セッション1 人を幸せにするケアの文化
「ケア」とは、他者の生に触れることで自らの生き方を見つめなおし、一人ひとりの生の意味を考える根源的な営みである。人と人のあいだに生まれる身近な営みとしての「ケア」を多様な視点から問いなおす。
パネリスト |
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佐藤 登美 |
(静岡県立大学看護学部教授・静岡ボランティア協会理事) |
若林 一美 |
(「ちいさな風の会」世話人・立教大学講師) |
色平 哲郎 |
(長野県佐久総合病院南相木村診療所医師) |
コーディネーター |
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森村 修 |
(法政大学国際文化学部助教授) |
佐藤登美 静岡県立大学看護学部教授(学部長)
さとう・とみ 順天堂看護専門学校卒、筑波大学大学院修了。静岡県立短期大学看護学科教授、札幌医科大学保健医療学部教授を経て、平成11年静岡県立大学看護学部教授、平成13年より現職。浜松市で1983年〜1994年「ひろ〜く“間柄づくり”をめざす研究会」という在宅ケアのためのボランティア活動を展開。著書「ケアの本質を知る−佐藤登美対談」(メヂカルフレンド社、1996年)では、立教大学教授の栗原彬さん、作家の石牟礼道子さん、対人援助職トレーナー奥川幸子さん等と対談し、現代社会のなかでのケアのはたらきについて問う。
<1>痴呆老人と学生の関わりから
<2>ケアのもたらしたもの
・期待して待つ気持ちから、見えてくるもの
・感じやすくなったこころに届けられるもの
<3>現代人が“いのちをとりもどす”とき、人間を回復するとき
若林一美 「ちいさな風の会」世話人・立教大学講師
わかばやし・かずみ 立教大学教育学専攻修士過程修了。デス・スタディ、ホスピスの研究に早くから取り組み、死に逝く人や残された遺族の人たちの心模様に耳を傾ける仕事をつづけるビリーブメント・ケア研究家。現在立教大学などで「死」や「グリーフ(悲嘆)」に関する講義やゼミを行っている。1988年にスタートした子どもを亡くした親の会「ちいさな風の会」に関わりながら、「死ははじまりの時」という思いを抱き、悲嘆のケアの必要性を説く。IWG(死と遺族に閲する国際会議)会員。Illness, Crisis & Loss ( Center for Death Education & Bioethics)の編集委員。著書に「死別の悲しみを越えて」(岩波現代文庫、2000年)、「亡き子へ」(岩波書店、2001年)など。
悲しみをとおしてみえること
BEYOND SORROW -Reflections On Death And Grief
<悲しみを癒す力は、悲しみを見つめるやさしさと涙のなかに>−この20年ほど、300人を越えるご遺族にお目にかかり、死別の悲しみについてお話をうかがってきた私の実感です。
愛する人を失ってもなお、生き続けなければならないとしたら、これからの自分は何を信じ、支えとすればよいのか。とくに14年前からは「ちいさな風の会」という子どもを亡くした親の会の世話人をしていることもあって、“時の流れ”に添いながら、ご家族と共に悲しみや喪失感に向き合うことがおおくなりました。
人は人を支えることができるのか。体験の有無、人と人との関係性を踏まえながら、「ホスピス運動」「グリーフ・ワーク」などに触れながら‘いのち’‘生きる意味’について、ご一緒に考えていきたいと思います。
毎日新聞 2001年7月23日(月)より