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深海調査機器の開発
(1)有人潜水船「しんかい6500」「しんかい2000」
 これらの潜水船に付けられた数字は、それで潜ることのできる最大深度を表しています。これらは、共に専用の母船(「しんかい6500」の場合は「よこすか」、「しんかい2000」の場合は「なつしま」)により運用されています。下記の仕様で明らかなとおり、潜水船自体は、極めて重いものですが、周囲に多数の浮力材が取り付けられているために、いかなる場合でも水面で浮くような構造になっています。したがって、潜航の際には鉄のオモリを積み込んでその重みで沈み、海底に到着したらそれを引き放して中性浮力の状態で航行し、浮上時には、バラスト*1を排除して、浮力材の力で浮かび上がります。要するに、潜水船本体の動力や照明がバッテリーによりまかなわれているので、それを節約する知恵が生かされているのです。また、これらの潜水船は、外見上は比較的大きく見えますが、実際に人間が乗り込むスペースは、直径約2m程度の球(耐圧殻)の中でしかありません。この中にパイロットを含め3名が乗り込み、8時間前後滞在するのは、予想以上に大変なことなのです。しかも耐圧殻の中は、周囲の水温の影響をまともに受けるので、深度が1,000mを越えたあたりからは、防寒対策をとらなくてはなりません。中にはトイレは、ありません。以下に、これらの潜水船の概要を紹介します。
 
*1これは、船の浮力や傾斜を調整するために使われるもので、一般的には水(ウオーターバラスト)が多く使われますが、砂や鉄材(固定バラスト)が使われることもあります。

カッコ内 しんかい2000
しんかい6500・しんかい2000の仕様
全長 9.5
(9.3)m
乗員数 3
(3)名
2.7
(3.0)m
耐圧殻内径 2.0
(2.2)m
高さ 3.2
(2.9)m
通常潜行時間 8
(6)時間
空中重量 25.8
(23.2)t
水中速力 最大 2.5
(3.0)ノット
最大潜行深度 6500
(2000)m
   
◆「しんかい6500」の概要図
(拡大画面: 172 KB)
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 「しんかい6500」機器説明
前方障害物探知ソーナー 投光器の光の届かない、15m以上の遠方の障害物を音響的に探知します。これによって、対象物までの距離が判断できます。
投光器 海底は光が届かないため真っ暗な世界です。海底を観察するときに点灯させます。海域により異なりますが10〜15m先まで見ることができます。
チタン合金製耐圧殻 高い深度圧に耐える耐圧殻・耐圧容器構造の材料として、比強度が高く耐食性に優れたチタン合金が採用され、同時に三次元機械加工・電子ビーム溶接法を運用し、高精度真球に近い構造を実現しています。
ビデオカメラ/スチルカメラ 海底の様子を録画したり、写真撮影したりします。
マニュピュレータ 海底で採泥や岩石の採取及び観測機器の設置などを行います。
サンプルバスケット マニュピュレータで採取した試料や観測機器を収納します。
覗窓 乗船者が実際に海底を観察する窓で、厚さ約14cmのメタクリル樹脂(アクリル樹脂の一種)で作られています。
水平スラスター 船首を右方向及び左方向に回頭させることができます。
垂直スラスター 海底での上昇及び下降を行います。
主蓄電池 潜水船動力源となります。
油圧ポンプ 潜水船で使用する油圧機器を動かすため使います。
主推進器 前進及び後進を行います。また、左右80°動くため、舵の役目もします。
浮力材 ガラスの微少中空球を樹脂で固めたシンタクチックフォームを採用しています。
バラストタンク 水面では浮き袋の役目をしています。潜航するときは空気を抜くと海水が入ります。
音響測位装置 潜水調査船自身が自分の位置を確認する装置です。

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◆「しんかい6500」潜航地点と海域
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