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人体解剖学実習を終えて
 川畑 圭子
 初めに「医学・歯学」を目指す者の為に献体された方々、又、そのご遺族の方々に深く深く感謝したいと思います。
 座学で解剖学は覚える用語は確かに多いが、例えば血管や神経は身体のどこに集中しているのか、どのように分布しているのか、を平面図でしか見ることができません。そしてそれらを覚えたとしても、実際に「実習」で観察してみると、しばしば教科書で学んだものと異なっていて、生きていく上で使われる筋肉が人によって発達していたりそうでなかったりしていました。又、その筋肉にそれぞれ入り込んでいる神経、各臓器の特徴、臓器に直接流れ込む血管とその周りに存在する神経などについて、より理解を深めることができました。
 しかし、実習ではこれらのことと同時に、最も大切な「命の尊さ」を学びました。最初の実習時、確かに教科書のみの学習ではなく、実際はどうなっているのかをこの目で見たいと思うと同時に、本当に自分がやってしまってよいのだろうかと恐ろしさと不安の気持ちでいっぱいでした。そして、もし将来、コンピュータが医学の分野で臨床的に活用可能なくらいに発達することがあるとすれば、このような実習はいつか無くなってしまうのではないか、とふと考えました。しかし、本当にそうなってしまったならば、きっと人は患者=モノとして捉えてしまうような気がします。きっと「命の尊さ」が学べなくなってしまうと思います。これからも更にコンピュータは発達するでしょうが、私は絶対にそれから学ぶことは無理だと思います。
 「命の尊さ」を学ぶことができたのは、献体された方々、そのご遺族の方々からだと、心から感謝しています。








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