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解剖学実習を通して
 渡辺 朝香
 私は、この解剖学実習を通じて、人の体を知るという基本的で最も重要な事を、自分の目や手で実際に触れることで体験できました。
 人間の体は、細胞一つのDNAの違いから始まって、神経の分布の違いまで何一つ同じものはなく、それだからこそ、その違いから学びとれることがたくさんあることを知りました。本にのっている絵や写真はある典型的な一つの例でしかなく、そこから自分の頭を使って考える必要がありました。それは、私達がこれから一番必要とされる能力であり、自分で考えて応用していくことは医者になる時に最も大事であることのように思います。私が実習中に解剖していく過程で出会う事は、すべてが初めて見るもの、触るもので、それに対する驚きもたくさんありましたが、私が学んでいく一つ一つのことが、人体の中で関連性があり、それらは発生における段階から、互いに作用しているということに驚きました。神経の分布、走り方でも、意味のないものは一つもなく、何かを補っていたり、互いに合わさったりすることで様々な変化に対応していることがわかりました。内臓でも、発生段階から順を追って考えていけば位置や血管分布などもおのずとわかってくるもので、臓器は個々で存在しているものではないことも知りました。だから、基本的な部分をしっかり把握することはすごく大切で、そこからは自分の頭の中で動かし、考えていけば、結論は出てくると思うし、導き出せる結論も数多くなると思いました。これは、そのまま、私達の将来のことにもあてはまることで、基本的な解剖学で学んだ人体の知識をこれからいろいろな方向に応用していかなくてはいけないと思いました。
 私個人としては、「自分の頭で考えなさい。」という先生方の言葉が、今になって思うと、その通りだなと思って感謝の気持ちでいっぱいです。それと同時に、献体してくださった方々にも、献体を無駄にしないよう今後に生かしてがんばりたいと思うし、感謝したいと思います。








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