本セクションでは、米国の沿岸、河川でバージを運航する23社について概説する。これらの企業はバージ輸送部門では主要運航者と考えられる。

　

　同社は、東海岸及びメキシコ湾岸で石油製品の沿岸タグ・バージとタンカー輸送を専門にしている。同社はまた、デラウエア湾区域で原油と石油製品輸入のバージ輸送サービスを提供している。同社は現在、175,000〜380,000バレル(約27,800〜60,400キロリットル)のキャパシティのスーパーバージ11隻と、242,000〜265,000バレル(約38,500〜42,100キロリットル)のキャパシティのタンカー4隻を保有している。2001年の第1四半期に、同社の売上げは9,200万ドル、純収益は700万ドルであった。Maritrans社は手持ちのシングルハル・バージをダブルハル・バージに改造し、バージ船腹の更新を行っている。2000年8月に、同社は1,550万ドルで3隻目のシングルハル・バージのダブルハル化工事を発注し、2001年9月には4隻目のシングルハル・バージのダブルハル化工事を1,640万ドルで発注した。

　

　

　同社は1991年にマルコム・マクリーン氏により創設された。同氏は1950年代にシーランド・サービス社を創設し、コンテナ海運の創始者とされている人物である。Trailer Bridge社はバージ・ベースのコンテナ輸送サービスであり、東海岸−プエルトリコ間で定期運航を行っている。同社はニューアーク(ニュージャージー州)−サンファン間、ジャクソンビル(フロリダ州)−サンファン間の2航路で7隻の大型バージを運航している。このうち5隻は、トリプルスタック(三段積み)ボックスキャリアとして知られ、特別に縦53フィート(約16.2m)、横8.5フィート(約2.6m)のコンテナ213個の輸送用に設計された特別建造ユニットである。5隻はハルター・マリンのパーリントン造船所で建造された。残りの2隻は1984年に建造され1996年に250フィート(76.2m)のミッドボディを組み込む改造が施された。これらのバージは世界最大のトレーラー・バージと考えられている。2隻は48フィートまたは53フィート(16.2m)コンテナのいずれも輸送できるように設計されており、48フィート(14.6m)コンテナにして416個(または53フィートコンテナにして377個)の積載能力を有する。Trailer Bridge社の株式は公開されており、2001年の最初の9ヵ月間で売上げ6,200万ドルに対し、1,600万ドルの損失を報告している。同社は、プエルトリコ経済の低迷による輸送量の減少が赤字の原因としている。赤字続きであるため、運転資金の返済期日を完全に守れていないと同社が報告していることは、注目すべき点である。

　

　

　ルイジアナを拠点とする同社は、東海岸、メキシコ湾岸でタンクバージ17隻、タグ14隻を運航している。バージのサイズは、最大18,000dwtである。Hornback-Leevacは最近、アメラダ・ヘス社の子会社で、化学製品、石油製品の輸送サービスを提供していたSpentonbush/Red Star社所有のバージ9隻、タグ9隻を買い取った。Hornbeck-Leevac社はSpentonbushからの購入に2,800万ドルを支払った。取引の一環として、Hornbeck-Leevacはアメラダ・ヘス社の北西部における石油製品の独占的海運物流プロバイダーとなる長期契約を結んだ。

　

　

　同社は河川システムで約870隻のタンクバージを運航し、メキシコ湾岸、東海岸で大型乾貨物タグ・バージを6隻使用している。沿岸タグ・バージの積載能力は60〜70万立方フィート(約16,992〜19,824m³)で、タグは3,200〜5,600BHPのinstalled powerを有する。ここ1年間に、Kirbyは30,000バレル(約4,800キロリットル)級ダブルハル・タンクバージ17隻を内陸水路用に発注した。これらのバージの建造費の総額は2,600万ドルにのぼる。2001年の最初の3四半期に、同社は売上げ4億2,300万ドル、純収益2,900万ドルを報告している。同社は競争相手の買収により拡張戦略を取っており、2000年には河川バージ運航者の大手であるHollywood Marineを買収した。

　

　

　ペンシルバニア州を拠点とする同社は、五大湖でセルフ・アンローディング・バージ8隻を運航している。このうちPresque isleは、1973年に建造されたタグ・バージである。同船はリットン・インダストリーズで建造された一連の1,000フィート(約304.8m)級タグ・バージの先駈けとなった。144フィート(約43.9m)の当該タグは、ニューオリンズのハルター・マリンで建造され、975フィート(約297.2m)のセルフ・アンローディング・バージはローレインのエリー・マリンで建造され建造コストは3,500万ドルであった。リットンはエリー・マリンを所有しており、同造船所は五大湖セルフ・アンローダーの大型ミッドセクションの建造を専門にする予定であったが、1980年代に五大湖市場が崩壊し、リットンは当該市場向けの船舶建造から手を引いた。

　

　

　アメラダ・ヘス社の完全子会社である同社は、石油製品輸送用に6隻のITBを保有している。これらのITBは1980年代初めに建造された。ベツレヘム・スティールのスパロウズ・ポイント工場がバージ(ダブルボトム)を建造し、ハルター・マリンがタグを建造した。これらのバージは約48,000dwtであり、バージン諸島のセント・クロイ島にあるアメラダ・ヘス社の精製所から石油製品を東海岸へ輸送するのに使用されていた。オペレーターによれば、現在これらのITBは、東西海岸、メキシコ湾岸のすべての沿岸航路で運航されている。これらのITBは永久的に連結されている。

　

　

　同社は28隻のタンクバージと18隻のタグを、西海岸及びメキシコ湾岸の沿岸航路で運航している。バージの積載能力は20,000〜143,000バレル(約3,200〜22,700キロリットル)である。加えて、2隻のATBタグ・バージが過去2年間に引き渡された。それぞれ積載能力143,000バレル(22,700キロリットル)で7,200BHPのタグを使用する。3隻目のATBが2001年9月に発注された。このユニットはアラバマ造船所で建造され、積載能力は150,000バレル(約23,800キロリットル)となる。これらのATBの設計は、インターコンチネンタル・エンジニアリング・アンド・マニュファクチャリング・コーポレーション社が設計した特許取得の連結システムを利用している。この連結システムは、タグとバージを接続する独立してマウントされた2つのギア駆動ラム集成部品からなる。創設78年の同社は、家族所有会社であり、財務情報は公開されていない。

　

　

　同社は12隻の航洋ドライバルク・タグ・バージと3隻の船舶を運航し、主に東海岸とメキシコ湾岸で石炭を始めとするバラ積み貨物の輸送に従事している。タグ・バージのうち4隻がITB設計であり、110〜170万立方フィート(約31,152〜48,144m³)の積載能力を有する。これらのITBは1隻を除いて、すべて荷役装置はない。この他の9隻のタグ・バージは、牽引または、一般の押航型であり、積載能力は60〜140万立方フィート(1,699〜39,648m³)である。自航船のうちの2隻、Cynthia FagenとJudy Litricoは、荷役装置のないバルクキャリアであり、積載能力はそれぞれ160万立方フィート(約45,312m³)、120万立方フィート(約33,984m³)である。最近同社の持ち船に加わった3隻目のSheila McDevittは、荷役装置があり積載能力は160立方フィート(約45,312m³)である。年商23億ドルのエネルギー企業であるTeco TransportがGulf Coast Transitを所有している。姉妹会社であるMid-South Towing社は河川システムで約780隻のバージを運航している。

　

　

　五大湖の同社はセルフ・アンローディングITBを1隻運航している。同船は五大湖の米国所有ITB2隻のうちの1隻であり、もう1隻はPresque Isleである。46,290dwtのバージ、Great Lakes Traderは、2000年にハルター・マリンにより建造され、10,200BHPのタグ、Joyce L Van Enkevortは1997年にベイ造船により建造された。当該ITBの主用途は、五大湖における鉱石輸送であるが、時には岩石または石炭の輸送にも利用される。本ユニットの設計については、第4章でさらに詳しく説明する。

　

　

　この創設70年の会社は、西岸海沿いと、西海岸−ハワイ間でバージを運航している。所有船腹は11隻のデッキカーゴバージ、7隻のタンクバージからなる。デッキカーゴバージのサイズは4,300〜11,900dwtであり、タンクバージは28,000〜81,000バレル(4,500〜12,900キロリットル)である。ハワイ行き航路はオープンデッキバージを使った定期運航となっている。Sause社はまた、ロングビーチとメキシコのEnsenada間でコンテナ・バージを運航している。

　

　

　グリーンウィッチ(コネチカット州)を拠点とするMoran Towing社は、16隻のタンクバージ、6隻の航洋ドライバルク・バージ、9隻の内陸ホッパーバージを運航している。16隻のタンクバージのサイズは積載能力19,000〜250,000バレル(約3,000〜4,000キロリットル)であり、このうち7隻はダブルハル設計となっている。航洋ドライバルク・バージのうち3隻はもともとはロングアイランド・サウンドの発電所への石炭輸送用に設計されたもので、シングルハルで隔壁のないユニークな設計となっている。これらのバージは14,000〜14,700dwtであり、現在は沿岸航路及び外航で多様なバルク貨物の輸送に使用されいている。Moranは最近、これらのバージの1隻を使って、16台の機関車をブラジルに輸送した。同社は、船舶運航補助と曳航用に90隻をこえるタグを保有している。

　

　

　同社は東海岸、西海岸、メキシコ湾岸の全てで運航し、内航タンカー輸送、曳航サービス、船舶運航補助、オフショア支援サービスを行っている。60隻を超える保有船舶には、大型航洋タンクバージ、小型湾内バージ、沿岸輸送用及びオフショア工事用の各種デッキバージが含まれている。Crowley社はまた内航タンカーの大型船主であり、7隻を保有し、6隻を管理またはチャーターしている。同社は西海岸とアラスカで最大の石油バージ船腹を保有しており、主に125,000バレル(約19,900キロリットル)級のバージを使用している。デッキバージの規模は全長200〜400フィート(約61〜121.9m)であり、大型バージはしばしばメキシコ湾及びアラスカの石油、ガス部門の支援に使用されている。Crowleyは、東海岸及びメキシコ湾岸からプエルトリコ、西海岸からアラスカへのトレーラー・バージの運航も行っている。西海岸の一般貨物やコンテナ出荷にはシアトルにある15エーカーのバージ・ローディング・ターミナルを利用している。東海岸からのトレーラー・バージの運航は、主にジャクソンビルとポート・エバーグレード、メキシコ湾岸はニューオリンズから行われる。

　

　

　ニュージャージーを拠点とする同社は、全長85〜220フィート(約25.9〜67.1m)の多様な航洋、内陸バージを100隻以上運航している。さらに、30隻を超えるタグボートを使って、東西海岸で曳航サービスも提供している。しかし、同社の中核事業は海洋建設及び浚渫工事の請負であり、工事用として1,000〜5,000トンの積載能力を有するデッキバージを保有している。これらのバージのうち2隻は、オフショア・プラットフォーム・ジャケット用進水バージとして建造されたものである。

　

　

　コネチカット州を拠点とする同社は、バルク・アスファルトと石油製品バージを東海岸、メキシコ湾岸、ミシシッピ川で運航している。現在、同社の保有船腹は、タンクバージ18隻、タグ13隻となっている。バージは、1990年代後半に建造された4隻のバージ、Interconタグ・バージ連結システムを採用した関節連結式タグ・バージ(ATB)ユニットである。これらのATBのうち2隻は、バルク・アスファルト輸送用に設計され、18,000dwtの積載能力を有する。残りの2隻は、加熱石油製品輸送用に設計され、積載能力は150,000バレル(23,800キロリットル)である。4隻ともに、7,000BHPのタグを動力としている。

　

　

　ニューヨークを拠点とする同社は、20隻の大型タンクバージと17隻のタグを保有し、東海岸、メキシコ湾岸、西海岸における石油製品の配送サービスを提供している。同社はOPA90によるシングルハル廃止をにらんだ船腹の更新を実施しており、現在110,000バレル(約17,500キロリットル)級のバージ2隻を発注済みである。

　

　

　同社は、シアトルとアラスカの港の間でバージの定期運航を行っている。21隻のデッキバージと19隻のタグを運航している。バージ船腹は比較的船齢が若く、9隻は1990年以降に引き渡されたものである。最新のユニットは15,300トンの積載能力を輸し、デッキカーゴと鉄道貨車の両方を輸送する能力を有している。9隻のバージはコンテナ輸送用に設計されており、最大のものは700TEUの輸送が可能である。

　

　

　同社は西海岸−ハワイ間を運航する大手船会社である。同社は13隻のコンテナ船及びRO/RO船と、コンテナ輸送用の4隻の航洋バージを保有している。バージは全長345〜372フィート(約105.2〜113.4m)で、積載能力は最大6,800トンである。当該バージは、ハワイ州内の島嶼間を結ぶサービスで利用されている。Matsonを所有している株式公開会社であるAlexandar ＆ Baldwinは、2001年の最初の9ヵ月に8億3,400万ドルの売上げに対して、6,400万ドルの純収益を報告している。交通量が低下しているため、Matsonは最近、ハワイ−西海岸航路で利用していた船舶のうち1隻を休航とした。

　

　

　ニュージャージーに本社を置く同社は、東海岸と西海岸の港湾間、及び東海岸−バハマ間でバージの定期運航を行っている。コロンビア社は、水上フィーダー・サービスを提供することにより、国際海運会社の幹線輸送船舶が寄港しない港湾に対し、通しのBill of Landing サービスを提供することを可能にしている。同社は大西洋岸、メキシコ湾岸の11の港湾発着のフィーダー・サービスを提供する14隻のコンテナ・バージを運航している。ボルチモア、ノーフォーク、フィラデルフィアを結ぶチェサピーク航路は、週に4便運航されている。Columbia Coastal Transportは、10年以上にわたってフィーダー・サービスを提供しており、最近Hale Intermodalのバージ船腹を買収した。

　

　

　ホノルルを拠点とする同社は、ホノルルからハワイの他の島へのバージサービスを提供している。同社はバージ8隻、タグ5隻で、ホノルルから週12便運航し、一般貨物、自動車、冷蔵貨物を輸送している。同社は、4,700トンの積載能力を有するデッキバージ1隻も運航している。

　

　

　同社は米国内陸水路システムにおける乾貨物バージの最大の運航者である。同社は約5,100隻のバージと200隻の曳船を保有、運航しており、最新のデータによれば、ミシシッピ河川系/Intracoastal Waterwayで年間7,000万トンの貨物を輸送した。ACBLは買収による拡張戦略を取っており、過去20年間に、Peavey Barge Lines、Brown Water Towing、Superior Barge Lines、National Marine、Conti、Valley Lineと次々と主要競争相手を買収した。しかし、ここ2年間の財務報告は、あまり芳しいものではなく、2001年の最初の3四半期には、5億7,300万ドルの売上げに対して2,200万ドルの損失を出している。

　

　

　同社は、河川バージ会社の大手であり、1,800隻を超えるバージと62隻の曳船をミシシッピ河川系で運航している。典型的河川バージとして、同社の有蓋乾貨物バージは積載能力1,400〜1,700トン、全長195フィート(約59.4m)、型幅35フィート(約10.7m)、喫水9フィート(約2.7m)となっている。デッキバージは、1,300〜1,700トンの積載能力を有する。無蓋乾貨物バージは積載能力1,400〜2,200トンであり、全長195フィート(約59.4m)または200フィート(約61m)、型幅35フィート(約10.7m)、喫水9フィート(約2.7m)となっている。同社は、石炭、穀物、肥料、砕石、鉱石、合金、鉄鋼製品、ケミカル等の幅広い種類の乾貨物を輸送している。姉妹会社である Ingram Materialsはコンクリート用砂、砂利生産の大手である。

　

　

　2,400隻を超える河川バージを保有する同社は、米国における第二のバージ運航者であり、乾貨物輸送という点からは最大のオペレーターである。同社は、年間5,000万トンを超える石炭、穀物、鉄、鉄鋼、鉱石、その他の乾貨物を輸送している。Midlandの歴史は1925年に溯り、Ohio River Companyとして創設された。それ以来、同社は8社の大型競争相手を買収して、現在の体制となった。Midlandはバージ船腹の拡充、近代化を行っており、過去5年間に750隻の新たなバージを購入した。同社は乾貨物バージのみを運航している。

　

　

　同社は太平洋岸北西部における大手バージ運航者であり、乾貨物バージ70隻、タンクバージ50隻をコロンビア川とスネーク川で運航している。同社は、ワシントン州バンクーバーに本社を置き、創設は1932年に溯る。当初は、内陸部から沿岸港への小麦の輸送に重点を置いていた。やがて、Tidewaterの事業は各種ドライバルク貨物のバージ輸送、河川コンテナ・フィーダー・サービス、石油製品の配送に発展した。Tidewaterはまた、オレゴン州ポートランド近郊に、2,100トン級ドライ・ドックと船台を備えた独自の造船所を有している。