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ジョージタウンメディカルセンター・ロンバーディがんセンター
 
ワシントンD.C. http://lombardi.georgetown.edu
 
 ロンバーディがんセンターは、最新治療を行う総合がんセンターで、ここでは、患者のケア、リサーチ、教育、コミュニティ活動を行う。
 このがんセンターにある芸術と人文科学プログラム (Arts and Humanities Program) は、患者やその家族、介護者が、病気に対して創造的で前向きな対応をするためのプログラム、情報、教育、環境を提供している。
 年間2500人の患者が来るがんセンターでは、亡くなる人も多いため、約400人の医療スタッフへのケアも特に重視している。病院スタッフに対してアートのプログラムを行うのは、患者とのコミュニケーションを促進し、コミュニティをつくるため、そして、哀しみや喪失感に対応したり、ケアする役割から離れて楽しむ時間をもつためである。
 
■Artists in Residence (アーティストの訪問活動)
 さまざまな分野のアーティストが、パフォーマンスを披露したり、作品を展示したり、基礎レベルの講習を開いて教えたりする。
 病院内の展示のひとつに、あるアーティストが、がんを患った女性と一緒に、彼女が愛用していたペンダントやスプーンなどをもちいて制作したコラージュがある。この作品は、女性の亡きあと、夫を癒すことにつながったばかりでなく、全米各地で展示する機会を得て多くの人の癒しにつながった。
 
■Visual Art Workshops (ビジュアルアートのワークショップ)
 キルト、タペストリー、粘土、ステンドグラス、コラージュなどのワークショップを、患者や家族、病院スタッフに対して行っている。
 ケアする人は自分のことに関心をもてないことが大きな問題である。そのため、ワークショップへの参加を促すために、ケアする人が直面している問題についてのインタビューやアンケートをとり、ケアする人と一緒にアートによる問題解決の可能性について考えている。
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癒しのシンボルである水が流れるオブジェ
 
ワシントン・ベリースペシャルアーツ・アーツ・コネクション
 
ワシントンD.C. http://www.wvsarts.org
 
 「教育のなかの芸術 (Arts-in-education)」を提唱し、地域の障害のある青少年のために芸術教育プログラムを提供しているNPO。コロンビア地区で唯一、障害者に対してのマルチメディアのアートプログラムを提供している。
 14〜25歳の青少年で学習障害や自閉症などの障害のある人から希望者を募り、アートをとおして社会的なコミュニケーションや就職のための包括的な技術を学ぶ職業・生活訓練プログラムを中心としている。
 
■ART is the heART (アートは心)
 訪問看護協会と共同で行っているプログラム。ホームケア、ホスピスケアを受けている子どもたちとその家族をアーティストが訪問し、病気、障害、末期ケア、死と向き合う手助けなどをする。このプログラムによって、子どもをケアする家族が休息したり、子どもやケアする家族がアートを介して人とつながり、コミュニティに参加することにつながる。
 
・派遣プログラム:在宅、あるいは、ホスピスに、病気、障害、末期の状態にある子どもとその家族を対象にアーティストを派遣する。一緒に楽しいことをすることがノーマライゼーションにつながるという考えのもと、絵画や語り、人形劇などさまざまなプログラムを行う。
・アーティストのトレーニング:アーティストに対して2日間の集中的なトレーニングを実施する。参加者は、心理社会的なアプローチに基づいて、アセスメントの方法や関係づくり、安全性、死や死別に関する知識について学ぶ。また、インターンシップ(実習)をし、継続的なスーパービジョン(専門的な援助相談)とサポートを受ける。
・トレーニングプログラムの共有:それぞれのコミュニティで、アーティストがこのプログラムによって活動できるようになるために、トレーニングマニュアルを作成。また、トレーニングプログラムを実施するとともに、継続したサポートとしてアーティストからの相談も受け付けている。
スミスファームセンター
 
ワシントンD.C. http://www.smithfarm.com
 
 癒しのための芸術と科学について研究したり体験の機会を提供する非営利組織。がんとともに生きる人たちへの援助、医者やヘルスケア従事者に対するトレーニング、アートをもちいた癒しのプログラムを提供している。
 「癒しの力としてのアート (Art as a Healing Force)」というプログラムは、がんの患者に対して、病気になって経験した恐ろしい体験を、創造性・希望・自己発見・楽しみの体験へと転換するためにアートをもちいる一連のプログラムである。また、「アーティストの訪問活動 (Artists in residence)」は、地元のアーティストが病院でがん患者とともに活動するために、トレーニングを提供するプログラム。
 こうしたさまざまなプログラムをとおして、患者、ケアする人、アーティストという3つのコミュニティをつなぎ、それぞれの人たちの幸福に寄与することをめざしている。
 
■Living Well With Cancer (がんとともにより良く生きる)
 がんとともに生きる人、およびその家族などケアする人のための連続講座と体験活動。1週間に一度、2時間半の夜のセッションが4回行われ、参加者は、ヨガなど、自宅でもできるようなストレスをやわらげるための方法や、アートや詩による自己表現、がんや死についてのグループでの話し合い、食事などの生活スタイルの選択について学ぶ。
 このプログラムは、治療を求めるというよりも、精神面・身体面の両方の癒しを導くような人間の全体性に働きかける方法を紹介することに重点をおいている。
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Sand Tray (箱庭)
砂の上におもちゃを置いて物語を語る
 
フロリダ大学 CAHRE
 
 
 フロリダ大学にあるアートとヘルスケアに関する研究教育センター (Center for the Arts in Healthcare Research & Education:CAHRE) は、大学内における教師や学生、大学病院のケアワーカー、病院で活動するアーティスト、大学の内外のコミュニティなどの異なる分野を横断する研究の枠組みを提供している。
 その目的は、癒しの効果を高めるアートの利用についての研究・教育・トレーニングを推進すること、アーツ・イン・ヘルスケアをアーティストの職業として発展させること、そして、芸術と創造性をとおした健康的な生活スタイルを奨励することである。
 
■Days of renewal (生き返りの日々)
 CAHREのさまざまな研究や教育プログラムのなかでも、特にケアする人をケアし支えるためにデザインされたワークショップ。
 プログラムは終日行われ、午前は、ヨガ、太極挙、全身マッサージ、グループディスカッションなどが行われる。健康に配慮した昼食をとり、午後は笑いのワークショップ、瞑想、アーティストによる創造的なアートのセッション(絵画、コラージュ、言葉、音楽、ダンス、演劇など)を選択することができる。また、ケアする人の燃えつきや悲嘆、自己管理や相互作用 (team interaction) についてファシリテーターとともにグループで話し合う時間もある。








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