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 その中で、日本の代表的、基本的な木造船の形を復元してある程度残していけば、一つの見通しを立てることができるのではないかと思われる。
 一方、すでに使われていないが現存している木造船を、出来ればその地区の博物館などに呼びかけをして一隻でも残せるような手立てを講じていくことも必要である。
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東北地方北部並びに北海道渡島地方を中心に漁船を収集し、保存展示しているみちのく北方漁船博物館(青森)
 船大工の技術の中で、大きな比重を占めるものに、船の図面(板図若しくは紙図面)の作成がある。板図は板に描かれた船の設計図である。船の図面には船大工の知恵が盛り込まれており、漁の種類や海の環境に対応した船型を知ることができる。ただ、船の図面は磯船などの小型船では作成されないことも多く、既存の資料も極めて少ない。
 そこで、全国の船大工の方々に、通常は船の図面を作らない小型船も含めて、自分が造船した各船種の板図、又は紙図面を新たに作成していただくことにより、これまでにない多くの船種、船型の基礎資料を収集保存することが可能となる。
 これらは今後、木造漁船を復元建造する際の、貴重な手がかりともなる。船大工がいて費用があれば舟は造れるが、問題はだれが記録して活用していくかということになる。その受け皿になり得る可能性があるのは地域の博物館だが、そのためには記録づくりのノウハウ・マニュアルが必要となってくる。
 また建造する場合、必ず一人ではなく若い後継者も一緒にということを条件にするのも一つの方法であろう。出来た船はどうするのか。どこかに展示することが重要だが、できればその船が使われていた地域の博物館などで、展示していくことが地域の歴史、文化を継承していく点からも望ましい。
 実測して木造船を残すということは完全な形では難しいかもしれないが、ボランティアを集めて船を実測して図面化する講習会をやり、全国統一した方法で作成した図面を保存し、それに基づいて造られた模型を展示するという方法が考えられる。
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実体験に基づく話と和船の造船技術の実演:みちのく北方漁船博物館








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