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解剖学実習を終えて
 法月 良江
 専門教科を習い始める二年後期、それと同時に医療人としての自覚も確かになっていく二年後期から約一年弱の間に、実際に人の体に触れ、見ることのできる解剖実習が経験できたことは、とても有意義だったと思う。
 まさに「百聞は一見に如ず」という言葉の通りだった。紙面で見るのとは全く違っていた。感触、厚み、強度、太さ等を実感できるのはもちろんのこと、臓器、血管、神経、筋肉、骨……様々な器官が一つの体の中で、意識的に、あるいは無意識的に関連して適切に働くことで“生命″というものが成り立っているということを、体で感じることができた。
 しかし、解剖実習中は、御遺体との格闘だった。教科書とは違い人それぞれ何らかの違いをもっていて必ずしも同じ場所に同じ様にあるとは限らないのである。その上、当然ながら全くの初心者なのでメスやピンセットの扱い方、班の人とのチームワーク等、全てがスムーズに進むわけではなかったが、目の前の御遺体から自分が学びとれる限界まで全てを吸収しょうと必至だった。
 その中で、体の不思議さ、生命の力強さ、偉大さ、尊さのようなものを御遺体から教えていただいた。目の前にいる一人一人が尊い命を持っているということを一人の人間として心に留めておかなければならない。
 この実習を通して得たものを今後につなげていくことが、御遺体、遺族の方々への何よりの供養だと思う。
 最後に御遺体、遺族の方、この実習を支えて下さった方に感謝し、故人のご冥福をお祈りいたします。








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