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タックス・トランスファー裸用船
裸用船は、船主が運航者に船舶を賃貸または用船する長年の慣行である。この慣行は、海運業界には投資家/船主と運航者という2つの別個のグループが存在するという事実から発生したものである。投資家は資産の所有に関心があるが、その運航には必ずしも関心はない。運航者は資産の所有には関心がないかもしれない。
 
既存のカナダの政策は、一つの分類のグループ、つまり船主/運航者を優遇するものである。そのため、広く利用されている裸用船の慣行が妨げられており、多数の投資家がカナダ船を購入し、業界を活性化する均等な機会を奪われている。
 
手近な問題は資本コスト控除(CCA)である。現行の造船政策は、カナダ建造、カナダ所有船に、33.33%で4年間という魅力的なレートの直線的減価償却を認めている(購入年には半年規則の対象となる)。大きな足かせとなっているのが、船主と運航者が一致しなければならない点である。これは、素晴らしい優遇税制であるが、残念なことに利用できる者が限られている。カナダの多くの運航者は、このような条項を利用できるような財政状態にはない。
 
債務支払コストのために船舶を購入して初期の期間の利益は少ないのが海運業の常である。カナダでは、運賃の問題もある。初期の債務支払コストを最小限に抑えない限り、船主/運航者のキャッシュ・フローは逼迫し、CCAを利用する立場にはない。加えて、船齢が進み、適当な利益マージンを生み始める時期まで、新たな購入は奨励されないことになる。資本コスト控除を利用するだけの財力があるが、船舶の運航には関心のない投資家もカナダに存在する。CCA控除は、造船産業を助けるために利用できる人が使えるようにしなければならない。
 
上記のCCAを利用するうえでの制限に加えて、所得税法で加速CCAにより債務支払コストが低くなることの恩恵をリース契約を通して運航者に譲渡することが禁じられている。
 
上記の制限の対象外となる製品
■ 乗用車、バン、ピックアップ・トラック、高速道路の貨物輸送用トラック又はトラクター、当該トラック又はトラクターにより通常の運行状況により貨物輸送する、または輸送されるために設計されたトレーラー
■ 船舶係留スペース
■ 鉄道車両
 
海運業の直接の競争相手(トラック、鉄道車両)はCCAの恩恵をリース契約により、譲渡することが認められている。カナダ製造要件はない。トラックのCCA控除は定率ベースでトラクター40%、トレーラー30%、鉄道車両13%である。カナダ建造船も対象外製品に含まれるべきである。カナダ造船業は国際助成に祟られ、米国市場からは締め出されており、国内政策によりこれ以上不利を被るべきではない。
 
資本商品の購入を助けるもう一つのオプションは、米国レベレッジ・リースである。同協定では、米国投資家(貸し手)は、運航者(借り手)に低い負債支払コストという形で、大幅な節税の恩恵を譲渡できる。これは、カナダ運航者が航空機購入のための融資を受ける際に特に効果的な方法であった。
 
連邦政府と州政府は、法人税について共通の税制を採用していることを指摘しなければならない。その結果、CCAについてのこれらの優遇税制は、その3分の2が連邦政府により、そして3分の1が州政府によりシェアされる。
 
航空機、鉄道車両、自動車は上記の優遇税制の恩恵を受けている。この措置を船舶にも適用すべきだという強い議論も存在する。2000年6月15日に、財務省税制政策局上級チーフであるGerard Lalondeは、「この条項のいくつかの例外は、特定の産業に特有の問題に対処するために、または経済の低落に相対してCCAレートは加速されないという認識において、提供されたものである」と述べた。ジョーンズ・アクトや広範な助成慣行を目の当たりにすれば、造船産業は明らかに後者に当てはまる。
 
表4及び表5は、現行規則に従った外国船舶の課税猶予(定率法による15%の減価償却)と、提案されている税制改革によるカナダ建造船の場合(直線法による年間25%の減価償却)の影響の比較である。カナダ船のコストを1億ドル、人件費を45%とすると、提案されている税制改革によれば、さらに2,120万ドルの課税猶予となる。しかし、900人分の新規雇用は、最初の2年間で個人所得税として1,800万ドルの税収を生む。5年間の個人所得税の正味現価と、間接的な雇用副産物、失業保険と生活保護費用の節約を加えれば、表に示すように、課税猶予による税収減を補って余りある。同様に、6年目以降も所得税収入が発生するという利益もある。
 
比較を簡単にするために、25%直線法減価償却のCCAをカナダ建造船に適用し、5年間で償却が完了するようにした。これは、定率法によるトラクターの40%、トレーラーの30%、鉄道車両の13%と同等である。
表4 現行CCA規則、外国建造船
船舶の正味帳簿価格 CCA15%償却 連邦税猶予額
(0.2912)
州税猶予額
(0.1483)
0 $100,000,000      
1 $92,500,000 $7,500,000 $2,184,000 $1,112,250
2 $78,625,000 $13,875,000 $4,040,400 $2,057,663
3 $66,831,250 $11,793,750 $3,434,340 $1,749,013
4 $56,806,563 $10,024,688 $2,919,189 $1,486,661
5 $48,285,578 $8,520,984 $2,481,311 $1,263,662
      $15,059,240 $7,669,249
  課税猶予総額     $22,728,488
 
表5 提案のリース規則、カナダ建造船
船舶の正味帳簿価格 CCA25%償却 連邦税猶予額
(0.2912)
州税猶予額
(0.1483)
0 $100,000,000      
1 $87,500,000 $12,500,000 $3,640,000 $1,853,750
2 $62,500,000 $25,000,000 $7,280,000 $3,707,500
3 $37,500,000 $25,000,000 $7,280,000 $3,707,500
4 $12,500,000 $25,000,000 $7,280,000 $3,707,500
5 $0 $12,500,000 $3,640,000 $1,853,750
      $29,120,000 $14,830,000
  課税猶予総額     $43,950,000
 
提言
カナダ政府は
■ カナダ船主/運航者にしか利用できない加速CCAの現行政策の制限を解除し、カナダ船主または運航者に利用できるようにする。これにより、より多くの投資家が加速CCAを利用できるようになり、カナダ新造船の購入を刺激する。
■ 所得税法のサブセクション1100の例外に船舶を含め、加速CCAの恩恵を現在、トラック、鉄道車両といった海運の直接の競争相手に認められているのと同様に、裸用船契約により、運航者に譲渡できるようにする。
■ 所得税法の適切なサブセクションで船舶を例外として盛込み、米国貸し手に対して行われたリース支払は、源泉課税の対象外とする。








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