小、医薬品及び医療用品の価格の上昇、消費者の期待の増大、途上国における不十分な医薬品支給管理システム、損傷や盗難による損害の増加、質の悪い医薬品、その他の理由により、多くの政府及び国際的保健機関は、医薬品に関する資金の提供及びその後における医療サービスの維持を助けるために、コミュニティーに期待を寄せるようになった。
 基本的医薬品の長期的かつ相当な不足に見られるように、政府の医療サービスがますます不十分なものとなり、地元住民のニーズに対応しなくなったことから、民間部門は、しばしば質の悪い医薬品を入手し、不適切な処方を行い、しかも非常に高い価格で販売することにより、繁盛するようになった。
 上記の事態と取り組むために、一定レベルの共同管理及びコミュニティー・グループの監視が伴うコミュニティーによる医薬品資金の提供に関するいくつかの地域でイニシアティブがスタートした。ユニセフはこれらのばらばらだが、見たところ成功している各地のイニシアティブに応えて、バマコ・イニシアティブを開始した。バマコ・イニシアティブでは、コミュニティーの参加を促すための出発点として、医薬品の支給を行うこととした。これにより、コミュニティーがそれぞれの地域における医療サービスの効果的な運営について徐々に責任を負うようになり、ゆくゆくはコミュニティー開発のために集めた資金を利用することにしたのである。
 アフリカの諸国においてバマコ・イニシアティブがそれぞれ成功したことにより、このイニシアティブの基礎となっている基本原則のいくつかは、アジア及びラテンアメリカの途上国にも適用できるかもしれないと認識されるようになった。このような認識は、以下のことから更に強められた。すなわち、政府予算の縮小及び国際的ドナーの厳正でしかも以前よりも少ない資金供与から、困難な状態に置かれた途上国の保健サービスの財源の一部となる可能な選択として、費用回収という手段が登場したことである。
 日本財団は、バマコ・イニシアティブに呼応して必須医薬品購入資金回転システム(RDF)の設置を支援し、資金を供与するために、以下の3つの目的の下に、アジア及び中央アメリカ諸国と深くかかわることを決定した(注2)。
1.最初の支援の後、RDFが自立すること
2.RDFを支えるために、信頼できる必須医薬品補給システムを設定すること
3.RDFのモニタリング及び管理において、コミュニティーの参加を持続させること
 
(アプローチ)
 日本財団はNGO(非政府組織)として、ユニークな地位を保持している。同財団は、開発プロジェクト、特に保健分野において技術支援を行うと共に、資金面で相当な援助をしており、このようなプロジェクトを支持する政府に直接アクセスを有するものである。加えて、財団のかかわりは非政治的であることから、物資及び人的資源の投入が可能となり、さまざまな機関及び部門が支持する種々のプロジェクトにまたがる目標や目的を達成するために、同財団は他の部門や機関を一堂に集める集合点としての役割を果たしている。
 したがって、多くの政府の要請に応えて、日本財団は元手となる医薬品を提供することとした。これらの医薬品は、保健省医薬品支給システムによって地方の保健施設に配布され、RDFをスタートさせることになる。これらのRDFの開設を促進するために、ユニセフは、バマコ・イニシアティブの拡張としてのプロジェクトを調整し、アフリカにおける経験に対応して選ばれた諸国ですでに開始されている保健制度の活動を強化するために、この資金が投入された。覚え書に署名した後、日本財団は、MOH(保健省)から要請された医薬品の供与と現地ユニセフに対する資金協力を、以下の事項を条件として、概ね3年間にわたり行うことを支援を約束した。すなわち、毎年の見直し、訓練を促進するためのユニセフへの運営資金の供与、RDFの方針及び手順の策定、RDFのモニター及び監督方法を編み出すために、MOHに助力すること、定められた期間内に持続可能の状態に達成すべく、RDFの管理及び監督にコミュニティーの参加を確保することである。
 日本財団は、同財団の必須医薬品プロジェクト委員会各委員および同委員会委員長の梅内博士が所属する東京大学大学院国際保健計画学教室を通じて、また自らも直接、これらのプロジェクトの進展を監視した。財団は現場での毎年の見直しとともに、財団に対するプログレス・リポートの提出を義務付けることによって監視した。毎年の見直しに続く提言及び報告書はプロジェクトの次の段階を実施するための基礎となった。
 継続的見直しの一部として、また様々なプロジェクトの経験を生かすために、1995年10月25日〜27日まで、日本財団は、「必須医薬品及びコミュニティー・ヘルスケア・システム」と題する国際会議を東京で開催した。この会議には9か国が参加し、プロジェクトの進捗に関する情報交換、方法の見直し、問題点及び制約について討論するとともに、日本財団、参加国際機関、各国政府機関が相互に対して提言を行った。また同会議には、WHO本部および西太平洋事務所、ユニセフ・ニューヨーク本部及び東京事務所、JICA(国際協力事業団)等の機関からも参加があった。
 
(会議)
(会議目的)
会議の目的は次の通りである。
・ 成果の見直し
・ 制約についての検討
・ プロジェクト実施の結果生じた問題に関する話し合い
・ RDFへの支援拡大の可能性についての検討
・ 日本財団及びその他のパートナーへの提言
 会議主催者、ユニセフ及び参加国の保健省に提言するために、国の医薬品政策(医薬品支給システム及び必須医薬品リストを含む)等の関連分野、地方における保健チームの管理能力、医療の質的改善、医薬品の合理的使用、コミュニティーの参加、並びにさまざまなレベルにおけるRDF/PHC委員会の運営についても討論がなされた。
 
(プロセス)
 各国参加者は、ユニセフ本部から要請のあった詳しい報告書に加えて、報告書の要約を総会に提出しなければならなかった。問題及び制約は報告書の要約及び詳しい報告書から導き引き出された、リストは、ワーキング・グループ・セッションの前に各参加者に配布された。その報告書要約は、以下のフォーマットに基づいている。
・ 会議に提出したカントリー・リポートの要約に関するフォーマット
・ 日本財団の支援するプロジェクトの主要目的
 このセクションには、日本財団が直接支援するプロジェクトの主要目的、並びに同財団の支援プロジェクトの成果に相当な影響を及ぼす保健省及びユニセフの目的が含まれる。
 
(目的に対する現在までの成果)
 このセクションでは、前記セクションで列記された目的に対する成果が含まれ、これらの成果を簡単に述べると共に、成果を明示するために数字を含めるか、相当な進展を指摘するものとする。詳しい報告書において、各国の全般的な保健状況及び保健システムの成果に関するデータ及び数字が示されるものの、このセクションの目的は、前記セクションに列記された、日本財団支援プロジェクトの目的を直接達成したという成果について要約するものである。
 
(プロジェクトの実施において直面した問題及び制約)
 このセクションでは、プロジェクトの概念化、計画化、実施及びモニタリングの過程で直面した問題及び制約が含まれ、それらは発生順に列記され、解決されたもの又は解決の途上にあることが示される。このセクションは、他の参加国が自国の問題及び制約を比較、対照し、ワーキング・グループ・セッションの討論のために、会議主催者がこれらの問題及び制約を対照及び分類し、今後の問題に関する総合的見解を提示できるようにするものである。
 
(討論及び解決を要する問題)
 このセクションでは、プロジェクトの実施によって登場した主要な問題(技術、管理及び資金に関するもの)が列記されている。またセクションに含めるべきものとして、プロセスを維持し、国内全体の医療システムを強化するために取り組むべき問題が記載されている。更に、プロジェクトを他の地域に拡張したことにより生じた問題も含まれ、これにより、問題を対照により分類し、小さなワーキング・グループにおいて参加者が討論できるようにした。
 
(将来の計画)
 このセクションでは、プロジェクト実施の結果、その他の関連する部門のある地域にプロジェクトを拡張する将来の計画、中期的に国内の他の地域にプロジェクトを拡張する計画、更に将来全国レベルにプロジェクトを将来拡張する計画が列記されている。またこのセクションには、関与が求められる他の部門及び機関が含まれる。これらの計画に要する費用の概算も可能な場合含まれている。このセクションは、今後2〜3年間に必要な資金についての考え、及びプロジェクトの実施により明らかになった方向性について、主催者とパートナーに示すものである。
 
(会議への提言)
 このセクションでは、各参加国及び各参加機関がこれまでの経験を通して得た結果としての提言を求められた。これらの提言は具体的なものとし、今後用いる戦略と共に、提言を実施するために必要な活動のタイプにつき、その概要を含めるものとする。適切な提言に関しては、その提言の実施、または実施を促すための組織への責任の割り当てが含まれる。これらの提言は対照により分類され、審議のためにワーキング・グループに提示された。
 
会議の主要な3つの構成部分は、以下のとおりである。
1.式典(開会及び閉会式)並びに歓迎/基調講演
2.総会におけるカントリー・リポート(要約)の提示、WHO及びユニセフの代表によるプレゼンテーション、ワーキング・グループのプレゼンテーション、主催者及びパートナーに対する提言のまとめ及び承認
3.ワーキング・グループ・セッションにおいて、さまざまな問題、制約、案件及び将来の計画について討議がなされた。これは、総会最終日に可決すべき提言の作成/承認/修正を目的としたものである。これらのワーキング・グループは広範な分野をカバーした。すなわち、国の医薬品政策(必須医薬品リスト、医薬品支給システム)、医薬品の合理的使用、RDFsの運営に関するガイドライン及び手順、さまざまなレベルにおけるPHC/RDF委員会の機能及び役割、地方における保健チームの管理能力、医療の質、コミュニティーの参加、費用回収、資金管理、並びに要約したカントリー・リポートのその他の事項、及び目的から派生した問題などである。
 
ワーキング・グループは、以下の目的を達成するために結成されたものである。
1.参加を増やすこと
2.プロジェクトに関係する特定の分野に焦点を当てること
3.戦略及び責任の割り当てを含む具体的提言の作成を促すこと
4.各国とプログラムとの間に、豊富な情報交換を推進すること
ワーキング・グループの具体的目的は、次のとおりである。
1.以前の報告書及び配布資料から、グループに割り当てられた分野に関する案件、制約及び問題の検討及び見直し
2.グループが希望している案件、制約及び問題の取り組みにつき、簡単に優先順位をつけること
3.配布資料に記載された中心問題を使って、優先的案件、制約及び問題についての討論の実施
4.配布済のフォーマットにしたがい、上記の優先的案件、制約及び問題に関する提言の作成
5.総会において、ワーキング・グループの提言及び報告の提示
 前記の目的を達成するために、参加者は以下の分野を包含する4つのグループに分けられた。
1.コミュニティーの動員、コミュニティーの教育及びPHC/RDF委員会等を含むコミュニティーの参加
2.国の医薬品政策、基本的医薬品リスト、医薬品情報システム等を含む医薬品の支給及びロジスティック
3.RDFのガイドライン及び手順、在庫管理、会計及び資金管理を含むRDFの機能及び運営
4.活動を監督、モニター、計画化、実施、調整するためのさまざまなレベルの保健チームの管理能力の強化、及び質の良い医療を提供するための訓練
 
 各グループはガイドライン(注3)、一連の質問、案件、制約及び問題に関するリスト、並びにWHO医薬品アクション・プログラム、地域事務局及びユニセフの作成したその他の配布資料を与えられた。各グループのリポートの要約は、この報告書に添付されている。
 
(現在までの進展)
 RDFプロジェクトが成功するためには、いくつかの要素が備わっているか、又はRDFの設置において、少なくともそれらの要素を考慮しなければならない。これらの要素は簡単な説明と共に、以下に記載した。持続可能なRDFの開設に関して参加国の進展を示すために、マトリックス・フォーマットを用いた。
 
(RDFプロジェクトを開始するための中核部分)
1.国の医薬品政策。これには立法及び規則、医薬品の登録及び許可に関する規制、費用及び価格、さまざまなレベルにおける処方及び調剤に関する規制、医薬品及び調合薬の選択、支給、品質の保証、医薬品回転資金の運営、人的資源及び開発のニーズが含まれる。
2.必須医薬品リスト(EDL)、及び一定間隔でEDLを見直し、改定するための明瞭な方法。
このリストには、すべての医療レベルにおける医薬品及び調合薬が含まれる。
3.国の処方書(薬局方)。これには、医薬品及び調合薬に関する説明、並びに各薬剤の調剤及び処方に関する説明が含まれる。
4.医薬品の支給に関し、利用可能な財源を検討するための方法。これには、必要な医薬品の総数及び費用を見積もる方法、並びに医薬品購入に必要な外貨の予測が含まれる。
5.医薬品及び調合薬の支給システム。これには保健サービスの各レベルにおける調達、保管及び在庫、請求、分配、記録及び会計が含まれる。
6.市販の医薬品及び製品、好ましくない反応、及び医薬品の使用をモニター、評価するための医薬品情報システム。
7.妥当な、質の良い医療サービスを提供するために、地方、地区及び保健施設のレベルにおける保健チームの管理能力の強化。
8.コミュニティーの参加。これには、RDFの実効的な共同管理及び監督のためのコミュニティーの組織及び管理技術が含まれる。
9.RDF及び保健サービスの監督、各国の保健問題、関心及び能力に従い、基礎研究(注4)及び保健システムの研究(注5)を考慮すべき研究開発の方法。
 
 表1は、それぞれの参加国におけるRDFsの設置に関し、現在までの進展を要約したものである。これらは、カントリー・リポート及びプレゼンテーションで発表されたデータに基づいて作成した。1995年10月現在における様々なプロジェクトの(リポートに基づく)進捗状況である(注6)。
 
 コミュニティー・レベルでの医薬品回転資金は、RDFの管理、及び資金の利用を確保する上でコミュニティーの参加を促すことを目的としている。これは、RDFのコンセプトに対する理解の程度、並びにRDFがコミュニティーのものであるという意識がどれほど強いかに依存している。またコミュニティーにおける企業家精神も重要な要素である。
Table. Progress of the Various Projects as of October 1995, Derived from the Reports Provided1
Country Research & Development Supervision of RDFs National Drug Policy Essential Drug List National Formulary Financial Resources
Vietnam ++ +++ +++ ++++ + +++
Nepal +++ ++   +++ ++ +
Myanmar ++ +++ +++ ++++ ++++ ++
Mongolia + ++ ++++ ++++ ++ +
Laos ++ ++++ +++(?) +++ ++ +
Honduras + ++(?) +++(?) ++ ++ ++
Guatemala + ++ ++ ++ +++ ++
Peru + ++ +++(?) ++ ++ ++
Ecuador + ++ ++ +++ +++ ++
Country Supply System Drug Information System Management Capacity Community Participation Ranking (Total+s)
Vietnam +++ ++ ++ +++ 2(27)
Nepal +++ +++ ++ ++ 3(24)
Myanmar ++ ++ ++ +++ 2(27)
Mongolia ++ ++ +++ +++ 3(24)
Laos ++++ +++ +++ +++ 1(28)
Honduras ++ ++ ++ ++++ 6(20)
Guatemala +++ ++ ++ +++ 4(22)
Peru +++ ++ +++ ++ 1(28)
Ecuador +++ ++ ++ +++ 5(23)
+ not included in the plan
++ has been included plan
+++ is being developed or revitalized
++++ is in place and operational
? based on inadequate information
1The grading and rankings are very subjective and are based only on reports submitted to the conference. The table will be revised whenever additional information becomes available.
 ベトナムでは、ドイモイ(刷新)政策によって登場した市場経済により、地域の企業家精神が急速に発展し、RDFの成功との関連でさい先の良いものとなっている。現在、コミューンの20%はRDFプロジェクトを通じてRDFを実施中である。プロジェクト開始から6か月経過した現在まで、これらの医薬品資金は維持され、その多くは増大しており、中央政府はMOH(保健省)の監督を改善するために、コミューン・レベルにおいて最低3名のヘルスワーカーに対する給与の支払いを命じた。
 同様にラオス及びミャンマーも、市場経済への移行によって生じた地域の企業家精神にRDFアプローチが合致することを示している。最高レベルから、このイニシアティブを支援するという政府の反応は、初期診療サービスを強化する上でこのアプローチが適切であることを示している。
 少なくともこれらの3か国から、次のことが明白に示されている。すなわち、RDFは、地域の経済に活況があり、かつ成長している環境において成功する傾向が見られること。また国の政策の政治的ないしはイデオロギー的表現としてだけでなく、実際問題として、コミュニティーがすでに自らの経済発展に参加していることから、RDFを維持できるのである。
 RDFの設置において、保健チームの基本的な管理技術の大幅な向上、及びコミュニティーがRDFを共同管理できることが必要である。カントリー・リポートで見られるように、保健チーム及びコミュニティーの相互作用の範囲は、一方では、RDF委員会(コミュニティーの代表が置かれている)の監督を受ける資金の運営について保健チームが日常管理しており、他方、地方行政機関を通じてコミュニティーが直接資金を管理し、日常の運営をMOHに委任している。
 また、RDFは、国の医薬品政策及びEDL(必須医薬品リスト)の作成ないしは改定に刺激を与えている。いくつかの国は自国の医薬品政策及びEDLの見直しを開始した。またRDFは、実施レベルにおける保健サービスの機能的統合に寄与している。多くの国で、RDFはさまざまな方法により実施されているものの、いくつかの共通の懸念及び問題が存在している。多様なRDFプロジェクトを通して、それらの問題を以下のようにまとめることができる。
1.コミュニティーの参加は主として、RDF/PHC委員会に代表を送ることによってなされているが、大部分の国において、同委員会はMOHまたはNGOスタッフにより支配されていること。
2.会計及び報告のフォーマットは、各国間、異なったコミュニティー間、及び地区間で標準化されておらず、進展に関するモニター、監督及び比較が困難であること。
3.基本的医療のニーズを満たすための医薬品の購入に関し、多くの国は何らかの理由により資金を配分せず、また外貨利用に制限を課していること。一部の場合、国はこれらの資金を交付できない状況にある。これは、医薬品の調達及び分配に関するすべての支出が厳密に正当化されておらず、国の計画局及び財政当局との協力関係が密でないことによるものである。
また十分なデータがないことは、特にかような支出が限られた外貨準備と関係する場合に、当該支出を正当化する試みを阻むことになる。
4.RDFの設置において、ほとんどの国では、特にMOH、政府一般、地区及び地方レベルで、管理システムに基本的弱点が露見したこと。またロジスティックの管理に対する影響の観点から見た場合、際立った点は、国の会計及び財政管理に弱点があったこと。この結果、RDFの有効な機能に直接影響を及ぼしている。
5.日本財団の期待に一般に応えて、RDFプロジェクトは医薬品を支給するものの、多くのプロジェクト計画書は、プロジェクトの実施及び定期的モニタリングに関する明確なプロジェクト管理の枠組みを欠いている。
6.MOHを代表するヘルスワーカーとコミュニティーとの間に依然として、大きなギャップがあり、中央集権的な国における相互作用は名目的な、形だけのものとなっていること。コミュニティー及びコミュニティーの組織は、実は参加よりも、むしろ従うことを期待されている。
7.国民健康保険は一般に名ばかりで、往々にして管理が不十分である。一部の国では、国民健康保険は無料の医療を偽装しようとするものである。というのは、健康保険料は政府が支払い、公務員が一部負担するからである。この制度は公の部門及び給与所得者のみをカバーする傾向にあり、弱者グループは除外されている。資金不足及び支払いの遅れは一般的で、これらは在庫切れや障害の原因となっている。また、政府が大規模な国民健康保険計画に取りかかる時期があまりにも早過ぎる傾向が見られ、好ましくない影響をもたらしている。というのは、健康保険制度の有効な管理に必要な細心の管理という負担を引き受ける上で、実施レベルにおける管理基盤が強力でないからである。段階的アプローチは必ずしもパイロット・プロジェクト・ベースで行う必要がないものの、このアプローチは、地方ないしは全国レベルに移行する前に周辺レベルでの管理能力を強化させることになろう。
8.多くの国の医薬品政策において、以下の分野に関する取り組みが不十分である。例えば、立法及び規則、医薬品の登録及び許可における規制、費用及び価格、異なったレベルにおける処方及び調剤の規制、医薬品及び調合薬の選択、支給、品質保証、医薬品回転資金の運営、人的資源及び開発のニーズ、特許、商標及び一般名、医薬品の適切な使用、自己投薬、保健教育、モニタリング及び評価、財源を見つけ出すこと、研究開発、各国間の技術協力などである。
 
 前述の会議で、上記の多くの問題や懸念について取り組んでいるものの、以下のことに留意する必要あるとの提言がなされ承認された。すなわち、RDFが初期診療の改善に役立つようにするには、スタート時点から、プロジェクトにRDFが設置される環境を含めなければならないことである。このことは、持続可能なRDFの必要条件として前に列記したすべての要素を、設置において満たすべきことを意味しない。その意味するところは、もし政治家や国際的ドナーの歓迎する素早いが、しかし短命のサクセス・ストーリーに終わらせないためには、これらの要素を考慮する必要があり、これらの分野で見られた進展とのつながりを、計画及び管理の枠組みに含めなければならないことである。RDFがコミュニティーに帰属し、共同管理及び維持されるとするならば、RDFの設置は能力形成に関わるため、時間がかかることになる。
 ガイドライン及び手順の観点から見た場合、RDFの設置は比較的みじかい時間的枠組で達成されるかもしれない。しかし、共同管理及びコミュニティーの監督という意味でのコミュニティーの参加、並びにコミュニティーと協同すべく、さまざまなレベルの保健チームの管理能力を強化するためには長い時間を要し、プロジェクトの時間的枠内に含めなければならない。
 検討する必要のあるもう一つの分野は、利用者の負担である。利用者負担、例えば、さまざまな料金、費用回収、コミュニティー・ファイナンス、及び種々の費用分担は、保健部門における政府支出が縮小される中で、医療サービスを賄うための主要な方法のひとつとして現在も見られている。しかし、利用者負担の方法のひとつであるRDFが、途上国の農村地域において持続可能になるためには、慎重に検討しなければならない幾つかの議論がある。ちなみに途上国では、世帯がその所得の相当な部分を民間医療に支出しているにもかかわらず、財源不足となっている。これらの議論のいくつかは(注7)、以下に列記されている。
・ 利用者負担により、国民全体をカバーする基本的社会サービスへの政治的支持を危うくするかもしれないこと。
・ 利用者負担は、制度上の能力、分散化/分権化、及び政府の支持を要するものである。
・ 利用者負担は、特に貧しい人々や弱者においてサービス利用の減少を招く可能性がある。
・ 性差、季節変動及び地域的経済格差により、利用者負担は公平の点に悪い影響を及ぼすかもしれない。
・ 特例なしの利用者負担は、相当な不公平につながるかもしれない。しかしながら特例措置はうまく機能していないように思われ、その実施費用は高くつくものである。
・ 利用者負担はコミュニティーによる所有の意識を高めることができるとは言え、共同管理は効率性、実効性ないしは公平を常に保証するものではない。
・ 財源の動員に関する利用者負担の可能性は一般に小規模の投入に限られており、誇張すべきでない。
・ 負担能力と支払い意志との間に大きな違いがあるため、支払い意志は、利用者負担について評価する場合の唯一の根拠とすべきでない。
 
(提言及び将来の方向)
 報告書の他の個所に含まれている提言は、前記の多くの問題や懸念と綿密に取り組んでいる。またそれらの提言は、RDFの制度化及び持続可能性への支援と共に、初期診療サービスを強化し、より有効なものにする上で重要な他の部分の形成を促すためにRDFを利用することについての、参加者及び関係機関のコミットメントを示している。これらの提言の価値、そして会議全体の価値は、提言がすべての関係当事者によって実施される程度如何にかかっている。
 コミュニケーションの増大、頻繁な見直し及び評価、国内及び各国間のプロジェクトの定期的、継続的モニタリングを通じて情報交換するための方法を編み出すこと、並びに継続的技術支援を促進する必要があり、これらは、一団となったプロジェクトの特色とならなければならない。これにより、プロジェクトの経験が生かされ、学んだ教訓を、実施レベルにおける医療サービスの提供に影響を及ぼす決定者に広めることができよう。十分な人的、金銭的及び物的資源は上記の達成に向けるべきであり、また政府や機関は、初期診療強化のための主要な戦略として、RDF設置のために強いコミットメントに応えなければならない。
 
注1 WHO、「必須医薬品 - 公平のための措置」、WHO/DAP 92年5月
注2 日本財団がかかわることになった一連の理由につき、序論を参照
注3 各参加者に配布した「ワーキング・グループへの指示」に関し、付録を参照
注4 医薬品及びワクチンの臨床試験、薬理学及び毒没学研究、製造部門に関する工業研究、バイオテクノロジー、化学及び分子生物学、免疫学
注5 国の医薬品政策の影響、基本的医薬品の入手可能性、保健経済、行動研究、処方問題、医薬品使用の社会・文化的側面、自己投薬及びサービスの利用についての測定
注6 グレーディング及びランキングは非常に主観的なもので、会議に提出されたリポートに基づくもの。追加データを入手次第、上記の表を改定する予定。
注7 ユニセフ(1995年)「基本的社会サービスに向けた利用者負担」に関する社会政策分析局の内部覚え書、ヤン・ファンデムーテレ








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