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解剖学実習を終えて 第23集 学生感想文集

 事業名 篤志献体の普及啓発
 団体名 日本篤志献体協会 注目度注目度5


解剖学実習を終えて
 倉部 慶子
 今、三カ月間の実習を終え、果たして最初の黙祷のとき誓ったことが守れたかどうかを省みます。これから後一カ月、解剖学実習は続きます。その間、そして実習が終わってからも、ご遺体の方に、私はあの誓いを守れていますか、あなたの望んだような医師になれていますかと問い続けていくでしょう。
 解剖学実習の初日、ご遺体を前に一分間の黙祷がありました。人体の構造を、実際に自分の目で見、手で触れることができるという期待感で逸る心を抑え、私はこの黙祷の時間にご遺体に話しかけました。「献体をしてくださりありがとうございます。これから解剖実習が始まります、四カ月間よろしくお願いします。間違いのないように作業をし、完全に理解し、決して忘れません。あなたの善意を無駄にしないよう、しっかりと勉強することを誓います。そして患者さんから信頼される良医に絶対になります」
 ご遺体と向き合う厳粛な時間は一分間では短すぎました。この後で拝したご遺体の顔を私は忘れることができません。とても安らかなお顔でした。この方はどのような人生を送り、どのような家族に囲まれ、どのような考えを持っていらしたのか、ということを考えました。この方が生前にどうして献体登録をしてくださったのかを思うと、解剖実習の時間もこの方の人生の一部なのだと考え、身が引き締まる思いでした。
 いざ解剖実習が始まると、興奮と感動の連続でした。毎日新しい人体の構造に触れ、回を重ねるごとに人の体というものはなんと精巧にできているのだろうという感動を覚えました。ときに学ぶべきことの多さに忙殺され、手引書にあるように人体は確かにそうなっているということを確認するに留まってしまうこともありました。しかし、なぜ人の体はこんなにも複雑にできているのだろうと後でゆっくり考えてみると、勉強はさらに興味深いものとなりました。なぜ、人の体は同じ器官でありながら変異があるのか、この配置の意味は、この器官は何の名残か……。あらゆる器官、どんな些細な組織にも意味があり、役目があり、決して不必要なものなどないのだと実感しました。
 実習が進むにつれ、解剖という修復できない作業が恐ろしいものだと感じるようになりました。筋肉を横に切断したら、もうこの筋肉は全体として収縮することはなくなるのだ、ご遺体にとってなんという被害だろう、そう考えるとその作業をしたからにはその筋肉のことを完璧に理解し覚えなければと思いました。実習を通して、知識の他に、このように体になにか処置をするということの重大さと、それに対しての責任を学びました。
 今までのカリキュラムの中で、医学は机上の学問ではないと一番強く感じたのは解剖学実習でした。本に示されるのは一般論に過ぎません。ある人の体はある構造のパターンAと、別の器官のパターンBを持ち、またどこかに病気があったりして、すべての人が本とは少しずつ違った体を持っています。人体の模型や図入りの優れた図書があっても、人体解剖学実習は必須だと思います。それはすべての構造が本に示されるものと同じという人はいないし、これから出会う患者さんもみんな違う体を持っているからです。私たちがこのような貴重な実習をすることができたのは、献体をしてくださった方、それに同意してくださったご遺族の方々、先生方のおかげだと心から感謝しています。これからも良き医師になるために努力を怠らず、皆様の厚意に答えられるようにしたいと思っています。








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