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発刊にあたって
 20世紀は大きな物語が作りだされた世紀だった。しかし、この大きな物語生成のかげで、人間の一人ひとりの哀しみや苦しみが押し殺されてきたのではないだろうか。
 私たちがこれから築く21世紀は、このような個別の哀しみや苦しみをすくいとり、一人ひとりが幸せになっていける社会にしていく必要がある。
 「ケアする人のケア・サポートシステム研究委員会」は、1999年4月に有志の委員が集まり発足し、介護を担う家族、ケアの仕事に就く人たち、ケアに関わるボランティアのそれぞれのニーズを明らかにし、どのようなサポートをすればいいのかを考えてきた。また、全国研究集会を開いて、哲学、倫理学、社会学、看護学等のさまざまな分野からの研究者と、医療や福祉などケアの現場に関わる実践者が、人間の本質的な営みとしての「ケア」について議論してきた。
 これまでの調査研究のなかで明らかになったことのひとつが、「セルフケア」をケアすることの大切さである。私たちが考える「ケアする人のケア」は、「ケアする人の幸せを他者にゆだねる」ということでもなく、「ケアする人自身の力でがんばりなさい」と放置することでもない。その人が本当にその人自身の力を発揮して生きていく「セルフケア」のあり方とはどのようなことか、また、それをサポートするために他者は何ができるのかということが大きなテーマであることがわかってきた。
 そこで、研究の成果として出版する2冊目のブックレットでは、「生きなおし」というキーワードで、「セルフケアのケア」について考える。そして、ケアする人、一人ひとりの生きなおしの物語に、どのように寄りそうことができるかを探る。
 本書をとおして、魂の触れあう交流がますます広がり、そして「ケアの文化の構築」に一歩ずつ近づいていくことをめざしている。
2002年8月
財団法人たんぽぽの家内
ケアする人のケア・サポートシステム研究委員会








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