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7. 展望と問題点
 沿岸タンクバージ業界はOPA90のダブルハル要件により、シングルハル・バージが強制的に引退させられるため、今後、かなりの数の新造または改造を余儀なくされるという深刻な影響を被っている。沿岸乾貨物部門では、いくつかの主要業界で経済が低迷しており、コンテナ・バージ等の建造は短期的には鈍化するであろう。しかし、長期的には需要増が見込まれる。河川部門では、オペレーターは連邦政府の水路改善プロジェクト支出は、近代化の需要に追いついていないと不満を漏らしているが、今後も同部門の成長が期待される。
7-1 タンクバージのダブルボトム化要件
 
 OPA90により、5,000総トンを超える内航非ダブルハルタンカーの段階的廃止が義務づけられた。その結果、多数の既存の沿岸タンクバージは今後10〜15年の間に、代替建造もしくは改造が必要になる。図I-3に示すように、特に多数のバージが2004〜2007年の期間に引退を余儀なくされる。MarAdのデータによれば、OPA90により2004年には沿岸バージ27隻、計476,300dwtが引退させられる。その後3年間にさらに19隻の大型タンクバージ、計405,300dwtが引退することになる。これらのシングルハルの旧式バージの代替建造または改造は、米国造船所に相当の建造需要を創出すると期待されている。具体的なバージのフェーズアウト・スケジュールを表I-13に示す。
 
図I-3 OPA90による大型沿岸タンクバージの引退スケジュール
(10,000dwtを超えるバージ)
(拡大画面: 25 KB)
z0001_66.jpg
 
表I-13 OPA-90による大型沿岸タンクバージの具体的引退スケジュール
(10,000dwtを超えるバージ)
バージ名 総トン DWT 建造年 改造年
OPA-90 Phase-out Year 2002
KTC 115 6,430 13,173 1968  
OPA-90 Phase-out Year 2003
OCEAN 262 16,660 15,114 1956 1977
OPA-90 Phase-out Year 2004
B NO 115 6,411 17,014 1974  
B NO 120 7,912 17,890 1975  
B NO 125 6,411 17,014 1975  
B NO 130 8,151 19,414 1980  
B NO 135 8,488 15,422 1975  
B NO 155 9,262 18,944 1979  
B NO 160 9,844 21,995 1978  
B NO 165 9,262 18,944 1981  
BARGE 103 8,088 22,426 1971  
EVERGLADES 5,285 11,279 1971  
HATTERAS 5,197 11,501 1980  
KTC 135 6,247 15,241 1969  
HYGRADE 95 6,293 11,590 1967  
KTC 90 6,409 13,107 1967  
KTC 96 6,278 13,154 1969  
KTC 155 7,553 19,958 1974  
PENN MORANIA NO. 460 9,360 19,441 1973  
OCEAN STATES 8,897 21,664 1975  
NEW YORK 14,187 29,416 1969  
OCEAN 244 11,544 30,177 1971  
OCEAN 250 14,678 28,672 1970  
RTC 90 5,455 11,792 1980  
RTC 120 7,297 14,327 1970  
RTC 502 7,912 13,590 1976  
ST 85 5,323 10,251 1976  
ST 90 5,869 12,655 1972  
TIDEMAR 460 9,360 19,441 1973  
OPA-90 Phase-out Year 2005
B NO 140 8,151 19,414 1980  
BARGE 450-6 8,986 16,460 1981  
BARGE 450-7 8,986 16,460 1981  
FLORIDA 6,044 15,014 1980  
OCEAN 210 11,939 22,929 1981  
OCEAN 193 8,516 19,596 1980  
TEXAS 12,951 27,944 1980  
OPA-90 Phase Out Year 2006
B NO 175 9,262 18,944 1981  
BARGE 450-9 8,133 16,460 1981  
BARGE 450-11 8,133 16,460 1982  
FLORIDA BAY 11,083 20,866 1981  
SMT CHEMICAL EXPLORERI 17,026 41,108 1981  
TEXAS 6,044 15,014 1981  
VIRGINIA BAY 11,083 20,866 1982  
OPA-90 Phase Out Year 2007
MASSACHUSETTS 9,546 17,781 1982  
OCEAN 211 10,036 22,876 1982  
RTC 503 9,185 16,330 1982  
SCC 3902 18,671 39,976 1976  
SOUTH CAROLINA BAY 11,108 20,866 1982  
OPA-90 Phase-out Year 2008
MORANIA NO. 410 5,293 11,794 1979  
ST 114 6,925 14,397 1979  
OPA-90 Phase-out Year 2009
B NO 185 9,262 18,944 1987  
B NO 195 9,262 18,944 1989  
BARGE 450-10 8,914 24,260 1981  
ST 112 6,926 14,397 1979  
BARGE 101 5,498 14,969 1968  
OCEAN 215 12,176 21,664 1975  
OPA-90 Phase-out Year 2011
SMT CHEMICAL TRADERI 17,026 41,108 1981  
OPA-90 Phase-out Year 2012
GROTONI 22,947 45,618 1982  
JACKSONVILLEI 22,947 45,618 1982  
OPA-90 Phase-out Year 2013
BALTIMOREI 22,947 45,618 1983  
NEW YORKI 22,947 45,618 1983  
OPA-90 Phase-out Year 2014
B NO 35 4,761 11,632 1980  
B NO 65 3,965 10,791 1968  
BB 110 4,754 12,193 1978  
CAPE COD 9,514 15,150 1969 1986
CASABLANCA 5,533 12,247 1987  
KLAMATH 4,762 10,070 1989  
KTC 71 4,255 11,340 1975  
LEMON CREEK 5,533 13,608 1987  
MORANIA NO. 400 5,651 11,794 1977  
MOBILEI 22,947 45,618 1984  
PHILADELPHIAI 22,947 45,618 1984  
SPRING CREEK 5,533 13,608 1987  
TMI 17 4,224 15,876 1996  
TMI 80 5,160 12,247 1993  
BISCAYNE 4,725 10,886 1980  
B NO 95 4,981 11,693 1972  
B NO 105 4,981 11,693 1971  
ROCKLAND 4,179 10,510 1975  
RTC 105 4,642 11,716 1980  
S/R PORTLAND 4,150 12,969 1987  
WESTCHESTER 4,079 10,510 1975  
OPA-90 Phase-out Year N.A.
ACADIA 6,800 17,237 1997  
ATC 23 10,889 29,938 1978  
ATC 81 3,739 12,247 1993  
ATLANTIC 6,800 15,422 1995  
B NO 210 8,225 13,504 1995  
B NO 215 5,357 13,504 1999  
B NO 220 5,317 13,504 1999  
B NO 230 9,262 18,944 1993  
B NO 235 9,242 17,892 1995  
B NO 240 9,242 18,136 1994  
B NO 245 15,559 26,309 1997  
BARGE 450-8 (OSRV) 2 8,133 16,460 1981  
CARIBBEAN 6,800 15,422 1995  
CASCADES 3,184 10,155 1993  
DBL 151 8,672 19,995 1981  
DBL 152 8,672 19,995 1982  
IROQUOIS 6,917 12,969 1987  
KILCHIS 3,685 11,340 1996  
MARITRANS 192 8,325 22,974 1979 1999
MARITRANS 300 12,499 29,845 1979 1998
MARGARET SUE 6,139 10,669 1996  
OCEAN 400 26,521 55,844 1981  
OCEAN CITIES 12,094 28,062 1972 2001
PENNSYLVANIA 12,951 27,944 1980  
POSEIDON 7,022 15,241 1973  
RTC 135 8,198 15,876 1999  
S/R NEW YORK 6,336 18,053 1999  
S/R NEWBURGH 5,212 10,161 1972  
UDALLS COVE 5,533 13,608 1987  
YUCATAN 8,013 17,237 1998  
Z BIG 1 (OSRV)2 8,914 18,797 1981  
1) USCGと陸軍工兵隊によりタンカーとして分類されているITB(一体型タグ・バージ)

2) 石油流出回収船、OPA90のダブルハル要件の適用免除

出典: MarAd
7-2 主要コンテナ・バージ航路の景気の低迷
 
 東海岸―プエルトリコ、西海岸―ハワイ航路の両方は、ここ数年間、景気の低迷に悩まされている。これらの航路にはコンテナ・バージが投入されており、不景気により、短期的なバージやタグ等の新造、代替、近代化需要は大きな影響を受けることは間違いない。
 プエルトリコ海運市場のあるオペレーターは、「これ以上運賃を下げることは誰もできない」といっている。別のオペレーターは、この航路で運航している船会社は、どこも市況が回復するまで設備投資は不可能だ、と述べ、「この航路では何らかの統合があるだろう、また船会社は運航数を減らして効率を上げる必要があるだろう」と付け加えた。この航路の市況の低迷の結果、大手海運会社であるNavieras/NPR Line社は、チャプター11破産保護を申請し、もう一つの大手、Trailer Bridge社は、2001年第3四半期に2,000万ドルの売上げに対し490万ドルの赤字を報告した。Trailer Bridge社によれば、2001年の第3四半期に、前年同時期と比較してプエルトリコ航路の往路輸送量は10%減、復路輸送量は23%減であった。
 ハワイ市場はすでに観光低迷と全般的な不況の影響が出ている。2001年の1〜9月に、Matson社のコンテナ輸送量は前年同時期と比べて2%減、自動車輸送量は3%減であった。ハワイ航路の輸送量が減少した結果、同社は最近コンテナ船の1隻を西海岸―ハワイ航路から外している。
 一方、これもタグ・バージの主要航路である太平洋岸北西部―アラスカ航路は、主にアラスカ石油地帯の活動が活発化した結果、ここ一年ほどは好調である。当該航路の主要オペレーターであるCSXは、「今年のアラスカは上々であり、ノーススロープ油田の活発な活動と、これに伴う関係業界が好調であったため、3〜4%の成長が期待される」としている。
 マグローヒル社と米国商務省の予測では、沿岸ドライバージ船腹は、概ね今後3、4年間に年間1%増加すると見ている。この予測は約2年前に米国経済が後退に入る前に出されたものであるが、沿岸ドライバージ船腹は1990年代に年間約1.7%の増加を示しており、プエルトリコ航路、ハワイ航路で短期的な問題はあるものの、この長期的成長予測に影響を及ぼすような輸送パターンの根本的な変化は見られない。
7-3 河川輸送は緩やかな成長を継続
 
 過去10年間の河川輸送量には比較的変化がないが、マグローヒル社と商務省の予測は、今後3〜5年に年間1%の輸送量増加を見込んでいる。これは、東部産石炭の消費増が予測される結果、乾貨物輸送量の年間1.2%の増加が期待されるためである。一方、内陸タンクバージ輸送量は、電力会社が火力発電の燃料を油から天然ガスに切り換える結果、年間0.5%減少すると予測されている。石炭輸送量増加の根拠は、1990年大気清浄法である。当初、電力会社は硫黄含有率の高い東部産石炭に代えて、硫黄分の少ない西部産を利用することによりCAA要件に適合していた。東部産石炭は主としてバージで輸送され、西部産石炭は主として鉄道輸送であった。しかし、大気清浄法に従って、さらに厳しい要件が2000年に施行され、石炭発電所は基準に適合するために排気浄化装置を設置することが義務づけられた。新しい排気削減装置の導入により、電力会社は原料として再び東部産石炭を利用することが可能になり、その輸送には主にバージが使用される。
7-4 水路改善資金の連邦支出引き締め
 
 河川オペレーター組合である米国水路会議(National Waterways Conference)は、連邦政府が水路の維持、改善費用を十分に負担していないとの不満を訴えてきた。米国水路会議によれば、内陸水路信託基金の残額は4億ドルにのぼっているにもかかわらず、水路プロジェクトには「情けないほどに、十分な投資が不足している。」と主張している。同信託基金は、水路オペレーターに賦課された1ガロンあたり0.20ドルの燃料税の収益を受け取り、年間約1億ドルの税収がある。これらの資金は水路改善プロジェクトに使用されべきであるというのが、米国水路会議の見解であるが、余剰額が蓄積されているにもかかわらず、連邦支出提案では来年度の水路土木工事予算は14%減となる。米国水路会議は、水路に投資をしないことにより、鉄道やその他の輸送モードと比較した水路輸送の競争上の立場が不当に歪められる、と論じている。別の業界団体である、米国水路運航者会(American Waterways Operators)によれば、内陸水路システムの維持を怠ることにより、年間3億8,500万ドルの運航費が余分にかかっている。
 しかし、資金不足が実際にはバージ業界に有利に働いた事例が少なくとも1例ある。連邦政府支出の引き締めのため、デラウエア川の水路浚渫工事が中止となった。1992年に議会が支出権限を承認した同プロジェクトは、デラウエア川の河口からフィラデルフィアの間の水路を40フィート(約12.2m)から45フィート(13.7m)に掘り下げるものであった。同プロジェクトが進行していれば、Maritrans社はデラウエア湾におけるバージ事業の大部分を失うはずであった。水深が大きくなれば、タンカーが大量に油を積載したまま川を溯ることが可能になるからである。結果的に、この場合、水路改善資金不足によりバージ市場が維持されたことになる。








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